2-3 白い虎は、牙を剥く!
レイレイが突入する同時刻、白虎部隊も似たようなテントを見つけていた。
ゴーグルの奥から覗かせる大きな瞳は、薄く青くなっている。
「ねぇ、ヤーイー隊長!! テントを見つけたわ!!」
ホンホンの武器は黒い六角棍だ。自分自身の身長よりも長く、先端を向ければ、六角形をしている。
勿論、チャイナガールズ特性の、超強化カーボンナノチューブ製で、軽く、頑丈で、しなりも入っている、絵に描いたような万能素材で作成されている。
リャンリャンも口を開いた。
「ヤーイーたいちょう、あれはまちがいなく、哨戒兵ですよね」
リャンリャンもホンホンと寸分たがわぬ、同じ武器だ。
ヤーイーは、銀龍に報告する。
「銀龍ターレン、哨戒兵発見!!」
「レイレイも発見した。レイレイ達のところから3時の方向へ、15キロ離れた場所だな。似たような兵の構成だろう。やっちまえ!!」
「了解、銀龍ターレン」と、ヤーイーは通信を切った。
ヤーイーの短い髪が風になぞられ、ゆっくりと流れる。
彼女の器械は黒いトンファーだ。
それを両手に持っている。
「さてと、ホンホン、リャンリャン行くわよ!!」
双子は「はーい」と返事をさせ、六角棍を構える。
「みんな、用意はいい!! パーティカルロイド起動、気功ユニットオン!!」
赤い荒野を三つの白い影が一気にテントへ駆け寄る。
すぐに気づき、相手は振り向きざまにリャンリャンへ向けフルオート射撃。
リャンリャンはエネルギー消費を最小限にするために、バリアなどははらず六角棍を振り回し全弾はじく。
男がすぐに予備弾倉に手をかけた瞬間、ヤーイーが急ブレーキをかけ、左手のトンファーを腹に突く。
男は吐き気を催すが、ヤーイーには関係ない。
そのまま男の体は、九の字になりかけるが、ヤーイーは、容赦なく右トンファーを相手の顔面に打ち込む。
威力は完全に抜け、男の顎から頬にかけて完全にめり込み、身体を横へ一回転させ倒れる。
10メータ後ろにいた、もう一名がヤーイーに銃口を向けフルオート射撃をお見舞いする。
リャンリャンがヤーイーの眼前に跳躍、着地。
六角棍を振り回し、弾丸は当たらない。
男が気づいた時にはヤーイーが既に直前へ。
弾倉の給弾は間に合い、男はヤーイーに向けて撃とうとする。
が、ヤーイーは姿勢を更に低くし、チャイナドレスのスリットから白く若い腿をのぞかせつつ、大股を一歩広げる。
その体勢で、右トンファーを薙ぐと、小銃にトンファーが当たり、テントの方に弾丸は向かっていく。
今度は超近接状態となり、ヤーイーは左トンファーの先端で相手の喉元をつく。
男が「がひゅぅっ」と、喉元が潰れる音なのか声なのか分からない効果音が鳴る。
男は後方に体勢を崩し、ヤーイーはチャイナドレスの裾を翻し、一回転して相手の腹を全力で蹴っ飛ばし、100メーターほど吹っ飛び敵は二度と動かなくなった。
リャンリャンは、テント裏の方へ回り、兵士が二名を相手にしている。
手前一人目、奥二人目。
姿勢が低すぎて、かつスピードが速いので、弾丸はむなしく空を穿つ。
一人目に急接近し、棍を相手の顔面へ容赦なく両手で突き出す。
男の片目へとめり込み、後ろへ倒れた。
二人目が何とか弾倉を給弾し、狙う。が、小さな白い虎に当たるはずもない。
S字を描きながら近づき、相手のみぞおちに棍を食い込ませる。
「がびゅう」と、内臓が破裂したような声をもらす。
更にリャンリャンは「やあああ!!」と声を上げ、相手を押し出した。
相手は二十メータほど吹っ飛び、倒れた。
ヤーイーが高速で近づき、吹っ飛んだ男のみぞおちへと一撃で仕留める。
相手は動かなくなったのを確認した。
一人目が片目を抑えたまま、両足をばたつかせている。
「いてぇよぉおおおおお!!」
ホンホンは容赦なく、相手の顔面へと棍をつき黙らせた。
三人を中心にして、男たち6名に囲まれた。
ヤーイーの目の前に三名、ホンホンとリャンリャンの前に三名だ。
白虎部隊は、全員背中を合わせる。
ヤーイーは、無表情でふとつぶやいた。
「バカね……」と。
気功ユニット全開!
