古書15 ~金具(塗装)・書名~
書名を金文字で刻印したくありませんか? 私はしたいです! (挨拶)
いいですよね、金文字。
いいですよね、刻印。
革表紙に金の飾り文字で刻み込まれた「Lord of Disease」の書名が、見たい。
……いいですよね。
まあ、そのためには『もうちょっと』頑張らないといけません。
とりあえず金具の塗装から再開です。
・金具、塗装
塗装作業自体は簡単と言えば簡単です。
ほとんどの塗装は、メラミンスポンジを小さく切って、塗料をつけて、ぽんぽんとやるだけ。
薄く、細かく、重ね塗りしていきます。
以下の「アクリル」はアクリル絵の具、「メラミン」はメラミンスポンジの短縮形です。
1、少しだけ水で薄めた黒アクリルを、メラミンでぽんぽんと。
30分ぐらい乾燥
2、だいぶ水で薄めた茶アクリルを、つまようじでカリカリと。端とか。
30分ぐらい乾燥
3、メタリックペイントのシルバーとブラックを混色したものをメラミンでぽんぽんと。
30~1時間ぐらい乾燥
4、だいぶ水で薄めた黒アクリルを、メラミンでぽんぽんと。
30分ぐらい乾燥
5、少しだけ水で薄めた銀アクリルを、メラミンでぽんぽんと。
30ぐらい乾燥
6、コーヒー液に混ぜたアンティークメディウムを、布でぽんぽんと。(表紙ごと)
1晩寝かせる
相変わらず「イメージした色が中々出ない」というトラップに引っ掛かるせいで、工程が多い。
……『3』の混色を諦めた方がいいのでは? という疑惑。
ちなみに『30分ぐらい』は、個人的なこの塗装方法の安全な乾燥時間です……が、日をまたいだり、食事時、他の作業などで30分以上乾燥させた物もあります。
以下、工程写真。
※1、少しだけ水で薄めた黒アクリルを、メラミンでぽんぽんと。
ベース塗りです。
※2.、だいぶ水で薄めた茶アクリルを、つまようじでカリカリと。端とか。
ちょっぴり錆び・古びの表現。
※3、メタリックペイントのシルバーとブラックを混色したものをメラミンでぽんぽんと。
留め具の「へび」の立体部分は、ぽんぽんというか、強めにぎゅーっと塗りたくる。
さらに、布を押しつけるように拭います。(この工程は留め具部分のみ)
ちなみにこの布は、「古書12 ~本文・エイジング~」で、コーヒー液を拭き取った布だったりします。
……4、5の「だいぶ水で薄めた黒(銀)アクリルを、メラミンでぽんぽんと。」の工程の写真が見当たらないのですが……元々撮ってないのかもしれません。
あるいは、作者であり、撮影者である私にも判別できないか……。
……これ、黒アクリル塗ったやつかなー? と思う写真もあるのですが、正直なところ謎。
元々、ギラギラを「落ち着かせる」ぐらいのイメージで行われる工程なので、差が分かりにくいんですよね。
それでも、上品な落ち着きが出る、大事な工程……だと思ってるのですが。
「本人が写真で分からないなら、もう要らないのでは?」
……という、心のコストカット要員の声が聞こえる。
に、肉眼では分かるから……。(震え声)
これは、「3」あたりから行われている、塗装時のマスキングです。
マステ売り場は年々可愛くなっていって、見ているだけで楽しいのですが、手持ちには白のシンプルな塗装用マステしかない。
オシャレさはなくても、無地のマスキングテープは、塗装には欠かせない大事な相棒です。
……ただし使い捨て。
相棒(使い捨て)。
裏表紙も、同じくマスキングテープで保護します。
ちなみに四隅の金具には、一部白のコピー用紙(表紙作りに使った切れ端)を使って、マステを節約しています。
……うちのマステは、ひと巻き100円(百均)ですけども。
神は細部に宿ると言いますが、倹約も細部に宿る。多分。
「6」の最終工程は、書名と共通しているので、次の項目にまとめます。
・書名、下準備
計画を立てるのは、とても大事ですね。
書名は、金文字にしたいな……という事以外は実は決まっていません。
とりあえず刻印されたようにしたいので、下準備として、へこませます。
いくつか候補はあったのですが、まず、カッターで切り込みを入れて……。
これはダメだな、と分かったので最初の一文字でなかった事にします。
柔軟にプランを変更しましょう。
とりあえず、刃を入れる系のプランを全廃棄したので、一番大人しい『インクの切れたボールペンで文字をなぞる』を試してみます。
と、振り返ってみると、思う事が一つ。
カッターで切る前に、それを試せば良かったのでは?
