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本当の理由

長いです、すみませんm(_ _)m




この部屋の主である魔物、改めて見てみるとその姿は大きさが五メートル程の花に巨大な口がつきその花の下には相当な太さと長さを持つ蔓が二本伸びている。一言で言って見た目はかなり弱そうだ。実際はあの三人が苦戦する程強いんだけどな。


ボォン!ボォン、ボォンボォン…


おっと、もう始めたな。スクロワが取り巻きの魔物へ向け〈ファイアボール〉を放った。さすがに創造魔法は使えないようで魔法陣を用いている。


植物系の魔物には基本的に火属性の魔法が有効だ。ただあれじゃあ確実に火力が足りない。精々少し動きを止めるくらいだ。

ただその隙をついて他の二人がサイドから部屋の主を攻撃する。今見た限りでは昨日教えたことをしっかり実戦で使えているようだ。二人が攻撃すると同時に二人に向け部屋の主の蔓が攻撃を仕掛ける。


ドゴォン!ザシュ!


二人の攻撃力が勝ったようで、蔓はダメージを負い地面に落ちる。


しかし二人の攻撃を受けたはずの蔓はすぐに再生を始め数秒のうちに復活してしまった。


やっぱり再生するのか、まあ再生がなければあの三人なら余裕で勝ててたからな。しかし再生する魔物にはだいたい同じ特徴がある。この特徴がない再生する魔物といえばもっと高ランクの魔物だ。この程度のランクなら同じような特徴を持っていて不思議じゃない。そこに気づければ三人にも勝機はあるだろう。ただ取り巻きの動きを封じた状態での部屋の主への攻撃では意味がない、それじゃあ俺がさっき言った言葉の意味には辿り着けない。







「だめです。やはりすぐに再生されてしまいます!」



「一旦退がれ、二人とも」


「はい!」


「はーい!」


「どうしよう…(アキハさんはさっき取り巻きの魔物の動きをよく見てろ、と言ってました。アキハさんがそう言うなら必ず意味がある筈ですし、なるべく早くその意味がわからないとこっちの体力が尽きて負けてしまう)」



「二人は再び私の魔法発動と同時に部屋の主に向かって走るんだ!」



スクロワが先程と同様に魔法で取り巻きの動きを止め、そのうちに二人は再び部屋の主へと攻撃を入れる。先程よりも力の入った攻撃、しかし部屋の主は再び蔓を犠牲にし二人の攻撃を防ぐ。


「二人とも退くんだ!」

部屋の主が蔓を再生する瞬間にスクロワが攻撃を仕掛ける。

「剣技、弾射突き!」

見ただけではただの突きだが、しっかりとした溜めがつくられており僅かだが剣先に闘気が乗っていた。


「捉えた!」


スクロワの剣先が部屋の主に届く寸前、動けるようになった取り巻きが主の防御の壁となりスクロワの目の前に現れる。


ドゴォンッ!


壁となった取り巻き達には大きな風穴が空いていた。しかし防御壁の役割を果たしその攻撃は部屋の主には届いてはいなかった。



「くそ!一旦後ろに退がるぞ。コンクル、キュルム」


三人が後ろに退がる頃には再び取り巻きたちの数は戻り、蔓は再生していた。



「(どうする、さっきの攻撃が私の中で最大の威力のものだった。蔓が再生する瞬間を狙えれば魔物の蔓による防御もなくダメージを与えられると思ったのに。いや、そもそも蔓が再生するならその躯体全部が再生するんじゃないのか…くそ、どうすればいい。私が殺らなければあの男に…)」



「スクロワさん、ちょっといいですか?」


お?コンクルがスクロワに話しかけた。しかし取り巻き程度なら話しながら攻撃をいなす実力はあるんだよな三人とも、部屋の主の攻撃も躱すくらいなら出来てるし、後は体力がどこまでもつかが問題だな。


「なんだ、コンクル」


グシャ


「少し気づいたことがあるんです」


ドゴォン


「気づいたこと?」


「はい、おそらくあの魔物には急所が存在しているはずです。そもそも魔物の躯体全てが再生するなら取り巻きは先程のスクロワさんの攻撃を防御せずスクロワさんに攻撃すれば良いはずだった。でもそれはせず防御に回った。つまりあの攻撃を部屋の主が受けた場合、ダメージを負う可能性があったということです」


