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陽は昇るか  作者: 桜音


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第11話

「ところで、お聞きしたいと思っていたことがあるのですが。」

「はい、なんでしょう?」

「陛下が攻め入られたとき、王妃様はすでに使用人を逃していたとお聞きしましたが、なぜですか?」

「そう、ですね…。」そう呟きながら、無意識にその時のことを思い出していた。

「モンべリアは大きな国ではありませんでしたが、資源が豊富で豊かな国でした。そのためモンべリアを狙っている国は数多く、特に隣国は交戦的でいつも隙を伺っているようでした。なので国王が倒れさらに王子たちがいがみ合い混乱している状況は絶好のタイミングに思えました。だから使用人たちを逃したのです。」



ラシェルを見送ったイーニアスは、その足でツェザーリの執務室に向かう。

「失礼します。」

「ああ、終わったか。どうだった?」

「やはり王妃様は大変聡明なお方ですね。」

イーニアスは先ほどのことをツェザーリに報告した。

「そうか。モンべリアの状況を考えれば真っ当な判断だな。」

「そうですね。」




ともに食事をとることがすっかり習慣となりつつあった。

ただツェザーリは朝と昼はあまりゆっくり食事をすることが出来ないようで、その分夕食ではゆっくりと食事をしながらその日の出来事などを話すようになっていた。

「今日はイーニアスにヴェリニジ王国について学んだと聞いたが。」

「はい、とても分かりやすく教えていただきました。」

「それは良かった。」ツェザーリはそう言って笑った。しかし、それは少しの間の後に引っ込められ、ツェザーリの表情は徐に真剣味を増す。

「少し話しておきたいことがある。」

「はい。」そう言われ自分の肩にほんの少し力が入るのを感じた。

「聞いたと思うがヴェリニジには敵が多くてな、出来る限り戦を避けるために諜報に力を入れている。それでモンベリアの国王が倒れる一か月ほど前、モンベリアがヴェリニジを侵略しようとしているとの情報が入ってきた。」

「モンべリアが…?」

「ああ。」

にわかには信じられなかった。

「その後モンべリアの様子を見ていると侵略の準備が進められていることが確認できた。ただ、モンべリアは直前で王が倒れたことで混乱しているようだった。そこでモンべリアの混乱に乗じこちらが侵略しようということになった。ヴェリニジでは今は誰も好んで戦をしようとは思っていないが、国王は私から見ても冷徹な人でモンべリアが侵略を企てたことを許しはしなかった。」

ツェザーリが話を続けるかな、フリーズしていた思考がようやく動き出す。

モンベリアがヴェリニジに侵略?

そんなことを本当にしようとしたのだろうか?

ヴェリニジは大陸一の大国で、奇襲をかけたとしても勝ち目がないのは明らか。

あの父がそんなことをするだろうか?

「侵略に国王の意志はなかったと思う。公にはされていないが、モンベリアの国王は何年か前から病を患っており、晩年はすっかり衰弱していたと聞く。国王が倒れたということが広まったときには、いよいよ危篤という状態だったようだ。」

そうか、だから急に亡くなられたのね。

しかし、そこまでわかっていて…。

「冷徹だと思うか?」

「…はい。」

「そうだな。だが私は今回のヴェリニジ王の判断は間違っていなかったと思う。人の上に立つということは優しさだけで務まるものではない。冷徹さは時に必要な素養なのだ。でなければ何も守ることができない。」

「そう、ですね。でも私は侵略が間違っていなかったということについて同意はできません。たとえモンベリアがしようとしたことであっても。」

「ああ、それでいい。まあそれ以外にも理由があったのかもしれないがな。」

「え?」

「ヴェリニジでは王位は男しか継ぐことができないのだが、中でも王妃の子が優先されるため、私は第一王子であったが王位継承順位は第三位だった。私自身は王位に興味はなかったが、私を担ぎ上げようとする輩もいて、王は私を危険因子と見なしているようだった。王は私を出来るだけ王宮から遠ざけようとしていたし、私も厄介ごとに巻き込まれたくはなかったから、王の要請に素直に応じ、国境警備や内乱の仲裁、国内の視察などでほとんど王都にはいなかった。それに下手に他家とつながりを持たぬように女性との関わりも避けていた。ただ王にしてみれば国内にいる限りは結局警戒を怠れない存在でしかなかったのだろうな。だから今回、侵略を企てたモンべリアを利用し、私をそちらの王に据えヴェリニジから出すことで危険因子を排除したいという王の思惑もあったのではないかと思う。」

とっさに何も返事ができなかった。

「つまらない話をしてしまったか?だが知っておいてほしかった。」

「いえ、話してくださって嬉しく思います。」

「そうか。」

「さて、もう一つ話しておかなければならないことがある。」ツェザーリは空気をガラリと変えた。

「…なんでしょう。」

「そんな顔をするな。いい話かは分からないが、暗い話ではない。」

「…はい。」

「実は二週間後に夜会が開催されることになった。王妃のお披露目の場だ。」

「夜会、ですか。」

「ああ。急ですまないな。ところでダンスはできるか?」

「いえ…。」

「そうか。ならダンスのレッスンが必要だな。手配しておこう。時間があったら私も顔を出す。」




食事は一緒に取るようになったが、それ以外ではあまり一緒にいることもなく、寝室ももちろん別。

ツェザーリを人として好ましく思い、人肌のぬくもりを感じたいと思う一方で、それ以上に事が及ぶのには抵抗があった。

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