……なぜ最初に取り返しの付かないプランを試したんでしょう?
振り返ると、行動が謎。
色んな事に疲れて、判断力が落ちている説が濃厚です。
だいぶくっきりしますね。
「L」の字はこう見るとだいぶ違う。
失敗したテスト結果をかばいながら、懸命に他と同じに持っていく。つらい。
次に塗装です。
・書名、塗装
……難しい事は何もない、とはちょっと言えないかもしれません……。
いえ、そんなに難しい事はないんですけど。
ただ、塗装用具がまち針なだけ。
……つまようじで最初やってたんですが、それでも太すぎて。
多少の技が要求されます。
まず、塗料を針先に『載せて』、文字に『置いて』いく。
文字の太い所に塗料を置いて『池を作り』、針先を寝かせて『流して』いく。
針先で、塗料を『誘導して』、はねとはらいをキリッとさせて完成です。
……普通は塗装に使わない文言ばかりなのは、どうしたものか。
まあ、筆でも似たような事はやっていると思うんですよ。
なんとなく察して下さい。
・実際にやった塗装
1、少しだけ水で薄めた金アクリルを、まち針で。
30分ぐらい乾燥
2、だいぶ水で薄めた茶アクリルを、針先でちょんちょんと。(※要らないかも)
30分ぐらい乾燥
3、だいぶ水で薄めたメタリックペイントの金を、まち針で。(※要らないかも)
30分ぐらい乾燥
4、うすめ液で薄めたネイルのトップコートを、まち針で。
30~1時間ぐらい乾燥? 長めの方が安全かもしれない。
5、コーヒー液で薄めたアンティークメディウムで書名ごとぽんぽんと。(※要らないかも)
30分ぐらい乾燥
6、細い金色のペンで書名をなぞる。
7、コーヒー液で薄めたアンティークメディウムで書名ごとぽんぽんと。(※要らないかも)
30分ぐらい乾燥
8、細い金色のペンで書名をなぞる。
……(※要らないかも)は、試行錯誤の跡……ですね。多い。
塗ってみたらコレジャナイ感がして、やり直したり……。
塗装は好きだけど苦手です。
以下、写真です。
※1、少しだけ水で薄めた金アクリルを、まち針で。
一応金具の「5」まで終わった状態でもあります。
ちまちまとした作業ではあるのですが、茶色に金を塗るという事で、目に見えて変化が分かるので、結構楽しいです。
ちなみに下に見えているのは、自作のパレットです。
……プラ皿(廃品利用)に使い古しのクッキングシートをテープ留めしているだけですけども、今回の作業には、それぐらいで十分です。
なお、他は、ゼリーの容器や、卵パックだったり。
……かっこいい塗装用品に憧れがある一方で、絵の具汚れを洗うのが嫌いなので、これぐらいの方が楽。
そして使い捨てられるのがメリットのはずなのに、長いのは二年ぐらい使ってる。
……あれ?
※4、うすめ液で薄めたネイルのトップコートを、まち針で。
「Lord of」がトップコート塗っていて、「Disease」はまだです。テカテカしてますね。
でも、ピントがボケボケ……。
下手なりに、「今、ピント合わなかったな」というのはなんとなく分かるので、怪しい時はもう一枚撮ったりしているんですよ。
でも、二枚目も一枚目よりマシだけど、やっぱりボケボケだったりする事がよくある。
今回は、工程の差を見たいので……心のピントを合わせて下さい。
ちなみに「2」、「3」を飛ばしたのは、正直よく分からなかったから。
※5、コーヒー液で薄めたアンティークメディウムで書名ごとぽんぽんと。(※要らないかも)……に使用するコーヒーメディウム
アンティークメディウムは、例によってコーヒー液で薄めて使用します。
別に水でもいいんですけど。
……せっかくなので?
