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40話 主人の為に……

あの後、暫く質問会が続いた。


どうやら、森狼の女王ノウが俺に接触した理由は、『仲間の復讐』をしようとしている主人を止める材料を見つけるためらしい。


どうしてそんな事を? と尋ねると、


主人に、『得体の知れない俺と戦い、その身を危険に晒して欲しく無い』との事。


得体の知れない、とは失礼な。


向こうからの質問としては、『森狼をまだ攻撃する意思があるかどうか』や『【鑑定】でわからなかった、スキルを教えて欲しい』などがあった。


もちろん、もう森狼を攻撃する意思なんて無いし、


スキルは、全てとは言わないが、例の材料として使いたいと言ってきたので、

【異常状態無効】【土魔法】【風魔法】【回復魔法強化】【ヒール】【穴堀】【減音】を教えておいた。


これらのスキルが『決闘回避』の材料になるとは思えないが、それしか教えなかったのにはちゃんと理由がある。



『そろそろ、終了しましょうか』


そろそろお互いの質問もなくなってきたので、女王が話を切り上げようとした。


『最後に良いか?』


俺は最後に聞いておくべき事があった。


『なんでしょう?』


『この話し合いによって分かった事で、決闘は回避できそうか?』


女王は目を細め、微笑んでいる様に見せ、


『それでは、ありがとうございました』


森狼達に何か指示を出し、去っていく。


へぇ、なるほどね。


向こうも去っていく様だし、俺も森狼達と逆の方向に歩き始める。


あ、さっき微妙なスキルしか教えなかった理由は…………、


後ろから襲いかかってくる何かに銃を向け発砲する。


今回は1発だけではなく、3発ほど撃ち込む。


後ろを振り返ってみると1匹のただの森狼が倒れ伏していた。


あれ? てっきり女王が来ると思っていたのだが…………。


周りを見回すと、身体に土をつけた女王が、立ち上がっているのが見えた。


あぁ、なるほど、着弾する寸前に突き飛ばされて回避したのか。


『く、貴方は初めから我々を攻撃するつもりでいたのですか! 敵意はないって言ったのに!』


森狼の女王の【念話】が届く。


「あぁ、ちゃんと言ったな。(そっちから仕掛けてこなければ)攻撃する気はないと」


『約束が違うじゃないですか! この嘘つきが!!』


「言葉が足りなかっただけで、嘘はついていないよ?

それにしても……やっぱり人間の言葉が解るのか」


『この外道!!』


見当違いの怒りを向けてくる森狼女王。


そういえば、外道なんて久しぶりに聞いたな。


「嘘つきはそっちの方じゃん。

『決闘を回避する為の材料が欲しい』なんて言っておきながら、去り際に奇襲とかおかしくね?」


『あの方は、きっと決闘を取りやめる気なんて起きない!!

だから、少しでもあの方が有利になるように、貴方の戦力を調べないと行けない!!』


なるほど、


俺の戦力を調べる為に攻撃を仕掛けた。


しかし、会話できる相手だったので、騙して情報を聞き出そうとしたが上手くいかなかった。


だから再び攻撃を仕掛けてきたのか……、あわよくば手負いにしてやろうと考えていたかもしれないな。



普段だったら即退散するのだが、今回は勝手が違う。いつ襲ってくるか分からない《森狼の主人》に情報を報告させるわけには行かない。


「そういう事なら、あんたを帰す訳にはいかないな」


銃を構える。


もし逃げられた時の為に、『魔法攻撃が通用してしまう』と言う事を悟られないように戦わないといけない。


『あの銃は、何発も打てますが、一回で1発しか発射出来ません!

散らばって、まず避ける事に専念しなさい!』


女王の指示通り、撃たれた森狼以外は散らばって動く。


バラバラと動かれては、狙うのは難しいな……。


く、3匹の攻撃を避けつつ、狙いを定めて撃つのはしんどい。


それに、このままだとジリ貧だ。

何かこの状況を打破する方法はないか?


撃ちながらも、森狼達を見回す。


すると、気が付いた事があった。


1匹だけ、若干動きが悪い。


その森狼は他の森狼よりも、濃い色をしていた。


あ、そう言えば、女王は前足を撃ち抜かれているんだったな。


弱っている者から、1匹ずつ確実に倒していこう、そう思い女王に狙いを絞る。


初めは回避出来ていたが、足の怪我のせいでどんどん動きが悪くなっていく。


そして、遂に弾丸が女王を捉える…………

が、その弾丸と女王の間に何かが割り込んできた。


「キャン!」


1匹の森狼が、自分の身を盾にして女王を守ったのだ。


その後も何度も撃つが、全て身を挺して女王を守った。


もう1匹も女王に近づいて行って、庇うように前に立ち塞がる。


標的が一箇所に集まってくれるのはありがたい。

それに、なぜか森狼達の攻撃が止んでいる。


これを利用しない手はない。


ひたすら、女王を狙う。

女王に届かないのはわかっている。


俺の狙いは、女王に当たらないように、自分の体に被弾させる森狼達なのだ。


その様子を見て、女王は自分を庇う森狼達に吠える。


しかし、森狼達は呻き声を上げるだけで、その場から離れない。


うん、アテレコするなら、


======================


女王「相手の狙いは私を庇っている貴方達です!! 私事は大丈夫ですから、そこを退きなさい!!」


森狼A「そういうわけにはいかねぇよ! 俺達の任務はあんたを守る事だ!」


女王「こんな事態を引き起こした原因は私です!! 私の失態に貴方達を巻き込む訳にはいきません!! 私に構わず逃げなさい!!」


森狼B「逃げるのは貴方です! 此処は俺たちが食い止めます!! どうか、敵の情報を我らが主人の所まで持って行って下さい!!」


女王「ですが!」


森狼A「良いから早く行きな!! 俺ら森狼が一番に回避するべき事は、ご主人が死ぬ事だ!! そして、あんたの持つ情報がそれを回避するカギになる!!」


森狼B「その通りです。早く行ってください!」


女王「ごめんなさい……そして、ありがとう」


そう最後に残し、森狼の女王は駆け出した。

======================


って、感じだろう。


何これ、俺が超悪役じゃねーか!!


このアテレコが正しいかどうかは、俺にはわからないけど、


何度も、残された森狼の事を振り返りながら走る女王と、


その女王を守るために自分の身体を弾道に滑り込ませる森狼達を見る限り…………、


正解だろうなぁ……。


女王が見えなくなったのを確認すると、森狼達は静かに目を閉じ、倒れた。


まるで、やる事はやりきった、あとは煮るなり焼くなり好きにしろ、と言っているように見える。


全員のステータスを見る感じ、完全に瀕死だった。


そのまま放置してても死ぬだろう。


トドメを刺そうとするが…………、


こいつらの最後のやり取り(ただの予想)を見てしまったせいで、やり辛い。


余計なアテレコするんじゃ無かった。

後悔をしても仕方が無い。


でも、あんな『主人の為に命を賭ける』みたいなの見せつけられた後、躊躇なく殺すと、森狼達からより恨みを買うかもしれない。


回復魔法て傷を治して、『その忠義を尽くす様に心を打たれた』とか言って見逃したら、森狼との決闘もなくなるかな?


いや、何様だよ?! このセリフ。


それに、そんなうまい話があるわけ無い。


でも、こいつらは、何度も命を狙ってきた敵なんだよなぁ……。


さっきまで、脅威だった森狼が、心なしか弱々しく見える。


ええい、成るように成れ!!

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