三人が同時に叫び、真上に跳躍する。
男たちが一気にフルオート射撃をさせる。
フルオートにしているので、同士討ちをして、二名ほど動かなくなる。
残りは四名だ。
ヤーイーは、相手の真後ろに着地すると同時に、男のうなじに向けて、トンファーを薙ぐ。
男の首が妙な音をさせ、曲がり、前のめりに地面へ三回転ころがり、動かなくなる。
もう一人は、首だけ後ろへと向けようとするが、ヤーイーは「ホワッチャアアアアア!!」と、叫びつつ、相手の股目掛けて蹴り上げた。
ハイヒールの先が股間にめり込む。
中国拳法では、急所を点穴とよんでいる。
男は、あまりのショックで、吐き気を催し、嘔吐。
ヤーイーはそのまま男の背中を全開で、蹴り飛ばした。
相手は吹っ飛び、そのまま転げまわり、あおむけになる。
そして、ホンホンが、相手の顔面に向けて跳躍し、棍を立てに突き落とした。
「ぎゃあああああああ!!」と、男の両足がビクンと一回動き、二度と動かなくなる。
残り敵兵二人は涙しながら、ヤケクソのフルオート射撃だ。
だが、子虎のような動きのリャンリャンには一切かすりもしない。
S字を描きつつ、超高速で向かってくる。
急ストップさせ、相手の直前で棍を立てて、棒高跳びの原理で跳躍。
空中で棍を持ったまま、高速で一回転。
相手の背中めがけ、棍をふるう。
相手は前のめりに吹っ飛び、近づいてくる相手に、ホンホンは少し跳躍し、横へ一回転。
顔へ棍を払った。
男はものすごい勢いで吹っ飛び、転がり、身体の関節が増えている。
残敵、一名。
男は既に戦意を喪失していて、腰を抜かし、後ずさりをしている。
「ひぃぃぃぃいいい!! た、たすけてええええええ!!」
ヤーイーを中心にして、左右にホンホンとリャンリャンが同時に集まる。
ヤーイーは静かにユグドシアル語で口を開く。
「ねぇ? 聞いてる?」
男は、ヤーイーの質問に対して、ひたすら、ひいいいいい!! しか言っていない。
「奪うって、どういうことか分かる?」
男は見上げながら、やがて失禁しつつ、ショックのあまり笑い始める。
ヤーイーも実戦を重ねる中で、何度か見たことがある。
ショックが強すぎて、精神が崩壊していく人たちの姿を。
だが、ヤーイーは同情の気持ちなど一切湧いてこない。
「知ってる? あなた達が奪ってきたものは、命や女の子たちの未来よ。普通に結婚したりとか、普通に男の人と話せたりとか、そういう事ができなくなってしまうんだけど……。人は拾い物じゃないのよ」
男は完全に精神が崩壊してしまっている。
「う、うへへっへ!! ああはぁぁああああ!!」
ホンホンとリャンリャンが、口を揃える。
「ヤーイー隊長、もうお話し出来ないわね!!」
「ヤーイー隊長、もうお話しできないみたいです」
「そう」と、ヤーイーは黒いトンファーを掲げ、相手を一打のみでしとめた。
男は身体をうなだれ、鋼鉄製の帽子が脱げて、赤い土に落下した。
銀龍へと通信を繋げる。
「銀龍ターレン、こちら白虎部隊。哨戒部隊しまつしました。我に損害なし」
「そうか、よくやった。そろそろ例の代物も届く。届いたら、機甲部隊、本拠地へ突撃だ!! 青龍部隊からの状況終了連絡が入ってから、行動するからよぉ。相手の本拠地に向けて行進。周辺で待機!!」
「了解」と、ホンホンとリャンリャンにも確認する。
「きいた? 二人とも」
二人は「うん」と同時に頷いた。
「それじゃあ、行きますかねー」
白虎部隊は無残にも転がっている死体をよけながら、本拠地へと向かった。




