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2-4 黒鉄の箱


 銀龍は、キセルをくわえたまま「へへ」と、目の前にある黒鉄色をした棺桶の箱を眺めている。


 箱にはところどころ、金色の装飾が施されていて、観音開きだ。


 箱の右隅には穴が開いているのだ。



 そこに金龍が、瞳を寄せる。


 スマートコンタクトレンズが青い光を放ち、金龍との瞳との虹彩認証と、スマートコンタクトレンズのID認証を照合させる。


 観音開きの扉が自動的に両端にスライドし、金龍の背丈よりも少しだけ高い、黒鉄の龍が突っ伏していた。


 ヘルメットのような頭部ユニットはないものの、金龍と銀龍の体格を覆うには十分な機体だ。


 通称飛龍「フェイロン」と言われていて、足元はハイヒール、両手は中国の掛け軸絵に出てくるドラゴンの手をしている。


 背中には飛行機の羽のようなものがバックパック両左右についていている。


 両肩の裏側にはマニピュレーターがついていて、簡単な物だったら、掴むことができる。


 最新式の空気圧縮技術で、生卵すら掴めるという、人間の力をAIが計算してくれるのだ。


 前面部は龍の鱗が重なっていて、チャイナドレスを着用していても、しっかりと裾もキレイに流れるようになっている。


 パワードスーツなのだが、全身を覆うタイプではなく、背中のバックパックと全面の鱗の部分をサンドイッチするような装着の仕方だ。


 フェイロンを駆れば、ほとんどがバリアで覆われるため、装甲などほぼ意味がない。


 エネルギーが尽きるまで戦える代物なので、そんな小細工などはいらない。


 更に、兵器についても同等に言えることで、粗末なミサイルや銃など全く必要とはしていない。


 最速で物に当たれば、どんな装甲車でもぶっ壊れるからだ。


 バリアクンフーの拳を全身にまとったようなものだ。


 そして、銀龍は小さな木箱からゴーグルとキセルの予備を取り出す。


 さすがに、フェイロンぐらいの速度となると、目はほぼ開けていられないからだ。


「久々に血が騒ぐぜぇ」


 銀龍は口元のキセルを外し、フェイロン搭乗の準備にかかった。

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