第3話 理想と現実
屋敷に帰ったマルセロは牡丹を座らせ話を聞くことにした。
「まず。僕はマルセロ。年齢は18歳。一応勇者として魔王を倒してきた。
君の事や奴隷の事を色々聞かせてもらえないかな?」
すると牡丹は
「わかりました。勇者様。
私は牡丹。17歳。犬族の半獣人です。ご覧の通り白の耳と尻尾があります。
母も父もどのような者かはわかりません。奴隷になる為に生を受けたという事実以外に私からお話することはありません。
奴隷として生まれたのですべてはご主人様となる方の為に働く次第です。」
「奴隷か。ここ最近は旅に出ていたから街の様子がわからないけど、街中で奴隷を見たことはなかったんだけど。」
「奴隷は常にフードを被っていますので街中で見てもわからないのではないでしょうか。フードを被って尻尾を隠せば人族と変わりはないですから。逆にフードを被らずに歩けばすぐに衛兵に捕らわれることになると聞いています。」
「フードを被らずに出歩いたら捕まる?!何も悪いこともしていないのに?」
「はい。それがこの世の中です。人族でも亜人族でも獣人族でもない私達半獣人の立場です。」
「・・・僕は、王様から魔王を倒せばすべての人が笑顔になると言われてきたんだ。なのになんで半獣人の人達は笑顔になれてないんだよ。」
「半獣人は人ではありません。半獣人は道具だからです。」
「!!!何を言っているだ!半獣人だって人だよ!道具は喋らないでしょ!考えないでしょ!生きている人だよ。道具なんかじゃないよ!」
「ご主人様がそこまで言ってくれるのはうれしいけどこれが現実よ。とりあえず、私は良いご主人様に巡り合えたと思うことにする。奴隷の話はこの屋敷だけにしてください。外で奴隷の事を話すといくら勇者様でも白目を向けられると思います。
それで私は何をやればよいでしょうか。このソファとテーブル以外に何もないように見受けられますが。」
冷静に受け答えする牡丹。それを見てさらに苛立つするマルセロ。
「何でそんなに冷静でいられるんだよ!何で差別されているのを受け入れているんだよ!」
すると
「じゃあどうしろと言うんですか!勇者様がどうにかしてくれるんですか!奴隷として保護されてないと何をされるかわからないんですよ!常に恐怖と隣り合わせなんですよ!お金の稼ぎ方なんで知らないですよ!全部全部勇者様が解決してくれるんですか!できるわけないですよ!何百年も半獣人は奴隷として生きているんですから!そんな簡単に変わるわけないじゃないですか!世間も私達半獣人も!」
と一気に早口で捲くし立てると
「申し訳ありません。言い過ぎました。」
と謝罪を伝えてきた。
「いや。謝らないでほしい。今のが牡丹や半獣人の本音だと思っていいのかな?」
「え。いや。どうでしょう。思わず口に出てしまったと言ったほうが正解かと。」
「じゃあそれが素直な気持ちってことだね。わかったよ。僕はどうやったら半獣人の人たちが幸せに生活できるかを考えてみるよ。僕ができることをね。」
「やめてください!私たち奴隷は主人が居てそこで生活できれば十分です!」
「本音と建前の使い分けは大事かもしれないけど、この屋敷にいる間は本音にしよう。さっき牡丹ちゃんが言ったように本音は屋敷の中だけね。むしろ屋敷の中では本音のみにしよう。」
「建前とかではなく私たちは奴隷ではなくなったら生きていけないんですよ!お金を稼ぐ方法も知らないですし、半獣人に商品を売ってくれる店なんてありません!フードを被って人族の真似をしているから商品が買えるんですから!」
「じゃあ半獣人がお店を出せば問題ないんじゃないの?」
「どこのどいつが半獣人にお店をださせる許可をくれるんですか!半獣人が売っている商品なんて買う人もいませんよ!」
「いや。半獣人が売って半獣人が買うんだよ。半獣人が物作りもしてさ。半獣人による半獣人の為の街があればいいんじゃない?」
「どうやって街を作るんですか?!どうやって半獣人を集めるんですか!街を作るのも土地が必要ですし、半獣人は生まれた瞬間に奴隷商人が買い取りますから赤ん坊のときから奴隷なんですよ。」
「じゃあ奴隷商人から買い取ればいい。土地はもらいに行くから大丈夫。」
「貰いに行くって何処にですか?半獣人の街を作るから土地をくださいなんて誰もくれませんよ。そもそも街を作って半獣人が物を作って売って買ってって言っても街は発展しませんよ。他の街との交流が必ず必要になります。半獣人の街と交流を持ってくれる街なんてあるわけないですよ!」
