【第20話】 時間逆流の兆候と、悪役の影が過去と未来を支配する
黒城レイが“虚無の化身を跪かせた”翌日――。
世界は、もはや“世界”という言葉では説明できなかった。
王国軍、魔王軍、宗教国家、冒険者ギルド、英雄連盟、異界軍勢、宇宙意志、世界核、物語の化身、創造主の化身、虚無の化身――
すべてがレイの前に跪き、世界は完全な静寂に包まれていた。
だが、その静寂は――
**時間そのものの層** にまで届いていた。
「黒城レイ……」
「虚無の化身を屈服させた……?」
「いや、屈服させたどころか“存在と虚無の境界を書き換えた”らしい……」
「そんな存在……時間の流れを乱し始めている……」
世界の“時間”を司る層が揺れ始めていた。
◆
王都は今日も静かだった。
昨日までの混乱が嘘のように、
街は平和そのものだった。
だが――
その平和は、レイが“存在と虚無を止めた”結果にすぎない。
「黒城レイ様……」
「今日もお美しい……」
「いや、怖いだろ……」
王都の住民たちは、レイを見るだけで震えていた。
レイはそれを見ながら、なぜか満足げに頷いていた。
「フッ……我が闇の名は、ついに存在と虚無を静寂へと導いたか」
「いや、悪い意味でだよ!!」
俺――白峰ユウは、朝からツッコミで喉が枯れそうだった。
そしてレイの後ろには、監視官セリス、聖女アリシア、神官長ルシア、異界王代理、宇宙観測庁長官エルミナ、根源研究所所長オルフェウス、運命管理局長ミレイユ、創造管理庁長官アークライト、存在基盤局長ネメシスがついてくる。
「黒城レイ。今日、あなたは“時間庁”に呼ばれているわ」
「時間庁……?」
レイは首をかしげた。
「俺は悪役だぞ? 時間など関係ないだろう」
「関係あるのよ!! あなたのせいで時間が揺れてるの!!」
「揺れているのか?」
「揺れてるのよ!!」
◆
時間庁――
世界の時間、過去、未来、時空の流れを監視する最高機関。
だが――
その前には数千人の時空魔導士と研究者が集まっていた。
「黒城レイが来るぞ!!」
「虚無の化身を跪かせた男……」
「いや、時間の流れを乱した男だ……」
「どっちにしろ存在が反則だろ……!」
いや、反則ってなんだよ!!
レイは満足げに頷いた。
「フッ……歓迎されているようだな」
「歓迎じゃないよ!! 完全に“時間災害”扱いだよ!!」
◆
時間庁の大広間に入ると、
そこには世界中の時空研究者たちが並んでいた。
時空魔導士、未来視研究者、過去観測者、時間構築者――
世界の“時間を知る者たち”が勢揃いしていた。
そして中央には、時間庁長官・クロノスが立っていた。
銀髪に金の瞳、時間そのものをまとったような男。
その存在は、まさに“時間の境界に立つ者”だった。
「黒城レイ……あなたが噂の“時間を揺らす男”ですね」
「フッ……悪役だが?」
「悪役って言うな!!」
アリシアが叫ぶ。
クロノスはレイを見つめ、震える声で言った。
「黒城レイ……
あなたの力は、もはや時間の枠を超えています」
「超えているのか?」
「超えてるのよ!!」
セリスが叫ぶ。
「あなたの“跪け”の一言が、
**時間の流れそのものを書き換えたの!!**」
「書き換えたのか?」
「書き換えたのよ!!」
◆
クロノスは巨大な魔導スクリーンを展開した。
そこには――
世界の時間構造“時空基盤図”が映っていた。
だが、その中心が黒く塗りつぶされていた。
「これは……?」
俺が思わず声を上げた。
クロノスは震えながら言った。
「“時間欠損”です」
「時間欠損……?」
「時間の流れが消えている……
過去と未来が混ざっている……
時空が崩壊し始めている……」
ルシアが青ざめた。
「そんな状態が……レイの影響で……?」
「影響を受けてるのよ!!」
◆
その時――
時間庁全体が揺れた。
――ゴォォォォォォン!!
「緊急事態!!」
「時間層に異常!!」
「過去と未来から何かが接近しています!!」
「過去と未来……?」
レイは首をかしげた。
「俺は悪役だぞ? 過去も未来も関係ないだろう」
「関係あるのよ!! あなたのせいで時間が逆流してるの!!」
◆
空間が裂け、二つの存在が現れた。
一つは――
**過去の化身**。
もう一つは――
**未来の化身**。
「黒城レイ……」
二つの声が重なった。
「貴様を迎えに来た」
「また迎えに来たのか!!」
俺が叫ぶ。
過去の化身は言った。
「黒城レイ……
貴様こそ、我が後継者……!」
未来の化身は言った。
「黒城レイ……
貴様こそ、我が後継者……!」
「違う!!」
アリシアが叫ぶ。
「黒城レイは過去でも未来でもない!!
ただの……ただの……」
アリシアは言葉に詰まった。
「……ただの何?」
俺が代わりに言った。
「ただの悪役ロールプレイヤーだよ!!」
過去と未来の化身は震えながら言った。
「……悪役ロールでこの力……
やはりあなたこそ、時間の器……!」
「いや、なんでそうなるんだよ!!」
◆
二つの化身が同時に手を伸ばす。
レイは微動だにせず、ただ指を鳴らした。
「――跪け」
その瞬間、過去と未来の化身が同時に地面に叩きつけられた。
時間が震え、時空が揺れ、世界が乱れた。
「な……っ……!?
過去と未来の化身が……押さえつけられて……?」
クロノスは震えながら言った。
「黒城レイ……
あなた……時間すら屈服させたのよ……!」
「屈服させたのか?」
「させたのよ!!」
◆
こうして――
**黒城レイは“時間すら跪かせた存在”として、
世界・異界・宇宙・世界核・物語・創造主・虚無・そして時間からも“絶対的頂点”として扱われることになった。**
もちろん本人は、まったく理解していない。
そして俺は――
またしてもツッコミ役として地獄を見るのだった。