アンティークメディウムは、ようやく水での薄め具合に慣れて来た頃なんですけど、新しい技術を実地で試したいって言うか……!
……だから苦労してるんだよ、と思いつつ、それで止まるなら、こんな自分専用のモルモットやってない。(開き直り)
ちなみに比率は謎。
水だと、見た目で濃度がなんとなく分かるんですけど。
……コーヒー液だと、茶色のアンティークメディウムを溶かしても、ほとんど色が変わらないんですよね?
技術的に、根本的な欠陥を感じつつも、コーヒーとアンティークメディウムによるエイジングを同時にやりたいなら、これしかないとも思う。
多分、テストをした方がいい。
でも、テストに必要な『ニスを二度塗りされた布』とか、ない。
勘で頑張る。
強いて言えば、これが実戦テスト。
ゴム手袋をはめて、コーヒーメディウムを布に含ませたら、覚悟を決める。
……失敗しても、それは貴重な失敗のデータ。(ダメな覚悟)
※「金具」6、コーヒー液に混ぜたアンティークメディウムを、布でぽんぽんと。(表紙ごと)
+
※「書名」7、コーヒー液で薄めたアンティークメディウムで書名ごとぽんぽんと。(※要らないかも)
コーヒーメディウムで塗ると、がっつり雰囲気が出ます。この写真好き。
濡れているのでもう少し明るくなりますが、アンティークメディウムは、乾くと濃くなるので、今までのコーヒーニスほど大きくは変わりません。
完成写真と、それほどイメージが変わらない所まできました。
……ここまで来て、ラストで「エイジングやりすぎた……」ってならなくてよかった。
※8、細い金色のペンで書名をなぞる。
くっきりします。
落ち着いた金色の鈍い輝き……。
ちょっとずつ角度を変えたりすると真価を発揮するので、写真で伝えきれないのが、もどかしい。
以上のデータを踏まえて、↓『次があるならこうするかも』。
・次があるならこうするかもという塗装
1、少しだけ水で薄めた金アクリルを、まち針で。
30分ぐらい乾燥
2、うすめ液で薄めたネイルのトップコートを、まち針で。
30~1時間ぐらい乾燥?
3、細い金色のペンで書名をなぞる。
↓※古びさせたい場合のオプション
4、コーヒー液で薄めたアンティークメディウムで書名ごとぽんぽんと。
30分ぐらい乾燥
だいぶすっきりしましたね。
ネイル用のトップコートだから、乾燥時間は30分でも余裕……だと思いたいのですが、このあたりは刻印の深さに左右されると思います。
古びさせたいのか、輝かせたいのか……好みですね。
・次があるならこうするかもという塗装・番外編
1、ステンシルプレートを当てて、好きな金のインクで塗る。
……ステンシルプレート単品ではちょっと難しい書体だったのと、エンボスのような、刻印というか、立体感が欲しかったんですよ。
2、↑の上から、インクの切れたボールペンでへこませる。
……これでもいいのでは? という気もしたんですけど。
……コストは、とても下がると思います。
それでも、書名を刻印したかった。
・ちょっとした手直し
ちょっと、「変なしわ」ができてしまっているので……。
今まで見て見ぬふりをしていましたが、"古書"も完成間近。
多少、しわがよる工程ではありますので、気にしないなら気にしないでいいんですが、私は気になる。
なので、アイロンで消します。
軽く水で濡らし、当て布を当て、アイロンをするだけ。
だいぶすっきりします。
どうしても「しわが浮く」場合は、軽く水溶きボンドを上から塗ります。
装丁があまりにも失敗している場合はどうしようもないので、多少のしわも味である、と言い張るメンタルの強さが必要になります。
・完成
……あー、じわじわ来る……。
書名の刻印は、他の品も含めた全ての作業の『締めくくり』として用意しておいた作業です。
だるまの片目を、満願成就の暁に入れるようなやつ。
これで、全部終わった。
ああ……もうこの作品に対して自分ができる事は何もないのか……と、しみじみとした寂しさを抱えながら、完成した作品を思う存分愛でるフェイズです。
眺めたり。
表紙を撫でたり。
留め具を外したり。
本を開いたり。
目次に目を通したり。
ぱらぱらとめくって、目に止まったフレーズを味わったり。
最高に楽しい!!
