38話 目標がない
今日も余裕があったので、2話目です
森狼でダラダラと歩き回る。
もう、初めから自分の体の様に動ける事については驚かない。
ほら、いきなり壁歩いたり、空飛んだり出来たしな。
ちなみに、今ダラダラと歩いているのは、何か理由があっての事ではない。
ぶっちゃけた話、目標がないのだ!
一応スキルのレベル上げはやっている。
ちゃんと、移動中は【空中移動】だし、もちろん【隠密】を意識しつつ、気が向いたら【穴堀】で穴を掘る。
SPが貯まり次第【超光学迷彩】を使うのも忘れない。
ちなみに【隠密】はレベル9に、【穴掘】はレベル6になった。
一応やる事はやっているのだが、単純な上に反復作業な所為で達成感が無い。
………そうだ! 狩場を変えるのはどうだろうか!?
一番近くにあるダンジョンは…………《アース大空洞》…………。
王都で話していたやつか、大遠征がどうだとか……。
調べてみるか。
ー《アース大空洞》ーーーーーーーーーーーーー
ラディス王国の南部に位置する、地龍アースと、その眷属である地竜が住むと言われている巨大な洞窟。
広すぎるので全体図が全くわからない。
表層の方は弱い魔物が多く、低ランクの冒険者の狩場として最適であるが、最深部になると危険度【A−】〜【B+】の魔物がいる。
ヒカリゴケなどが生息している場所は視界は悪くないが、基本的には暗闇なので松明を持って行きましょう。
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どうやら、表層だったら問題ないらしい!
つか、珍しく【検索】さんのハウツー本機能がありがたい。
暗いのは困るが、現地の魔物を【吸収】出来れば何とかなるだろう。
【暗視】みたいなスキル持ってそうだし。
次の目的地が決定した。
ナビは【検索】さんに任せて、さぁ、向かおうとした所で、4匹の森狼に出くわす。
もしかして、俺の【吸収】した森狼の事探しに来たのかな?
木の陰に隠れて覗き見ると、その4匹の中に違和感を感じた。
あれ? 1匹だけ色の濃い…焦げ茶色の森狼がいた。
森狼(亜種)とかかな? まぁ、関わらない方がいいだろう。
そう思い、さっさとこの場を離れようとしたら、森狼の1匹がこっち目掛けて駆け出した。
もちろん、色違いの森狼だ。
ちょ、なんでこっち来るんだ!
全力で走って逃げるが、全然向こうの方が早い。
このままだと、すぐに追いつかれる。
【空中移動】……は移動速度は変わらないしダメだな。
迷彩烏になり空に逃げようにも、離陸する時間なんてない。
【超光学迷彩】を使おうにも、さっきSP使いまくったばかりなので、逃げ切るまで保つか自信がない。
こんな事が起こるなら、SP沢山残しておくんだったー!
色の違う森狼を【鑑定】する。
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名前:ノウ
種族:フォレストウルフ・クイーン
危険度:D
ステータス
Lv:62
HP:1260
SP:600
ATK:820
MATK:649
DF:554
MDF:412
PS:鑑定Lv.5、身体強化Lv.4、自動回復Lv.3、
減音Lv.6、魔力操作Lv.4、同族意思疎通、念話Lv.3
AS:感知Lv.6、クイックLv.5、嚙みつきLv.4、風魔法Lv.4
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森狼の女王? だから色が違うのか。
レベルもステータスも高いな。
しかも【鑑定】持ちで、その上【感知】も持ってる。
厄介な事この上ないな。
逃げるべきなのだろうが、もう既に【鑑定】されてしまったとなると、放置するのは頂けない。
消すか……。
しかし、応戦しようにも木が邪魔して銃が使えない。
周りを見回すと、視界に木の無い開けた場所があるのを発見した。
あそこに向かおう!
………
……
…
なんとか追いつかれずに此処まで来れた。
追いかけて来た森狼と対峙する。
早速下級兵士に変身し、銃を構えた。
これでいつ来ても大丈夫……なのだが、中々攻撃してこない。
え、何この沈黙。
あんなに必死に追いかけてきたから、対峙したら、真っ先に飛びかかってくると思っていた。
………
……
…
このまま、睨み合ってても埒があかないな。
そう思い女王を狙って発砲する。
女王は横に飛んで避けたと同時にこちらに向かって来た。
向かって来てくれるなら好都合だ。
再び女王めがけて発砲する。
何故か、その弾を女王は避けなかった。
前足に当たり血が出る。
「………え、なんで当たった?」
他の森狼達が女王を取り囲むように並び威嚇してくる。
『どうして……』
その言葉が頭の中に流れて来た。
この感じ…【念話】?
『どんな魔法を使ったのです? 人の持つ銃は1発しか打てない筈……』
この中で【念話】を持っている者は女王だけな筈。
『えっと、この念話は貴方が?』
初めてレイアと会った時の感覚を思い出して、念話を送る。
ちなみに、【念話】のスキルは送受信ができるので、一対一なら会話が成立するのだ。
『……やはり、知能があったのですね。
それならば好都合です。
幾つか質問に答えてくれませんか?』
突然の提案に驚くが、戦闘をしなくて済むのなら、こっちも願ったり叶ったりだ。
ただ、
『答えるのは質問次第ですが……話し合うのなら、その……さっきから威嚇してくるそいつらをどうにかしていただけませんか?』
女王の横で、未だ俺に威嚇をしてくる森狼達を指差してそう言った。
実は、ノウは雌だったんです。