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第24話 『恐怖のクイズ』

 姫路はまず、階段を下り1階へ向かった。階段を下りた先には美術室がある。実は、姫路はまだ一度もこの教室に入ったことが無い。しかし、SCウォッチを確認するが、誰もいないようだった。今度はここに隠れようかな、と思いつつも、1階の探索を再開する。校舎の1階には、生徒が入れる教室は決まっている。生徒課事務室や学園長室、事務局室に給品部など、休みの日には鍵が掛かっている部屋が多数あるためだ。実質上、1階は保健室と美術室と化学室以外は入室禁止だ。つまり、1階の探索は“楽”なのだ。

 

 姫路は、階段を下りた先すぐの廊下を渡り、突き当たりを左に曲がる。そしてもう一度廊下を左に曲がると、保健室がある。そこに誰かいるのではないだろうか、とSCウォッチを覗く。しかし、誰の反応も無いようだ。


「ここもいないか……じゃあ次は化学室を探索しようかな」


 保健室を通り過ぎ、そのまま真っ直ぐ突き進む。途中下駄箱やお手洗いがあるが、それも構わず真っ直ぐと歩く。化学室の前で、SCウォッチを確認した。


 ○00:35:32

  半径10メートル以内に、かくれびとの反応あり! 1人


 化学室に1人、誰かがいる。姫路は5分で1人見つけられれば、充分なタイムだと思った。


 中に入ると、初めての部活で隠れた時の記憶が蘇る。あの時は、この化学室の真上の物理準備室に隠れていたが、教室の構造は同じだ。大きな机が多数、そして準備室へと繋がっている扉が一つ。そんな記憶の中、化学室の様子を確認しようとした。暗い教室の電気を付ける。すると、何やら机と机の間がガムテープで通行禁止のように貼られていた。そして、机の上には椅子が上げられていた。このようなイタズラをするのは、一人しかいない。


「神宮ー! いるのかー?」


 声を上げたが、返事は無い。きっと、奥の方で小さく丸まって笑いを堪えているのだろう。ガムテープの迷路の入り口らしき場所の前に立った。椅子をどかし、机を乗り越えて行けば、辿りつくのだろうが、あえてここはこの迷路を突破することに決めた。せっかく迷路状に通行止めしてあるんだ。剥がして行ったり、無視して行ったりしたら、神宮の頑張りが無駄になってしまう。


 入り口らしき場所に足を踏み入れ、最初の角を曲がる。すると、角には紙が置いてあった。紙にはこう書いてあった。


 『私の名前をフルネームで答えなさい』


「神宮未佳!」


 姫路は声を張った。神宮が「正解だ。先に進め」と言っていたので、先に進んだ。すると、またもや曲がり角に紙が置いてあった。そこにもクイズが書いてあった。


 『私の平均睡眠時間は次のうちどれか

  ①約5時間 ②約7時間 ③約9時間』


「知らねえよっ!」


 思わず突っ込みを入れてしまった。が、神宮が「それが答えか?」と言ってきたので仕方なく紙を見直した。ここで姫路は推測する。高校生の平均睡眠時間は、大体5~7時間だ。朝起きる時間にもよるが、12時に寝て6時に起きる人が多いだろう。そして、もっと考える。神宮はいつも学校に来る時、シャキっとしている。つまり、起きてからある程度時間が経っていると予測できる。教室に来る時間は8時から8時半。起きてから2時間以上経っていると予測した場合、起きる時間は6時頃だろう。よって、寝る時間がカギとなるはずだ。いつも寝不足のように見えないので、しっかりと睡眠を取っているはずだ。しかし、9時間睡眠だと、夜寝る時間が9時から10時。こんな時間から寝る高校生はまず考えられない。よって、導き出した答えは……


「2番の、約7時間だ!」


 姫路がようやく答えを言った。そして、神宮の返事はこうだった。


「残念! 3番の約9時間が正解だ!!」


 その言葉を聴いた瞬間、頭上で何か音がした。上を向くと、紙コップが見える。そして、紙コップには糸が教室の奥の方に続いており、その糸が動く瞬間が見えた。紙コップは逆さに、口を下に向け、中身が飛び出してきた。大量のビー玉が見えた。姫路はこの瞬間、これに当たったら絶対に痛い、それと同時に回避不可能だと察知した。顔にビー玉が当たる。


「いってええええ!! くっそ……何するんだ神宮!!」


 神宮に対して文句を言ったが、自分が引き受けたゲームだったので、どうしようもない。奥の方で笑い声が聴こえたので、とても腹が立った。急いで次の角を曲がった。すると、またもや紙が置いてあった。


 『私の一日の自宅での平均勉強時間は次のうちどれか

  ①0時間 ②2時間 ③4時間』


 これについても、推測を立てた。姫路は、前回のテストの結果を思い出していた。あの時神宮は2位、690点近く取っていたと記憶していた。つまり、毎日勉強していないとあんな点数はまず取れないだろう。そして、もう一つ推論を立てる。先程、毎日約9時間寝ると言った。つまり、9時か10時には寝ているということになる。朝早く起きて学校に来るのに1時間は掛かるだろう。そして、下校時間は4時。家に着くのは5時。つまり、家で行動できる時間は5時から10時の間だ。そのうち4時間も勉強する性格には見えない。なぜなら、部室にあるゲームを妙に楽しんでいたからだ。勉強をする人にとって、ゲームは遠い存在。勉強を毎日4時間もしていたら、ゲームなど触れる機会もない。よって、一番妥当な時間は……


