第1章:1.1 神落ちの日の赤裸な震撼
上空の気流は、まるでどこまでも広がる透明な薄布のようだった。
いかなる現代の工業都市にも属さない冷たさを帯び、極めて純粋に、鼻の奥から肺へと一気に流れ込んでくる。
そよ風が静かに吹き抜け、草の先についた水滴が風に揺れていた。
そこから漂う奇妙な甘い香り。
それは、生えたばかりの青草を刃物で切り揃えたときに滲み出る草汁のようで、どこか高山の冷泉特有の澄んだ甘やかさが混じり合っていた。
闕恆遠の長い睫毛が、激しく数回震えた。
脳の奥には、二日酔いのような重苦しさと鈍い痛みがまだ残っている。
遠くから近づいてくる耳鳴りの音。
まるで一万メートルの上空にある無重力の渦から、無理やり地面へと引き戻されたかのようだった。
割れるように痛むこめかみを揉もうと、闕恆遠は無意識に腕を上げようとした。
しかし、肘で体を支えた瞬間、手のひらに伝わってきた感触が、彼に残されていた現実への認識を木っ端微塵に打ち砕いた。
それは、台北の大学の寮にある、かすかに洗剤の香りが残るコットンシーツではない。
竹シーツの冷たい硬さでもなかった。
まるでベルベットのように柔らかく、それでいて肌を刺すような冷たい朝露を含んだ、瑞々しい短い草だった。
直後、これまでに経験したことのない虚無感が、吹きさらしの風に直接晒される冷たさとともに、千分の一秒の速さで全身の毛穴へと狂ったように広がっていった。
何の遮るものもない。
極限まで剥き出しになった、あまりにも異様な感覚。
闕恆遠は、カッと目を見開いた。
まず視界に飛び込んできたのは、胸がざわつくほどに深い青空だった。
その青は、混じりけが一切ないほどに澄み渡っている。
台北盆地の上空でよく見かける薄暗い靄もなければ、飛行機が残していく白い飛行機雲もない。
ただただ高遠で、見上げているだけで眩暈を覚えるほどの純粋さがあった。
「う……っ」
闕恆遠の喉の奥から、かすれた呻き声が漏れ出た。
強張った首の筋肉を硬く収縮させながら、青空からゆっくりと視線を下へと移す。
自分の胸元に視線が落ちた瞬間、闕恆遠は氷水の中に突き落とされたような感覚に襲われた。
頭を巨大なハンマーで力任せに殴打されたかのように、思考が轟音とともに真っ白に吹き飛ぶ。
今の自分は、一糸まとわぬ姿だった。
パジャマもない。
下着もない。
人類の文明に属するいかなる布切れも、身につけていない。
日頃からスポーツを好んで鍛え上げられた、引き締まった胸筋。
均整の取れた腹筋。
そして逞しく広い首から肩にかけてのライン。
それらが今、この世界の朝の光の下に、無防備な姿のまま晒されている。
それどころか、朝風が草葉を撫でる際に生じる気流が、普段は衣服に厳重に包まれているはずの最も秘められた部位を容赦なく撫で上げ、肌の上に細かく激しい鳥肌を立たせていた。
「これ……」
「一体、どうなってんだ……」
闕恆遠は息を呑み、肋骨の裏側で心臓が暴れ回るように激しく跳ね始めた。
しかし、己の全裸という極度の衝撃から思考を立て直す間もなく、生物としての本能的な危機感が、彼に周囲を見回させた。
そして目に入った光景に、闕恆遠の全身の血は一瞬にして完全に凍りつき、直後、怒涛の勢いで頭頂部へと逆流して視界が暗転しかけた。
彼のすぐ側、半メートルにも満たない青草の上に、同じように白く、眩しく、そして何一つ遮るもののない四つの嫋やかな肢体が折り重なるように横たわっていた。
「きゃああああっ―――!」
短く、鋭く、そして身を引き裂かれるような恐怖と羞恥に満ちた悲鳴が、前触れもなくこの荒原に長く続いていた静寂を引き裂いた。
最初に目を覚ましたのは、伊凝雪だった。
普段は生気と瑞々しい輝きに満ちているその大きな瞳が、開いた刹那、針の先のように小さく収縮した。
隣に横たわる同じく全裸の闕恆遠の姿、そして自分自身の一糸まとわぬ状態をはっきりと視界に捉えた瞬間、伊凝雪は高圧電流に打たれたかのように泣き叫び、極限まで怯えた小鹿のように猛然と身を丸めた。
