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169  作者: Nora_
10/10

10

「豊崎君、君は来るのが遅いね」

「……どうして佐藤さんがいるの?」

「そんなの暇だったからですよ」


 特に困るということもないから佐藤先輩と待っていたら集合時間前に先輩も来てくれた。


「まず最初は映画だよね、行こー」

「分かりました」


 少し前を歩いてくれていたから先輩の手を握ってみた。

 ここで揶揄してくる人だったらこんなことしていないけど、そんなことは絶対にないから安心して続けることができる。


「そんな顔をしないでください、ただ佐藤先輩がいるというだけじゃないですか」

「だけど僕はふたりきりがよかったんだ」

「そう言ってくれるのはありがたいですけど、別に今日の予定全部が終わった後でもゆっくりできるじゃないですか」


 この関係が続けばこういうことだって何回もできる、私達次第なんだから絶対にそうだと言える。


「到着! はい、じゃあふたりで行ってきてね」

「「え?」」

「一緒に行くわけがないでしょ? 邪魔するのは違うでしょうよ」

「でも、それだと見られないことになりますよ?」

「いいの、だってこのままだと私のせいで豊崎君は楽しめなさそうだもん」


 そうしたら今度は「ごめん」と謝って縮こまってしまった先輩、とりあえずなんとかしたくて挨拶をして別れた。

 先輩的にはああやって離れられたら離れられたで気になってしまうのだろう、先程自分があんなことを言ったからと後悔しているかもしれない。


「はぁ、僕は駄目だなあ」

「そんなこと言わないでくださいよ」

「でも、上戸君みたいにもっとどっしりとできていたらなぎさちゃんだって……」

「そんなの関係ないですよ、私が求めたのはしん先輩なんですから」


 ちょっと混んでいて助かった、その結果、こうして映画を観る前に話せたからだ。

 先程のままだったら楽しめなかっただろうし、相手がそんな状態のままこちらだけ楽しむというのは違うから本当にありがたい。


「元気になってください、まだ今日は集まったばかりですよ」

「……分かった、ふぅ、よし、なんとかできたよ」

「それならよかったです、今日もいっぱい楽しみましょう」


 先輩が切り替えてくれた後は全く問題がなかった、映画を楽しく観た後はまたアイスを食べたりした。

 ポップコーンを食べたり飲み物を飲んだりしたうえでそれだったので、残念ながらお昼ご飯を食べられる余裕はなくなってしまったけど……。


「あっ! そういえば佐藤先輩のことを忘れてしまっていました!」

「あ、そういえばそうだ、なんか当たり前のように別行動をしていたね」

「空気を読んでくれたということにしておきましょう」

「分かった、探すのは違うからね」


 探したところで結構な人が出てきている今日、見つかる可能性はほとんどないと言ってもいい。

 見ていることが好きなら敢えて見つからないように行動しているかもしれないし、多分そんなことをしたらその佐藤先輩に文句を言われてしまうだろう。


「それに朝言ったことは本当のことだから」

「ははは、しん先輩は変わりませんね」

「ははは、だって僕だからね」


 映画を観たなら後はとにかく自由だからまた手を繋いでゆっくりすることにした。

 ただ歩いているだけでもひとりではないというだけで、隣に先輩がいてくれているというだけで楽しかった。

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