「2番の2時間だ!」


「またも外したな! 正解は0時間だ!!」


 という声が聞こえてきた。姫路が0時間という言葉を聴いた時、じゃあ何故あんなに成績が良いのだという疑問を持ちそうになったが、そんなことよりも上から降ってくるビー玉が痛かった。


「うぎゃああああ!」


 ビー玉を食らいつくした先には、ようやく神宮の姿を発見できた。笑いすぎて、お腹を抑えつけていた神宮は、どことなく少年のような姿に見えた。


 ●見つかった! 残りかくれびと…… 5人

 ○見つけた! 残りかくれびと…… 5人


 姫路とSCウォッチで通信し終えた後、姫路が話を振った。


「本当に睡眠時間と勉強時間、合ってるのか? どうも信用できない」


「ああ、合ってるよ。毎日大体11時に寝て7時半に起きる」


「7時半!? そんな時間に起きて学校間に合うのか?」


「家が近所だからな。その時間に起きても、全然間に合うのだよ」


「じゃ、じゃあ平均勉強時間ってのは……」


「毎日勉強? してられないね。面倒だし」


 姫路は呆れていた。意外と堕落した生活を送っている学級委員長に対してだ。毎日勉強していないという事実に対して、驚きを隠せなかった。


「じゃあ、どうしてあんなに成績いいんだよ?」


「一言で言うと、“天才”だからかな」


 余裕の笑みを持っていた神宮だったが、天才という言葉を口にした瞬間、表情が少しだけ曇ったような気がした。そうして談笑が盛り上がってきた時に、神宮が言った。


「ほら、こんなところで時間使ってたら勿体ないぞ。早く探しに行くことだな」


 姫路は背中を押された。おうよ、と返事をした姫路はSCウォッチを確認した。


 ○00:29:15


 意外と時間を食ってたらしい。神宮に別れを告げ、化学室を飛び出した。化学室前には階段がある。そこを上り、2階の探索を開始した。物理教室の前で、SCウォッチを確認したが、反応は無い。続いて、廊下を左に曲がり、教室が順々に並んでいるのを一つずつ確認する。9組、8組、7組……そして、男子トイレも確認した。しかし、誰の反応もなかった。更に教室のチェックを済ます。が、これもまた何の反応もなかった。1組まで全ての教室を回ったが、SCウォッチに反応はなかったのだ。1組と部室を通り過ぎ、職員室の前を通り、真っ直ぐ廊下を進む。左手には会議室と情報処理室へ続く階段があった。


 3階の探索は躑躅森の仕事だが、情報処理室は2階からしか行けない。なので、情報処理室の探索も済まそうと思い、階段を上った。


 情報処理室はA教室とB教室に分かれており、普段1組が使用するのはB教室だった。両方チェックするも、反応が無かった。正直時間をロスしてしまったのだった。階段を下り、会議室の前でチェックをする。


 ○半径10メートル以内に、かくれびとの反応あり! 1人


 会議室の中に誰かがいる。うちの学校の中ではあまり無い、ドアノブの着いた扉に手を掛ける。教室は全て引き戸になっているし、他の特別教室も大抵は引き戸になっている。しかし、この会議室は何故か、ドアノブ式の扉となっている。そして、ドアノブを回し、中に入る。


 見渡すと、長机がたくさん置いてあり、パイプ椅子もたくさんあった。会議室の前方には黒板と教壇があり、マイクも設置されている。後方には何故かピアノが置いてある。謎だった。実際、この教室はあまり使われていない。先生が会議の時に使うので、生徒はあまり用事が無い教室となっていた。緊張しながらも、会議室の中へと入る。壇上にあがり、全体を見渡す。が、誰の姿も無かった。長机の脚は丸見えなので、下に隠れようにも、前から見渡せばすぐに見つけられるはずだった。ピアノだけ、布が掛かっており、脚が見えない状態だったのが目に入る。


 ピアノに近づいていき、布をめくった。そこには、誰もいなかった。見当外れの答えに少々驚いた。では、一体どこに隠れているのだろうか? ピアノから壇上を眺めるも、ここに隠れる場所は他に無い。まさか、壇の中にまた西宮が隠れているのではないか、と予測したが、先ほど上がった時には不審な点は無かった。結局、どこにいるのかわからないまま会議室を後にしようとした。しかし、答えは見つかった。ドアの後ろに隠れていた人がいたのだった。単純な場所だった。


「小島、そこにいたのか」


「姫路は注意深いと思って、灯台下暗し作戦って感じだよ」


 普通に探したら、そこはすぐに見つかる場所だろう。しかし、予想はしていなかった。そんなところに人がいたら、結構簡単にばれてしまうからだ。逆を突かれた見事な作戦に感心しつつも、SCウォッチの通信を済ました。


 ●見つかった! 残りかくれびと…… 2人

 ○見つけた! 残りかくれびと…… 2人


 2人と表示されていたのに、少し驚いた。が、すぐに思い出した。そういえば、躑躅森も鬼だったな。


 姫路は躑躅森が今どこにいるのか、少し考えた。

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