「なるほど…しかしそれなら部屋の主も防御はしていただろう?」


ドンッ


「いえ、部屋の主は攻撃しかしていません。これは推測ですが、おそらく取り巻きの方が知能が高いんだと思います。取り巻きが防御に回った理由が急所にあるとするならば部屋の主も僕達が攻撃した時防御に回る筈でした。しかしそうはしなかった。全て攻撃で受けていた。取り巻きの防御の理由が急所だとするならば部屋の主が自分の急所を理解できない程に知能が低いということになります」


スパッ


「急所、…しかし主であるあの魔物が取り巻きより知能が低いというのはあり得るのか?」


「それはあり得るよ。前に戦った植物系の魔物も取り巻きを自身で生み出す感じだったんだけど、知能が低かったからそいつ自身が勝手に自滅してくれたしね」


「ということです」


ズバッ


「しかし、そうなると急所は一体どこに」


「それはまだわかりません。ですが蔓ではないでしょうし、広い範囲で言えばあの花のどこかですよね」


「花の何処か、か。しかしそれでは攻撃の的が絞れない。運が良ければ急所に当たるかもしれないがそれではキリがないぞ」


「そうです。だからこういうのはどうでしょうーー」



ーー「行くぞ!」


「はい!」


「うん」


「ファイアボール!」


スクロワが再びファイアボールを取り巻きに放つ。


動きが止まった取り巻きの間を抜け二人が部屋の主へと攻撃を仕掛ける。



ドゴォン!


ズバッ!


二人の攻撃を受け再び部屋の主の蔓はダメージを負う。だが、すぐに再生が始まる。


「今です、スクロワさん!」


「ああ、わかっている。ファイアボール!」


スクロワが放った魔法は部屋の主の顔面に直撃し炎は一気に広がり顔全体を包む。しかしこの攻撃でも大したダメージは与えられずすぐに再生が始まり、それとともに炎は消えていった。



「どうだった?」


「すみません、僕の視力でははっきりとはわかりませんでした」


「そうか、キュルムはわかったか?」


「ばっちしだよ。一番上についてる花びら、そこだけ再生されてなかったよ」


「一番上の花びら、そこが急所か。急所なら確実に再生されない、コンクルの読みが当たったな」


「はい良かったです。ただどうやって急所に攻撃を入れるかです。一番望ましいのはスクロワさんの先程の攻撃です。元の防御力がわからない以上攻撃力は高い方がいいと思います」


「そうだな、あまり連発はできないがまだ数発は大丈夫そうだ」


「攻撃はやはり先程の流れと同様にいきましょう。取り巻き達の防御の壁は僕達がなんとかします。大丈夫ですよね、キュルム」


「もちろんだよ」


「それならば任せる。よろしく頼むぞ」


二人が部屋の主へ走り出し、その瞬間に取り巻きへファイアボールを放つスクロワ。そして魔法を放ち終わると同時にスクロワ自身も部屋の主へと走る。


ドゴン!


ズバッ!


二人が蔓へ攻撃を入れる。そしてスクロワは先程と同様攻撃の構えをとる。しかしその瞬間スクロワの目の前に取り巻きの防護壁が現れる。


「やはり私の速さでは間に合わないか!」



ドゴォン!


バキバキッ!


目の前にあった取り巻きの壁は突如として崩壊し部屋の主の姿がスクロワの前に現れる。


「蔓の再生はまだ終えていないようだな、これで終わりだ。剣技、弾射突き!」

スクロワの剣先が部屋の主の急所を捉える。


ドゴォンッ!!


スクロワの攻撃と共に部屋の主は風穴を空け、倒れた。主の死により取り巻きだった魔物達は枯れ木と化してその姿を消していった。



「はあ、はあ。やはり連発はまだきついか」

スクロワの剣を持つ手は震えていた。剣をしまい手を後ろに隠す。


「スクロワさん、やりましたね!」


「凄かったよ、スクロワ!」

二人がスクロワに駆け寄る。


「あ、ああ、ありがとう。それより二人はどうやってあの取り巻きの壁を?二人が蔓に攻撃したタイミングでは間に合わないはずじゃ…」


「昨日、アキハさんに教わったんです。『槍術では最大の力を込めて攻撃を放った後には隙が生まれる。まあその為に1つ1つの動きを極めるわけだけどな。だから基本的に槍術は最大の攻撃ではなく連続的な攻撃を相手に与える技が多い。でも自身の最大の技でなければダメージを与えられない相手、そして連続して攻撃しなければいけない場合、前方に攻撃をした後そのままの体制で槍を放て、すでに前方に加わってる力を押しのけて飛ばせれば攻撃力は多少落ちるが筋肉の伸縮を使ってすぐに攻撃を仕掛けられる。まあこれは槍が向いている前か後ろにしか無理だけどな』って、上手くいって良かったです」