彼女は白く長い両足を必死に折り畳み、胸元へとぎゅっと引き寄せる。
伊凝雪の細い腕は激しく震え、胸の前で必死に交差させながら、すでに豊満に実り、乱れた呼吸に合わせて激しく上下する丸みを帯びた膨らみを懸命に隠そうとしていた。
だが、どれほど必死に身を縮めても、極上の白玉のように滑らかな白い素肌は、澄み切った陽光を浴びて蠱惑的なまでの淡い桜色を透かしていた。
大地を埋め尽くす圧倒的な緑の中で、光を弾くようなその純白は、あまりにも眩しく、あまりにも無防備だった。
伊凝雪の悲鳴は重い槌となって、周囲の眠りを強引に打ち砕いた。
続いて、悦清禾、千慕羽、玥映嵐もその悲鳴によって跳ね起きるように目を覚ました。
空気が一瞬にして鉛のように重く固まる。
それは底知れぬ深淵よりも重苦しく、互いの胸が激しく波打つ音や、乱れた息を呑む音までもが生々しく響き渡るほどの死寂だった。
青春の真っ只中にある五人の若い男女が、こうして異世界の澄み渡った天光の下で、何一つ隠すことのない裸体を、完全に互いの視界の前に晒し出していた。
そよ風が吹き抜け、青草の甘い香りを運ぶと同時に、原始的で、禁忌に満ちた、極限まで濃密で曖昧な空気を静かに立ち上らせていた。
悦清禾の普段は冷静で知的な整った顔立ちが、現状を把握したわずか数秒のうちに、血が滲み出るのではないかというほど赤く染まる。
極めて細くしなやかな美しい両脚を隙間なくぴったりと閉じ合わせ、その足の指先は、過度の羞恥と緊張から冷たく湿った土の中へと深く食い込んでいた。
普段の講義では常に冷静さと理性を湛えている悦清禾の瞳が、今は屈辱と無力感に満ちた涙の膜で急速に覆われていく。
彼女は血の気を失った下唇を強く噛み締め、宙で闕恆遠と視線を交錯させた。
その瞳には、衝撃、戸惑い、そして少女としての最後の尊厳が完全に打ち砕かれた絶望が入り混じっていた。
自分自身の体を見下ろすことすらできず、ただ両手で自らの腕を強く掴み、張り詰めた琴の弦のように全身を強張らせている。
一方、千慕羽の反応は、完全に脳がフリーズしたかのようだった。
無意識にベッドの掛け布団を手繰り寄せようと手を伸ばすものの、掴めたのは冷たい青草と夜露だけ。
波打つような豊かなウェーブヘアが、今の彼女にとって唯一、辛うじて「遮るもの」と呼べる存在だった。
肩の上に乱れ散る金茶色の巻き髪が、朝風に吹かれて微かに揺れ、深く窪んだ華奢な鎖骨や、露わになりかけた誇らしげなプロポーションをあやふやに撫でていく。
千慕羽の腕は胸の前で硬直したまま、大粒の涙が瞬く間に瞳の縁で激しく溢れ返りそうになっていた。
可憐なほどに全身を震わせ、日頃の見上げるような長身と華やかさは、今や触れれば壊れてしまいそうなガラスのように脆く儚かった。
もう一方の側に立つ玥映嵐は、その場に完全に立ち尽くしていた。
五人の中で最も名門の令嬢としての矜持を骨の髄まで宿している彼女は、これほど壊滅的な視覚的衝撃を受けた瞬間ですら、石化したかのような端麗な姿勢を保っていた。
玥映嵐の視線は、避けようもなく闕恆遠の体の上に二秒ほど釘付けになった。
その刹那、闕恆遠の引き締まった大胸筋、彫刻のように刻まれた腹直筋、そして成熟した男性特有の力強さに満ちた無骨な肉体美が、死角なく彼女の瞳に焼き付けられた。
直後、玥映嵐の理性が轟音とともに引き戻される。
端正で気品ある卵形の顔立ちが一瞬にして朱に染まり、その赤みは華奢な鎖骨やほっそりとした白いうなじにまで一気に広がっていった。
「向こうを……向いて……」
玥映嵐の声は蚊の鳴くように細く、抑えきれない震えを帯びていた。
彼女は勢いよく背を向け、滑らかでしなやかな背中を全員へと向けた。
しかし、その身を翻したことで、流れる雲のように美しい背筋のラインが、背骨の窪みに沿ってすっと下へと伸び、引き締まった細い腰へと収束し、そこからふわりと広がる丸みを帯びた豊満なヒップラインが、かえって余すところなく闕恆遠の視界へと焼き付けられてしまった。




