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十悪業  作者: 悠希妙
11/11

十一

暗闇の中で、何も見えないながらも

いや見えないからこそなのかもしれないが、私の感覚が私にほのかに暖かさを教えてくれる。


崖に落とされて、諦めていた所までは一応覚えている。

そうなるとここが死後の世界なんだろうか? 


こんなに暗くて暖かくて何も無い所だとは思っていなかったが、案外心地よく感じる。


結局、皆に会う事はココでも出来ない。

それだけは唯一の心残りかもしれない


そう考えていた時、扉をノックする様な音が聞こえた。


反射的に私は体が動く。

暗闇だった部屋は明るさを取り戻した。


いや、違う。

私の顔から何かが取れた、これが私の視界を奪っていたんだ。


濡れタオル……? の様だ。


私の瞼の上に何枚かに折られた濡れタオルが、乗っかる様にして敷かれていたらしい。


身体の麻痺は取れており、怪我も殆どしていない。


気絶している間がどういう状態だったのか等、一切分からないがひとつ言える事がある。


私は……助かったんだ。

生きているんだ。

死んでいないんだ。


嗚呼 私はその事に心から安堵している。

そしてその安堵と同時に押し寄せる疑問。

誰が私を助けてくれたのだろうか。

仲間も、友人も、誰も居なくなってしまった私の事を一体誰が? 


根拠なんてない直感が、その答えとなる人物がきっと今扉を叩いたのだと告げていた。


私はその扉を凝視する。

扉がゆっくりと開かれて、そこに居たのは一人の初老程度の男性だった。


祈継花「……貴方が、私を助けてくれたのですか? ありがとうございます。」


その男性は物腰柔らかく、ゆっくりと私の寝ていたベットの近くの椅子に腰掛けてこう言った。


「……キミが祈継花さん。だね? 」


祈継花「……あの、私の名前をどこで……? 」


「あの学院の院長。」


「と言っても、先代の方とだが。」


「ま、私は彼の古い友人。旧友だったのさ。」


祈継花「古い友人……。」


私が学院に来る前。

先代の院長の友人を名乗るこの人の事を私は、知っていた。


祈継花「もしかして、貴方は


私が確認の為に名前を尋ねようとしたその時、この人は人差し指を口に当てて、私の声を遮った。

そしてこちらへと、ゆっくりと歩きながら小声で囁く。


「……祈継花さん。分かるかい? 」


「人間っていうのは善も悪もその時々によって形を変える。悪の種類も様々に」


これまでの経緯、事情を知っている人間と確信出来る目前の人が、緊張感を走らせながら語り始めている。


臨戦態勢へ入るべきだと直感が告げた。

何か出来る事なんてそう多くは無いんだろうが……既に一度死に対して恐怖を抱くのをやめた。

そんな私が今改めてもらった。

生きているからこそ湧き出る感情。

『死』という巨大で強大な自然の摂理に対して、有象無象とも言える様な一人間の極々小さな気持ち……。

私の顔つきが変わったのを見てだろう。

その人は本題へと入った。


「今、この家へと誰かが向かってきているのを確認した。恐らくはキミの遺体を発見出来なかった現院長かその仲間だと推測する。」


「私が応対する。気配を消してこの部屋のどこかへ隠れてくれ。」


私は何も喋らず頷く。

それを見てその人はすぐに扉を開いて部屋から出て行った。


私はベットから降りて隠れられる箇所を探しながら妙な高まりを感じていた。

先程の発言。


『善も悪もその時々によって形を変える。悪の種類も様々に』


だとしたら、あの院長の悪の形や種類はどれだけの禍々しさを誇るだろうか? どんな業をその瞳に宿し続けた? 


正すとか、粛清とか、裁きとか、そんな大層な信念なんて掲げない。

でも……例えこの事がどれだけの悪へと通じようとも


私は生きて、あの悪と豪を十字架へと括り付ける。


復讐を遂げる為に、私はまだ死ぬわけにはいかない。


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