「あいつがそんな事を…。キュルムもか?」



「教わったことは違うけど、私もアキハさんが言っていた事を試したよ。言っていたというより習った技だったんだけどね、この二本の剣特有の技を習ったんだけどそれを使ったんだ。私も自信があったとは言え上手くいってよかったよ〜」


「そうか…」




「どうやら無事倒せなみたいじゃないか、良かったな」


「アキハさん!」


「ふふん、全然余裕だよ〜」


「………」


「教えた事もちゃんと出来てたしな。それに二人はしっかり俺が言っていた事もわかってたみたいだしな、二人は」


ビクッ

「ちっ…」


「え、キュルムもわかってたんですか」


「うん、たぶんコンクルと同じぐらいのタイミングだったと思うよ。コンクルが言わなきゃ私が言ってたしね」


「それでどうだった、スクロワ。結果的には今の戦闘の最後を飾ったのはスクロワだったが本来指示を出すはずの上の立場のものがその役割を全うできていなかった。コンクルが教えなければ急所がある事にも気付けなかっただろ」


「それは…」


「しっかりと認めろ。この戦いの場において冷静さを欠いていたと。最後は二人のおかげで戦闘に集中できていたが、序盤の途中戦闘から意識がそれていただろ」



「もういいだろ!結果は私達三人の勝利だったんだ!」


「結果で語るんじゃない。お前の行動によっては仲間までもが危険に晒される事を、そういう立場にいる事を自覚しろ」


「アキハさん…」


「……」


「くっ…」


「お前一人で戦っているんじゃないんだ。戦場において私情を無くすなんてのは無理な話しだろう。怒り憎しみ、本来の戦場にはそういったものが充ちている。ただなお前が騎士として誇りを持っているんだったら戦場においては私情に支配されてはいけない。それは自分自身、はては仲間も危険に晒す行為だ。その行為は自分と共に戦ってくれている奴に迷惑だ。そして武人として磨き上げた自分の精神に対して失礼だ」


語ってみた俺!正直これが俺自身正論なんて思っていない。ただスクロワが納得せざるを得ない事を言ったまでだ。


「くっ…」

スクロワは二人に頭を下げる。


「…すまなかった。こいつの言う通り私情を持ち込み冷静さを欠いていた」



「あ、頭をあげて下さい」

戸惑うコンクル、戦ってる時は結構凛々しかったんだけどなこいつ。


「確かにアキハさんが言ってることは正しいかもね。いつものスクロワなら今回の事は気づけただろうし」


「ああ、理解している」


「だからさ、私達もスクロワを信頼してるんだからそれを裏切らないでよ?」


「っ…すまなかった。…こんなの私らしくもない。戦いの場でこんな愚行を働くとは」


スパンッ

両手で自身の頬を叩くスクロワ。

「もう大丈夫だ、いつもの私に戻る。戦いの場において常に冷静な、武人としての私に」


「うん、スクロワはやっぱりその方がいいよ」


「はい!僕もそう思います」


仲良いなこの三人。


「今回は自分の非は認める。だがやはり貴方は嫌いだ!」


わざわざ言わんでもいいだろうに。


「なあ、聞くけどさ。なんでそんなに俺が嫌いなの?」


だいたい予想はついてるけど一応本人の口から言わせよう、そして説き伏せてやろう。


「それは…私の尊敬しているマクウェルさんが…」


うんうん、尊敬してるマクウェルさんが?


