最深部には
暑いです(;´Д`A
「ところでスクロワ、その後ろに隠してる手を出してみろ」
「な!?……まさか気づかれていたとは」
「まあこっちはずっと戦闘を見てたからな。さすがに気づく」
差し出されたスクロワの手は痙攣していた。
「ど、どうしたんですか!?」
「もしかしてさっきの技?」
二人は気づいていなかったようだな。
「…ああ、あの技はあまり連続して使えないんだ。原因はわからないんだが、大抵連続して使用するとこうなってしまう。しかし今回は二回だったからな暫くすれば震えも治る。心配は無用だよ」
「本当に大丈夫ですか?」
「無理は良くないよスクロワ。ポーションならあるし、使う?」
「気持ちはありがたいがこの症状にはポーションは効かないんだ。今までどんなポーションを試しても効果がなかった」
そう話している間もスクロワの手は痙攣し続けていた。
「俺が治してやろうか?」
「へ?な、治せるのか!?」
「ああ、もう少し手をこっちに出してくれ」
差し出されたスクロワの手を掴む、暫くして離すと震えは治っていた。
「うそ、何で…」
「まあ今後の為にも少し説明しておく。さっきの震えは簡単に言えばスクロワの魔力の乱れが原因だ」
「魔力の、乱れ?」
「そう魔力の乱れ、スクロワはさっきの剣技に闘気が乗っていた事には気づいていたか?」
「闘気…まさか?私は闘気を習得していない。それに闘気の習得はかなりの修行が必要だと聞いている。私は闘気に関して何の修行も受けていないぞ」
さっきのはやっぱり無意識でのものだったのか。魔力も乱れるってものだろう、闘気とは自分の意識によって魔力を変化させたもの。それを無意識に行えば身体の魔力の循環を無視して無理矢理変化させたことになる。その負担が剣に闘気を伝えた手に痙攣という症状で現れたんだろう。しかし技として闘気を覚えた、か。無意識だとしてもやはりスクロワは才能がある。
「それでもスクロワが闘気を使っていたのは確実だ。ただまだ習得できたわけじゃない。今の状態ではあの剣技を使用する度にこの症状は現れる」
今は俺がその魔力の乱れを俺自身の魔力をスクロワの魔力に変質し体に流すことで整えた。
「それじゃあ、どうすれば…」
「当然、俺が本当の闘気を教えてやる。というか最初からそのつもりだったしな」
「最初から?」
「俺の稽古の最終目標はしっかりと闘気を使えるようになることだ。さすがにこの短期間で達人の域に達する事はできないと思うが、ある程度使えるようになれればあとは自分自身で経験を重ねていけばいい。そうすればいつかは達人の域まで辿りつけるかもな」
「闘気…」
「ぼ、僕にできるでしょうか…」
「闘気か、楽しみだな〜」
「まあ、それは今度の稽古の時にでも詳しく話すさ。今はとりあえず先に進もう。魔法陣なら部屋の奥にあったからな、そこから再び転移する」
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ーー
ー
ボス部屋から魔法陣によって転移してきた場所は濃霧が立ち込め辺りは薄暗い、何処となく空気が淀んでいる感じがするな。それに周りの景色なんだが…墓地だ。何本もの墓標が地面に刺さっており、その墓標は一本の道を作っている。ただ霧の所為であまり遠くまでは見えなくなっているな。
「なんだ、ここは…」
「なんか涼しいね」
「アンデット系の魔物が出てきそうです」
「とりあえずこの一本道を進めばいいだろ。さっきの流れ的にこの空間を抜けたらまたボス部屋があったりしてな」
「でもその場合私達は確実に出口ではなく最下層に進んでいるんじゃ…」
「いや、ダンジョンをクリアすれば地上に出れるかもしれないし出口に向かってるであながち間違ってないんじゃないか」
「確かにそうだが、ここはダンジョンだ。魔物の強さは並じゃない。未だこの世界にあるダンジョンを攻略した者は誰一人としていない。それ故にダンジョンは今でも未知であり続けれてるんだ。そんなダンジョンを私達だけで攻略だなんて、無理があるだろう」
それは初耳だ。この世界のダンジョンは全て未攻略状態。それは是非とも俺が全てのダンジョンを攻略したい。
「でもまださっきのボス部屋でしか魔物にはあっていないよね〜。ここもまだ魔物は出てきてないし」
「油断は禁物だ。魔物のランクも進むにつれ上がるはずだ」
そう言ってスクロワは周囲に警戒の目を走らせる。
「魔物の強さか、それが目安になるかもな。この先の魔物が強くなっていくようなら俺たちは確実にダンジョン最深部へと向かってる」
「確かにそうだな」
ドゴオォン!!