「むっ。無理無理ばっか言ってちゃ何もできないじゃん!やってみなくちゃわからないでしょ!」
「勇者様はバカなんですか。現実をきちんと見てください。ここは帝都ですから奴隷でもフードさえ被っていれば買い物はできますが田舎町へ行ったらフードを被っていても奴隷には売ってくれないことも多いと聞いています。」
「うーーー。いきなり考えて答えなんて出ないからゆっくり考えていこうよ。とりあえず、今日は買出しに行こう。」
「はぁ。わかりました。買い物リストはありますか?余計な物を買わないようにする為にはリストを作っておかないといけませんよ。」
「リストなんて作ってないよ。その場で決めようと思ってたから。」
「ダメです!そんな行き当たりばったりな買い物は浪費の元です!」
「わかったよ。じゃあ一緒に必要な物をリストアップしていこう。」
ということで生活に必要な物を2人で協力しリストアップしていった
「で・す・か・ら!私にはベッドはいりません!奴隷は奴隷の扱いでお願いします。」
「ベッドがなかったら何処で寝るの!ベッドは絶対いります!」
とか
「私の食事は余り物でいいのですから食器も私専用はいりません!」
「ダ~メ。一人で食べるなんて寂しいことはできません。」
とか
「私に洋服などいりませんって!端切れで自分で作りますから」
「勇者の付き人に粗末な格好なんてさせられないでしょ!」
等々半分喧嘩のような騒がしさでリストアップされていった。
「よし。とりあえずこんなもんだね。昼食も兼ねて買い物に行こうか。」
「はぁ~。わかりました。参りましょう。」
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「さ~てとりあえず屋台で買い食いでもしながら買い物しよっか。量が多くてもアイテムボックスがあるから安心していいからね。」
と牡丹に声を掛け市場を進む。
「おぉ~勇者様!うちのハムサンド食べて行かないか!」
「いいね。牡丹もそれでいい?」
「あっ。はい。」
と。声の掛かった屋台へ向う。が。
「いら・・・。勇者様?連れているのは半獣人の奴隷じゃないですかい?」
「ん?そうだけど?何か問題ある?」
「悪いが半獣人に食わせる飯はうちの店にはないんで別へ行ってくれ」
と店主は手を振ってマルセロ達を追い払った。
「はぁ?何言ってんの?半獣人には売れないって事?」
「当たり前だろ。何で精魂込めて作ったハムサンドをわざわざ半獣人に食わせないといけないんだ。」
「えっと~・・・言っている意味がわからないんだけど?」
とマルセロは穏やかな口調だが確実に怒っているのがわかる。
「と・・・とにかく半獣人には売れない。別の店に行ってくれ!」
マルセロが怒っているのがわかったのか店主は目を逸らして2人を店先から追い出した。
「何なんだよ。ったく。」
「ご主人様。これが現実なんですよ。」
と牡丹はマルセロに声を掛けた。
「現実って言ったって。あの店主だけかもしんないじゃん。他の店行ってみよ。」
と周りを見渡すもどの屋台の店主もマルセロと目を合わせないように下を向いたり横を向いたりしている。
が
「おーい!勇者様!うちは半獣人が居てもいいよ。食べてくれる人がいれば種族なんて関係ないからね~」
と言う麺料理の屋台へ向った。
「いいのか?他の店の奴らが変な目で見てるが。」
「いいのいいの。種族で客を選ぶなんてナンセンスなんだよ。値切ったり踏み倒したりする人族よりもきちんとお金を払ってくれる半獣人の方が何倍も良いお客様だしね。」
「そっか。じゃあ2人前くれるかな。牡丹も僕と一緒のでいいよね?」
「はい。お願いします。」
と頭を下げた。
「あ。フードはそのままでお願いね。お客さんだけど獣耳は俺苦手なんだよ。」
と言いながら笑う店主だった。
「ご主人様。これが私たち半獣人の扱いです。実際に目で見てご理解いただけましたか?」
「うん。わかったけど。・・・納得はできないな。」
「はぁ~いお待たせ!当店自慢の汁麺だ。熱いから気をつけて食べろよ。」
僕と牡丹は熱々の汁麺を味わった。
「うまっ!何これ!食べたことないよ!」
「だろ。世界を巡った勇者様を唸らせる汁麺。ヒット間違いなしだな。」
「美味しいです。汁の味が最高ですし麺にとても合いますね。」
「半獣人の口にも合うってことは獣人にも合うって事だな。こりゃ大ヒット確定だな。」