………………。
…………。
……。
全部終わった感出してますが、この後、野外ロケあるんですけどね。
最重要コンセプトは「今すれちがった人は、私が怪しげな古書やら書見台やらを撮影に来たとは夢にも思うまい」です。
カモフラージュ、大事。
……見られたら、ちょっと恥ずかしい。
あと、何をやっているのか、うまく説明できる自信がない。
本は留め具部分をコの字型の発泡スチロールなどでうまいこと保護し、さらに全体をぷちぷちにくるんでからリュックに詰め。
他のアイテムも丁寧に、けれど取り出しやすさを考えて箱に入れて、紙袋に。
そして、飾り布や、汚れ防止に下に敷くチラシなどの撮影用品も用意。
現地で壊れた時の事も想定して、マスキングテープにビニールテープ、カッター、つまようじ、黒のマジックなどの補修用品も、ポケットやリュックのそこかしこに仕込む。
日程とお天気の良さがばっちり合う事をお祈りして、天に届けば後は現地へゴー!
ちなみにこの本は、2.8kgあります。
これで殴ったら「殺意があった」と法廷で判断されそうな鈍器。
書見台は2.4kgあります。
総重量、7.5kgの装備を背負って山登りして、それを必要に応じて展開して、撮影して……それらを全て、徹底的に人目を忍びながら行うだけの、簡単なお仕事です。
お昼時に、一時間半ぐらい。
それを二日間。
天気の良さや人気のなさを天秤にのせていくと、お昼時がベスト。
お腹の減る時間帯ですが、飲まず食わずです。
食べ物や飲み物を持つと重くなるし、この装備でお店に入る勇気はないし、なにより店などない。
気温は低め。(年末)
風も強め。(特に二日目)
……もちろん、一人ですとも。
……簡単な……おしご……と……。
いや、やっぱこれ修行だ。
それはそれとして、表紙作業が完了したので合計費用を出してみます。
・表紙、費用
ほぼA4白厚紙8枚組、110円×2 =220円 (※使用分は165円)
茶色の布、約1m×40cm×1枚 =348円 (※使用分は200円ぐらい)
金具用黒厚紙(計上なし)
鋲 (大きいの)、5円×8個 =40円
鋲(小さいの)、5円×4個 =20円
真鍮の釘、約2円×16本 =32円
ニス(計上なし)
背表紙ダンボール(計上なし)
ひも(計上なし)
合計=660円
使用額はかっこ内にある通り、もう少し下がりますので、大量生産する時は、1冊あたりのコストは少なくなります。
とは言え、今回はこのために購入しているので、全額を費用に計上します。
逆に、ニスや黒厚紙などは今回計上なし。以前の余りです。
書名の塗料なども、ごく少量なので計上なしという事で。
もし計上するなら、まとめて50円ぐらい……かな?
本文(856円)と合わせた、計上された合計金額は、「1516円」となりますね。
高いような安いような。
『この価格で購入できる』なら、安いって言うんですけど。
『この価格を出した上で、同じ苦労をして入手する』なら……その、ためらいが。
もうちょっと出せば、もっと楽をできる……ような。
金を積んでも、あんまり楽にならないような……。
製作記は時間を巻き戻して、「書見台」へと続きます。
次回は、「書見台1 ~計測・カット・仮組み~」です。




