故郷を迎える◇明日へ
さっきまでの暗く重い空気はどこへやら。英雄王と若き賢者にお近づきになろうと押し寄せる人達。
笑顔と歓声に包まれて、広場は一気に華やいだ。
屋根の上であぐらを組んでそれらを眺めるレイヴとジーク。相変わらずなキオウにやれやれと苦笑している。
「…あー…、死ぬかと思ったぁ~…」
しがみついていたラティに屋根へと降ろされた途端、特大のため息をついてへたり込むキーシ。
お疲れさん、とレイヴが笑う。
「も~うっ、キオウさんってば何を考えてるのよ!? 人達が一気に『わーッ!』て来て、潰されるかと思った…っ!」
「もう少し飛び立つタイミングがズレていたら、ボク飛べていなかったよ~。キオウさん、ひど~いっ」
「何にも考えてねぇだろ、あの賢者サマは」
あっさり切り捨てたジークであった。
その隣には、守護者によって群集の波から逃れたウィズジー。
いつものピシッとした雰囲気を和らげ、自然体な笑顔で立っている。
「アゼルスめ…、やはり威厳はまだ損なっておらんな。自分の存在すべてを最大限に利用しおって」
「キオウもオヤジの真似をしてたよな。恐ろしい父子だぜ」
ジークは笑い、広場に目を向ける。
「お? あれって大臣サマ達だろ?
あー…、わ~……。全員揃ってアグナルのダンナに土下座していやがるぞっ!
俺、こーゆー光景って大好物ッ!」
「さすがにそれはちょっと同意しかねるなぁ…と言いたいけれど、そうも言いきれない俺がいる。
皆サン揃って陛下と姫達のゴキゲンとりに必死だねー。タイヘンだなぁ」
「キオウさんとアゼルスさん、すっごい笑顔~」
「ちょっ…、おいおいおいおいッ! アグナルのダンナ、土下座組の連中をあっさり許しちまったぞっ? いいのかアレで!? 暗示関係なかったヤツも絶対ぇ混じってるだろおいッ!」
「これが我が甥にして我が国の愛すべき王、アグナルだ。
ふっ…、安心せい。我が甥を見下す愚か者は、あとで私が灸を据えてくれる」
「さ、さすがはあの閣下の叔父君ですねー…。あは、あはは…」
「あーっ。アゼルスさんと話しているあの人ね、教会の神父さんだよー。コウモリさん達とお茶したときにね、お菓子を差し入れしてくれたんだー」
「何よそれラティ! つまりアンタはただ遊んでいただけってことじゃないのッ!」
「そんなことないよーっ」
「キオウの傍におる老人は…そうか、あの子の世話をしておった者だな。ジャフレといったか」
「キオウさんのおーおじさ~ん、その人どれ~?」
「ほれ、キオウの右隣で泣いておる」
「わ~おっ、確かにすっげーおヒゲだねぇ。チビキオウがリボン結びたくなる気持ちもわかるよ」
「俺は納得いかねーっ! てか、現役の王は許したとしても、アゼルスのダンナは許しちゃいねぇよなっ!? あとでキッチリと落とし前つけさせるよなっ!?」
「ジーク落ち着いてよー」
完全な野次馬となった仲間達は、心の底から笑い合った。
――――この『今』を、胸に刻み込むかのように。
その日から、ショウカは再び平穏な時を刻み始めた…。