俺たちの後ろ、数十メートル後方から爆発音のようなものが響く。
「なんだ?」
「爆発?!」
「あれは…」
「よし、お前ら…逃げるぞ、走れ!」
そう言って俺は駆け出す。
「え?」
「な、何?」
「ちょ、アキハさん?!」
「置いていくぞ、死にたくなかったら走れ!」
俺の『死にたくなかったら』という言葉に三人は血相を変え走り出したーーー
ーー「はあ、はあ、…い、一体、なん だったんですか?」
「ふぅ、そうだ。急に走り出すから驚いたぞ。後ろに一体何があったんだ?」
なんだ、見えていなかったのか。
「キュルムは見えたか?」
「え、うーん…黒い塊が爆発した場所から溢れかえってるようにしか見えなかったけど」
「そうか、あれはな…Gだ」
「ジィ?」
「そう、Gだ。黒光りする躯体、予測不能の動き。神出鬼没の怪物だ」
「そ、そんなに恐ろしい魔物なんですか」
「とりあえずあいつらはもう追ってきてないようだから良かった。お前らもあれに会ったら戦わずに逃げろ」
もしくわその姿一片たりとも残さずに燃やし尽くせ。
「わ、わかった。気をつける」
「は、はい」
「魔物の姿、もう少しちゃんと見れればよかったな〜」
俺は地球であいつに心の傷を負わされた。あれは俺があいつに初めて会った時、なんだ虫かと部屋にいたそいつを能力で操作し外に追い出そうとした。その時だった力の加減を誤りGの体が弾け飛んだのは…破片は部屋の隅々に飛び散り、多大なダメージを自らの死とともに部屋に与えた。俺は転移することでGの破片からは逃れたが、もうその部屋で過ごす気にはなれず止むを得ず引っ越しを選択した。本当に最悪な出来事だった。
…ん、あれ?なんか今考えるとすごく腹が立ってきた。よし、次会った燃やし尽くそう。Gの全てを。
「しかし、今のでだいぶ進んだと思うんだけどな」
「まだ魔法陣は現れませんね。それに周囲が霧で囲まれていて先に何があるのかわかりません」
「そうだな、それじゃあこの霧をまずは晴らすか」
俺は風魔法で竜巻を生み出し周囲の霧を晴らしていく。
ブオォォォォォ
「うわぁ!」
「力を抜いたら飛ばされそうだ」
「だんだんと霧が晴れていくよ」
霧が晴れ周囲の景色がはっきりと見えるようになった。俺はどこまでも墓標が刺さった景色が続いていると思っていたんだが墓標は道の付近にしか刺さっておらずその先は断崖絶壁だった。
「崖、どうなってるんでしょうか?」
下は暗闇でどのぐらいの深さがあるのかはわからない。
「道もまるでどこまで続いているかわからないくらいに先が見えないし、これ本当に魔法陣に辿りつけるの?」
「どう思う、アキハ殿」
殿?ああ、そういえばスクロワが俺の名前呼んだのって初めてだったな。しかし、初めて呼ばれる呼び方だな、殿って。
「どうだろうな、たぶんだけどこのまま進んでも魔法陣は見つからないだろうな。…よし、とりあえず崖から落ちてみよう」
「崖から落ちる?大丈夫なの…」
「とりあえず死ぬことはないし行くぞ。ほれ、落ちろ」
ドンッ
「え?」
「うそ」
「ちょっ」
「「「うわあぁぁぁぁ!!」」」
よし、三人ともしっかりと落ちてくれたな。三人の最後の顔が凄かったな。一言でいえば面白かった。
しかしだ、俺が三人を下に落としたのにはしっかりとした理由がある。何も根拠がなく下には落とさない。多分このダンジョンはここまでだ。下には魔法陣の気配があったしあの三人はすぐに地上へと転移されるだろう。
「さあ、これで邪魔者は居なくなったぞ!」
誰もいなくなった空間に叫ぶ。俺の言葉は空間に反響し、その音が収まるとまた静寂が訪れた。
グワァン!
辺りの景色が急にブレだした。まるでチャンネルを合わせるかのようにいくつもの景色に移り変わりブレが収まる頃にはまるで違う景色に変化していた。
そこは王の謁見の間という言葉がふさわしい造りの部屋だった。数段上がった段の上には一際豪華な椅子が置かれ、壮年の男が座っていた。部屋に似つかわしくない質素な服装だ。ただその男が放つ雰囲気、それはただ者でないことを容易に伝える。
「随分と手荒な歓迎じゃないか」
俺が話しかけると微笑し口を開く。
「すまないな。私も君の気配を地上に感じて慌てて招き入れたんだ。まあそのお返しに君の意図通りに事を運んであの三人の成長を促して上げたからな、それで等価交換成立ということで許してくれ」
許してくれと言っても態度からはなから謝罪する気が無いのは伝わる。
「はあ、もうそれはいい。どうせ俺以外は既に地上に出てるんだろ」
「まあな、少しは君の仲間にもダンジョンというものを味わってもらおうと思っていたんだが。君と早く話がしたくてついすぐに返してしまった」
「通りで魔物が出てこないわけだ」
「まあね、魔物が出てきてはここに来るまでに時間が掛かってしまうし、君だけをここに呼ぶわけにもいかない。それにあの森林と墓地は本来ならこのダンジョンの最深部つまりこの空間の一歩手前の階層なんだ。普段は階層主のとびきり強い魔物が守護してるんだよ。そして今回は魔法陣をいじってそこまで一気に転移してきてもらったわけだ」
ダンジョンの雰囲気をあいつらに味あわせる。その為に森林に転移させたのはまだわかる。魔物がでてこなかったのも今の説明でとりあえず納得できる。だが、
「それならあの三人を俺と共にあの墓地に招き入れる必要はなかっただろ、あの時点で地上に返しても良かったし。あのGといい、嫌がらせのつもりか?」
「あ、あれは、うっかりだよ。本当はあの魔法陣で君だけがこの空間に転移してくるはずだったんだ。それにあの魔物の大量発生も予期せぬ事だった。各階層ごとに別の魔物が管理していて連絡違いがあったようで慌てちゃったよ」
「はあ、そうかよ。その話が本当かは置いといて。今度会ったらあいつらは燃やすだけだしな。それよりだ」
「ん?何かな」
「俺に何の用だ“クロノス”」
「はは、久しぶりにその名で呼ばれたよ。君はだいぶ雰囲気が変わったようじゃないか、“アーク”」
旧友?




