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第28話 最強ボスと人魔模擬大戦-3-


 ――明らかに前に戦った時よりも強くなっている。

 

 これは前に戦ったことのあるアルバートとケイトラの2人が抱いた感想である。


 メアリーの成長は純粋なレベルアップなどの物理的な成長ではなく、主に技術的な面での精神的な成長である。今まで『刀を振る』『魔法を使う』『目の前の敵を叩き潰す』くらいしかしてこなかっただけでも驚異的な強さを誇っていたメアリーはさらに、『守る』『フェイントを差し込む』『相手の動きを読む』と上位勢と同じ達人の域にまで到達している。


 その結果がボロボロの3人と直接戦いに参加していないダイスと聖女様の5人対一切傷もついていない依然余裕な表情を見せるメアリーという構図である。


 どんな状況であろうと一瞬でも気を抜けばやられる。その緊張感もあってかダイスはサポートに徹することしかできず、聖女様も自身とその横のダイスを守ることと他前線で戦っている3人の回復位しか役割をこなせていない。このような状況になればいずれ聖女様のMPが尽きてしまい激しい戦場の中に吞まれ朽ちていくだけとなってしまう。


 聖女様――リフォンはどうにか自身のMPがなくなる前に戦いを終わらせてもらうことを祈ることしかできなかった。

 



 

「剣技『音斬り』。」


「……っち!もうその攻撃は効かねえよ!ユニークアイテム『金剛不壊の重鎧』!」

 

 重々しい鎧を装備したアルバートはメアリーの攻撃をもろに受けても何ともないような余裕そうな表情を浮かべた。まさに隠し玉ともいえるユニークアイテムをこんな序盤で明かすことになるとは思っても居なかったアルバートだが、メアリーの攻撃もかなりの軽減をしているところを見るに十分な効果を発揮することが確認できた。


 ユニークアイテム『金剛不壊の重鎧』。効果は『1度受けた攻撃を半減させる。同じ攻撃を受ければ受けるほどその効果は強化されていく』というもの。


 すでに何十という攻撃を受けているアルバートにとって、メアリーのほとんどの攻撃が半減以上の効果を持っている。つまりこのまま長期戦を挑み続ければメアリーの攻撃を完全に封殺し、一方的に蹂躙することができるというわけだ。


 幸いなことにプレイヤーの中で一番といってもいいほどのヒーラーがこの場に存在しているので即死でない限りは永遠に攻撃を受け続けることができる。


 アルバートは昔のメアリーを彷彿とさせる戦い方で果敢にメアリーに挑んでいく。


「スキル『毒付与(ポイズン)』。さて、状態異常はどうかしらね。」


 攻撃をかわしたメアリーは至近距離からアルバートに向けて毒を与える。当然のように毒に侵されるアルバートだが、リフォンはすぐに治そうとする。


「剣技『点滅』。やっと隙を見せたね。」


 絶対に壊せない全方位を守り続ける聖女の盾だが、魔法を使うときだけは一瞬後ろが隙だらけになってしまう。その弱点を見つけたメアリーはどうにかそこをつけないか考え、ようやく隙をつくことができた。


「スキル『ランダムな盾(ダイス・シールド)』。」


 聖女の盾とは別の計12層にも及ぶ光の壁がメアリーの前に立ちはだかった。防御が間に合ったのは少年の実力かそれともたまたまなのかは定かではないが、それでもこの一瞬を逃せないメアリーは全力で刀を振りぬいた。


「剣技『穿血の渦』」

 

 メアリーの師、元剣聖ルミナス・ミネルヴァの『穿ち渦』を盗み見て会得した新たな剣技の1つ。守りに対して有効な一撃を与えるそれを、メアリーはさらに破壊力を持たせながら完全な別の業へと昇華させることに成功した。


 ――曰く、武器破壊の一撃。プレイヤーに当てようものなら武器、防具ごとプレイヤー自身まで貫いても止まることなく地面を抉るほどの威力を持っている。


 当然12枚の薄い壁など何の気休めにもならず、復活した『聖女の盾』すら貫通し、聖女の元へと届いていった。


「……スキル『聖女の加護』。」


 メアリーは聖女を完ぺきに貫き倒すことには成功したはずなのだが、気づけば何食わぬ顔で少し離れた位置に立っていた。


 聖女へとなってからはいつどんな時であっても死ぬことはおろか、ダメージを受けたことすらなかった。清らかな心を持っており、どんなにひどい言葉をかけられようとも無表情を貫いてきた天性の美少女。NPCでさえも、多少の知能を有しているモンスターでさえも彼女を崇めたり、攻撃の意思をなくすほどの美少女。崇められることに快感を覚え、少しずつ腹の内が見え始めた美少女。


 そんなちやほやされる聖域を壊すかのように暴れている初めて1度死を無効化する『聖女の加護』を使った少女の顔は、思いは、ただ1つだけであった。


「……ぶち〇す!」


 ――純粋な殺意。その場にいた全員が思わず震え上がるほどリフォンは切れた。自らがもてはやされる聖域を壊すには飽き足らず、とうとう己の美の集大成でもある『顔』をつぶした目の前のメアリーに向かって冗談のそれとは違う本気のそれを吐きながら般若の仮面を被った少女は杖を天高く掲げる。


「スキル『光輝く聖女の断罪コンデネドゥ・レ・サーン』!」


 味方の安否など関係なくただ1人の憎き敵に向けて、聖女は断罪の光の刃を放ち続けた。

アルバートの殺すぞとは天と地ほどの殺意の差があるため今回は伏字とさせていただきます。普段怒らない人を怒らせるのは大変怖いので皆さんは清く正しく生きていきましょうね。


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