「貴方に惚れてしまったからだ!!」


「「「……」」」


「は?」


「な、何言ってんですか!?スクロワさん!」


「そんな事マクウェルさんは一言も言ってなかったでしょ!」


は?なにどういうこと。この三人の隊長が俺に惚れてる!?いや、ないないない、絶対ないだろ。あったら気持ち悪いです、おっさんに惚れられるってなんだよ。


「二人も聞いていたじゃないか、こいつの事を美しいって」


ブフッ!美しい!?何、マジでそういう趣味なのあのおっさん。


「いや言ってたけど、それは…」


言ってたのかよ。


「ごめんね、アキハさん。ちょっとスクロワと話してくる」


「あ、ああ」


行くよ、と引っ張られながらスクロワは少し離れたところに連れて行かれる。

というか、俺も気になるので聴力を強化して話しを聞く。



ーー「スクロワ、それは勘違いだって!」


「勘違?いや確かに言っていたじゃないか。あの御仁は美しかった。ほれぼれする、と」


「それ、だいぶ端折ってるからね!実際は『あの御仁の戦いは本当に美しかった。あの洗練された動きは見ていてほれぼれするほどのものだ…まさしく彼は理想の武人だ』だからね」


「おそらく、途中から話しが頭に入っていなかったんじゃないでしょうか」


「え…私の、勘違い?」


「そうだよ、実際に私達もアキハさんの戦ってる姿は見たけど本当に美しいとしか言いようがないものだったんだから」


「そうですね、本当に凄かっです」


「嘘……どどど、どうしよう!私はあの人に散々失礼なことを」


「…今更ですね。それは、まあ謝るしかないですけど。…しかし、どうしてマクウェルさんがアキハさんに惚れてるからってスクロワさんがアキハさんを嫌いになるんですか?」


「それは…私が任務で街にいない間に見ず知らずの男によって私の尊敬する人が道を外したと思って、私が側にいればって思ったのと同時にその男さえいなければと、…私はこの任務の途中でその男を殺して自害するつもりだった…」


「うわ…」


「そ、それはまあいいとして。実際の理由ではどうなの?自分が慕う人が尊敬する人、つまりはアキハさんだけど、それなら別に嫌いにはならないの?」


「それは当たり前だ!尊敬するマクウェルさんが尊敬すべき御人だとまで言っていた人だ。武人として、そんな人と共にいられるのはとても幸運な事だ」


「じゃあちゃんと謝らないとね、アキハさんに」


「あ、ああ、謝るとも」


「それじゃあ、アキハさんのところに戻ろっか」


「ああ…」




勘違いで、良かったー。いや、マジで良かった。これが本当だったら俺は直ちにあの男の俺に関する記憶を全て抹消しに行かなければならないところだった。


しかし、そうなるとスクロワが俺を嫌う理由は勘違いだったわけだ。これで三人に訓練を受けさせることができるようになった。意外なところで問題が解決したけど、最初からスクロワに俺が嫌いな理由を聞いていればすぐに解決してたな、まあ今更だけど。



「あ、あの…」


スクロワが俺の前に来た。後ろには二人が付き添っている。今更だけどこの三人の関係ってなんなんだ?副隊長のスクロワに大して二人は結構親しげに話してるし。


「私の勘違いでこれまで失礼な態度を貴方にとってしまった。本当に申し訳ない!」


勢いよく頭を下げるスクロワ。

まあ俺も前のキャラは別に嫌いじゃないから良かったんだけどね。反抗心がある奴は面白いしな。その心を折るのもまた一興。


「まあ俺は全然気にしてないからいいよ」


「しかし、何か償いが…」


「それより俺が嫌いじゃなくなったんなら、俺の稽古、受ける気はあるか?償いならそれでいい、俺も人に教えるっていう経験はありがたいしな」


「それは是非!貴方に稽古をつけてもらえるなら喜んで受けさせてもらう。だが、それが償いだと私の気持ち的にも…」


「そんな大した事をしたわけじゃないんだから償いなんて大袈裟だろ。まあ、あえて言うなら俺が教える事を全部出来るようになってくれ、かな。それが教え子であるスクロワの俺に対する最大のお返しだ」


「そ、そうか、わかった!」


「まあ、稽古と言ってもこの旅の間だけだから期間は短いけどな。それでもその間にできる限りの事は教えてやる。覚悟しておけよ三人とも」


「ああ!」


「はい!」


「もっちろん!」



これで抱えていた問題は1つ解決したわけだが、もしかしたらこの王都への旅も意外と長くなるかもしれないんだよな。それもあの魔王の出方次第だけど。


勘違いで男好きと認識されていたマクウェルさんがかわいそう…

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