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61話 合成魔さん人を守る



どうやら、兵士達は撤退を決めたようだ。


ちなみに、伝言を伝え終えた後から、今までずっと地竜とガチンコ対決が続いています。


振り下ろしてくる爪を避け、そのまま顔面にカウンターを食らわす。


多少は怯むのだが、すぐに体勢を立て直し、


「グォオオオオオオオオ!」


こちらを威嚇してくる。


この間にも、せっかく食らわせたダメージが着々と治って行く。


ははは、勝てそうなら、倒して【吸収】してやろうと思っていたが、倒せる気がしねー!


片方は、防御力と回復力が高すぎて、死ぬ気配がない。


もう一方は、そもそも攻撃が当たっていないからダメージがない。


完全に無意味の攻防が繰り広げられていた。


しかし、この無意味な攻防に、突如変化が現れた。


地竜が、逃げていく兵士達に気がついたのだ。


俺を放置して、兵士達を追いかけ始める地竜。



「ちょ! 待て!」


急いで地竜の前に回り込み、顔面にタックルを食らわせる。


「あー、人間の逃走速度が遅い!」


愚痴りながら、地竜の気を引くために追撃を続けた。


全力で地竜の前に移動し、地面に着地。


丁度、地竜の頭が真上に来たところで、


【クイック】!!


【高速射出】!!


【突進】!!


スキルの3コンボを使い、地竜にアッパーを食らわす。


地竜は、その長い首を上に打ち上げられ、足を止める。


「多少は食らってるか?」


ステータスを【鑑定】してみる。



––––––––––––––––––––––––––––––

種族:地竜

Lv:439

HP:217.963 / 218.211

SP:57.786

––––––––––––––––––––––––––––––



300ちょっと食らったかな?


しかし、地竜は【自動超回復Lv.7】を持っている。


【自動超回復】は、毎秒レベル×10回復する。


あいつはレベル7だから、1秒間に70回復するという事になる。


つまり、5秒後には全回復していることを意味しているのであって、もうすでに5秒くらい経っている現実。


「勝てるか! こんなもん!」


もう、全回復している地竜に向けて悪態を吐く。


まぁ、物理攻撃しかしてこないから、俺が死ぬ事は無いが……、SPは無限じゃ無い。


20万近くあるから、そうそう使い切る事は無いが、このまま続けて居ても、勝てる見込みは無い。


兵士達が逃げ切ったら、俺も逃げよう。


そう考え、地竜を見る。


すると、地竜は今まで見せた事のない動きをしていた。


口を少し開ていて、そこにオレンジの光が集中して行っている。


もしかしなくても、なんか溜めて撃ち出す気だろう。


俺の後ろには兵士達がいる。


これ、避けたらまずいパターンじゃん!


「くそったれ!! 何で俺がこんな事をしなくちゃいけないんだ!」


姿を、劣等蝙蝠に変え、何かをチャージしている地竜の口めがけて飛び出す。


俺が口に到着する寸前に、チャージが終わったらしく、



「ガァアアアアアアアアアアッ!!!」



地竜は、渾身の一撃ブレスを吐き出した。


その吐き出されたブレスは、目の前にいる俺にぶつかり、爆発した。


大空洞が揺れる様な爆発音が響く。



「危なかった……」


地竜のブレスの爆心地の真下に、少し装飾された指輪が転がっていた。


ブレスに当たる直前に、癒しの指輪に姿を変え離れていたのだ。


頼まれたからといって、自分の命をかける気なんて無いのだよ。


自分のステータスを見る。



––––––––––––––––––––––––––––––

種族:合成魔キメラ


Lv:196

HP:300 / 196,999

SP:194.670 / 196,999

––––––––––––––––––––––––––––––


HPがごっそり減った。


取り敢えず、


ヒール!


ヒール!


………

……


【回復魔法】を使いまくって、HPをほぼ満タンにする。


【回復魔法】と【回復魔法強化】が進化して、【回復大魔法】と【回復魔法大強化】に変わった。



ブレスを撃ち、俺を完全に倒したと思っている地竜は、落ち着いた様子だった。


幸いにも、見た感じ兵士達は逃げ切ったようだ。



………

……



地竜もすぐに洞窟の奥に戻っていった。


「はぁー、今回はマジでやばかった……」


地面に座り込み、休憩をする。


もう、頼まれても『誰かを守る』何て事はしない。


そう心の中で固く誓う。


「しかし、何で、俺は敵であるはずの人間との約束を守ろうと思ったんだろう?」


あの時、そう感じた自分に疑問を持つ。


「魔物なら魔物らしく生きるべきだろ……。貴族のバカ息子達は、一切躊躇なく殺れたのに…………」


魔物になったから、人間は敵と認識し、逆に、森狼みたいな知性を持つ魔物の約束を守っているのだろう。


そう思っていた。


しかし実際は、人間が相手でも、ちょっとした自己犠牲を見ただけで、約束を守ってしまう様な甘ちゃんだった。


「自分が、誰に肩入れをしているのかわからなくなってきたな」


そんなどうでも良い事が、少し引っかかった。


「盟友は盟友ですよ?」


突然背後から話しかけられた。


俺の事を《盟友》なんて呼ぶ人物は1人しか思いつかない。


「俺は俺? 一体どういうことだ?」


振り返ると、やはりトールがいた。


「そのままの意味ですよ。貴方は貴方、『元人間』だとか、『今は魔物』の前に、貴方は『霧島日影』です」


「俺は俺、か」


何故か、その言葉が心の引っかかりの部分にしっくりきた。


「はい、だから『魔物だから人を助けてはいけない』なんて考える必要はありませんし、その逆も然りです。自分のしたい様にすれば良いんですよ」


俺の好きな様にすれば良い。その言葉を聞き、考えるのがバカらしくなってきた。


「そうだな! 人でも魔物でも、気に入ったら助けて行くことにする」


【▼合成魔キメラは考えるのをやめた】



………

……



「そう言えば、何でトールがここに?」


今回は特に呼んだわけでもないし、トールがどんな理由で地上に現れたのか気になった。


「地竜が地上に出そうになったら、落ち着かせて帰ってもらう様に説得しようと思ってました」


「女神は、そんな事もしているのか?」


女神の色々な仕事があることがわかった。


「はい、地竜クラスが地上に出てしまうと、色々なところに大変な被害が出てしまいますからね」


そんな答えが返ってきた。


まぁ確かに、あんな化け物が街に現れでもしたら、大惨事間違いなしだ。


納得である。


「まぁ、私がここに来た主な理由は、盟友の姿が見えたから、お姉様とのエピソードを語り合おうと思ったからですけどね?」


トールはそう言って、いたずらっぽく笑った。


「へぇ、いったい何があったんだ?」


悩みを解決してもらったお礼だ、少しくらい付き合っても良いだろう。


そう安易な気持ちで、そう返答した。


数時間後、その安易な考えを後悔することを、合成魔キメラはまだ知らない。

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