お別れは突然に
ユリアーノとミーナの交際は、あっという間に王宮中に広まった。もちろん国王とマリオンの耳にも入り、リシェラは聞き取り調査をすることになった。
きっと真面目なミーナが、ユリアーノに遊ばれているだけだという2人の見解だったが、リシェラは猛反対、真剣交際を主張している。
最近、人魚の中で『結婚』が注目されている。火付け役はもちろんマリオンとリシェラだ。奔放な関係だけでなく、相手を敬い尊敬するというかたちとして『結婚』する人魚が増えてきた。
リシェラは結婚推進派である。
「ミーナ、あなたとユリアーノ様の今後のことを聞きたいの」
リシェラは興奮しているのか、お腹をコポンと鳴らしながらミーナに尋ねた。
ミーナはびくっと肩を震わせた。
ユリアーノと一緒に居たいということは、リシェラのもとを離れるということだ。それをリシェラに言えるわけがない。ずっとお使えした大切な主人なのだ。
「あなたの正直な気持ちを教えてほしいの」
ミーナは、胸の前でぎゅっと手を握った。
ドアの方がなにやら騒がしくなった。
「失礼する」
マリオンとユリアーノである。2人はふたりでミーナの話をしていたのだろう。
ユリアーノはミーナが縮こまって手を握っているのを見つけた。
「また縮こまっているね」
ユリアーノは優しく話しかけて、ミーナの肩を抱き寄せた。ミーナの周りを温かい海流が廻り始める。
「ご覧の通り、ぼくは本気なんだ。ミーナさえよければ国へ連れて帰りたい」
皆んなの視線がミーナへと向く。ミーナは温かい海流に包まれて、ユリアーノと一緒に居たいと言ってもよいのかなという気持ちが芽生えてきた。
「ミーナ、本当の気持ちを教えて。行きたくないのなら、ずっと私の侍女をしていればよいのよ」
リシェラはミーナの答えが分かっていたが、あえて言った。
「リシェラ様・・」
リシェラの優しい気持ちが伝わった。たとえユリアーノの国へ行こうとも、帰る場所があるありがたさをミーナは感じた。
なんて愛情深い主人にお使えしていたのだろう
「わたし、ユリアーノ様と一緒に行きたいです」
リシェラは主人として、女性として、ミーナの門出が誇らしかった。
ミーナは突然王子の妃になる訳ではなく、ユリアーノの侍女としてひとまず国へついて行くこととなった。
ミーナとのお別れである。リシェラは幸せな涙と切ない涙が溢れた。
「今日はなんだか色んな気持ちで顔も心もぐちゃぐちゃになっちゃいました」
寝室でマリオンとリシェラはゆっくりとした時間を過ごしている。満たされた空間の中を眠りの空気が漂う。
コポ・・・
「ん、、なんか今日はお腹の調子が悪いみたいで、早めに寝ます」
「大丈夫か?」
マリオンが何気なくリシェラのお腹をさすった。
コポ・・ぴしゃん
「リシェラ、これは・・・」
リシェラのお腹の中に海の力を感じる。
人魚の卵だ。
これにて、第2章完結です。
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