二
夜若華「っという事でここが君の部屋になりますよ〜改めてよろしくね、新入生くん。」
祈継花「あ、祈継花と申します。よろしくお願い致します! 」
夜若華「さて、と〜ぉ」
面倒な事務を終えた。という態度を一切隠す気も無しに夜若華は学院内蔵の寮から廊下へと踵を返そうとする。
しかし寮の中に居たもう一人が多少声を大きくし呼び戻す
夜若華「……なんですか〜"センパイ"」
夜若華が身体を部屋の方へと向き直しながらそう言う。
その顔は多少不機嫌になっている様な印象を受けた。
そして、部屋の声のした方からは少し困惑した様な言い方でまたこう返ってくる。
「留年したからってあんまり自虐的になりすぎるのもどうかと思うよ? 」
「と、言うかキミは学院の事が好きすぎるでしょ。"元首席様"」
夜若華「まあ好きですけどもね〜少なくともあまり交友が深くないお方との雑談よりかは大好きだと自負してます〜」
皮肉の応酬。言葉は刺々しいが、表情を見る限り仲は悪くなさそうだと感じる。
「じゃあ、そろそろ本題に入るかな。トビラの方を閉めてくれるかい? 祈継花ちゃん? 」
祈継花「あっはい! ……えっっと」
夜若華「白兎〜、この学院の自称一般的な最高学年」
そう扉を閉じながら本人を前にして代わりに自己紹介を手短に済ませる。
その様子から早く本題に入りたい様に見えた。
それを察したのか話の腰を折る事無く小気味好く白兎も話を続ける。
白兎「まあ結論から言うとさ……」
――
「ねえどうしたらいいですか? 」
「ん? 何が? 」
ただの学院生二人が綺麗な廊下を歩く、そこに埃はもう無い。
しかし、同じ名前を冠している同じ憧れの地である事に変わりはない。
にも関わらず一人の顔はこの学院にいる意義を己へと問いただしていた。
「どうでしょう、私としてはもうここにいる理由はないんですよね」
「またその話かよ」
昨日今日だけで4回は聞いたぜ。と続ける一人、それだけ深い話題な訳ですよ。と更に続ける二人。
「先代院長様に憧れてこの学院に入ってきた人は私の同期だけで8人いたんですよ? 全盛期はその比じゃなかったと言います」
「それが……」
「残念な事なのは分かっているさ、俺だって悲しい。だがそれを嘆いて生き返る訳ではない、俺はあの事故を恨むぜ。」
そう言った瞬間に丁寧な学院生は歩みを止め周りを確認する、丁寧に、何度も、訝しげに。
「? どうしたんだよ」
「……耳を貰えますか? 」
「おう……」
「(どうしたんだよ)」
「(貴方が恨むべきは"事故"ではなく"事件"なのかもしれません)」
「(どっ!? どういう……)」
「(その通りの意味ですよ、あの日の火は結局危険の伴う実験の失敗によって生まれて巻き込まれた事にされてしまいましたが……)」
「(まあ……齢50後半だったとはいえそれでポックリと逝くタマでは無いな)」
「(何より明らかに黒煙の中を人型の何かが動いたとかいう話も聞きますよ……)」
「(…………。)」
ただの学院生二人が綺麗な廊下を歩く、そこに埃はもう無い。
しかし、同じ名前を冠している同じ憧れの地である事に変わりはない。
にも関わらず二人の顔はこの学院にいる意義を己へと問いただしていた。




