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金色の月姫  作者: 藤の花
月より舞降りた鬼の姫
16/79

拾陸

____________


外は快晴で、春先の暖かさが心地よい。

ギコーギーギー

 

澪菜は千鶴に着替えさせて貰い、町に出ていた。牛車ぎっしゃがゆっくり揺れる。

この国の移動の乗り物はほぼ馬か牛車らしい。牛車の小窓から覗く風景は、見れば見るほど澪菜の世界と違っていた。

 

「おぉぉ!ここが平安の国なんだ。あ!あれはなんだろう」

見慣れぬ光景に大興奮。小窓から身をのりだしていた。

 

「姫、そんなに身をのりだすと落っこちてしまうよ。」

ごめんなさいとあやまると、朧のすぐ横に澪菜はチョコンと座り直した。

街は賑やかに市が立っていた。様々な店が建ち並び、人々も活気に満ちていた。ここまで来たらな是非降りて散策したい。

 

「外か………」朧は少し困った感じに悩み始めた。

 

そんな朧の姿に気づくと千鶴が失礼の無いように挨拶を交わし会話に入ってよいか確認すると話はじめた。

「差し出がましいですが、外は危のうございます。」

 

お忍びで出て来たから、千鶴と護衛を数人連れて来ただけだった。護衛をまともな数を付けず、町をあるくのは、朧の立場を考えると危険な事である。

 

「東宮様並びに女御様に何かございました時対処しかねます。」

 

「………無理なら……大丈夫……だよ?」

牛車の中は空気が重くなっていた。

千鶴はついて来てくれたが、まだ仲が修復されたわけでなかった。ただ単に仕事だからだろう。



空気の重さに最初に耐えかねたのは澪菜だった。千鶴は何一つ間違った事を言っていないからだ。

「ごめんなさい……変な事言って………帰ります……か?」

 

澪菜の言葉を聞いて朧はため息をついた。

 

「姫」

 

「はひっ」びっくりして澪菜の声が裏返った。反射的に怒られると思った。私またなんかまずい事言った!!?!!?

縮こまりながら朧の顔を覗き込むと、ふんわり笑っていた。

 

「そんなに萎縮する事はない。まわりに気を使いすぎなくてもいいから。もっと我が儘言ってもよいのだよ」


え――――ん!!?―――

予想外な事を言われ、理解しきれていない。そんな澪菜を見て、楽しそうにクスクス朧は笑っていた。

 

「やっぱり姫は愛らしいね。まあそのままでいた方が姫らしくてよいのかな。千鶴、外に出る仕度をしてやりなさい。」

 

「はい。わかりました」

朧の命を受けるとすぐさまとりかかかかり、外に降りる仕度はすぐ調った。さすが千鶴は手早い。

 

「ひゃーっ!何か…凄い厳重装備だね。」

澪菜は上から下まで髪も肌も見えないくらい、着せられていた。確かに、最初に千鶴にあった時に、この国では女性が顔を見せる物でないみたいな事は言われたけど。

 

「千鶴ちゃん?着せすぎじゃない?」

 

「いえ!上流貴族の姫君が下々の地を踏み締める事がありえません。ましてや外に降りたいなんて、着せたりないくらいです。」

 

「そうなんだ」

千鶴の迫力に納得するしかなかった。ちょっと歩きづらいけど慣れればオッケーと無理矢理気味な気もするが、プラス思考に!まぁ!!外に出れるだけでもありがたい。仕事なんだろうけど、私の為にしてくれたんだしと思うとめちゃくちゃ嬉しい。


そう思うと自然と感謝の気持ちが出て来た。

「千鶴ちゃん、ありがと!」 

嬉しそうに笑う澪菜を見て、千鶴は何か言いたげだった。

 

 

「千鶴ちゃん?どうかした?」

じっと見詰め、言葉を出しそうだったがフイッと目を反らしやめてしまった。

「………いえ。」

気になるが、千鶴が何も言わなかったからそれ以上澪菜には聞けなかった。

 

 

「さぁ、姫!足元に気をつけて。参ろうか」

市のすぐ傍に牛車をとめると、朧は右手を差し出し、ゆっくりと澪菜を牛車から降ろした。

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