第4話 二殺戦?なにそれ怖い
キラーガーデンに来てから、一週間が経った。毎日卵焼き生活を送ってるけど、ソリさんは何も言わない。でも、オールさんは少し不満そう。
今日のお昼ご飯も卵焼きの予定だ。ソリさんは甘めが好きなので、毎日甘めの卵焼きを作ってる。私が来るまで、本当に炭しか食べていなかった二人は、卵焼き生活でも文句を言わない。冷蔵庫を漁っていると、オールさんに声をかけられた。
「なあ、今日は鮭でも焼いてみようぜ」
スーパーで買い物をしてきたオールさんが鮭を取り出して、フライパンの上に乗せた。
「よし、お前の出番だ!」
「はい!任せてください!」
全力で頷いて、火を調整する。焼き方とかは知らない。油を引くとか、多分何かやらないといけなかったかも。
「なあ、何か焦げ臭くないか?」
「確かに……」
ひっくり返そうとした鮭は、フライパンにベッタリくっついている。中々取れなくて焦っていると、オールさんが油を持ってきた。
「油を入れてみるか……」
「なんで!?」
パチパチと凄い音が鳴って、油が飛び跳ねる。私は慌てて、火を止めた。
「鮭が!!」
「マジか。油で滑りが良くなって、ひっくり返せると思ったんだが……」
無惨な姿になった鮭。あっという間に炭の出来上がりである。オールさんは頭を掻きながら、深くため息をついた。
「今日の昼飯はまた炭か……」
「え〜、この炭は私も食べないといけないんですかぁ」
落ち込んでいると、ソファに座っていたソリさんが立ち上がった。こちらへ来ると、スマホの画面をオールさんに見せる。
「次の二殺戦の相手だ」
「ふーん。雑魚だな」
スマホの画面には黒髪黒目の屈強な男性が写っている。迷彩柄の服を着た男の人だ。
「二殺戦って何ですか?」
「キラーガーデンでは、毎月一度殺し合う相手が決まる。相手を殺せれば、階級が上がってより良い暮らしができる。それが二殺戦だ」
なにそれ怖い。平然と言っているけど、かなり物騒な世界じゃん。オールさんは自身のスマホを操作し始めた。
「俺の方も雑魚だな。まぁ、俺とソリに張り合えるやつなんて、そうそういねぇけどな」
「同意だな。雑魚ばかり相手をしてもつまらん」
ソリさんは退屈そうに、コートのポケットに手を入れた。
「それより、昼飯にしようぜ」
「俺はその炭を食うつもりはない」
ソリさんが不快感を露わにして、低い声で告げる。私は頷きながら、ジトっとした目でオールさんを見た。
「なんだよ、その目は」
「ぺろおじさんが、油を入れるから……」
オールさんは私の頬を鷲掴みにして、ニヤリと口元を歪める。
「ん〜?俺に不満があるのか?」
「大ありですよ!炭になっちゃったでしょ!」
オールさんは、ぐっと顔を近づけてくる。唇が触れそうな距離まで近づいてきて、ドキリと心臓が跳ねた。この人、本当に顔が良い。
「おいおい、この程度で真っ赤になるのか?このまま、キスしたらどうなるんだろうな」
私の顎を掴んでいた彼の指が唇に触れた。思わず目を閉じてしまう。視界が暗くなると、唇をなぞるように動く指の感触が、やけにはっきりと伝わってくる。
「あ……」
頭が真っ白になってくる。きゅっとキツく目を閉じていたら、ソリさんの不機嫌な声が聞こえてきた。
「いい加減にしろ。くだらない事に時間を使うな」
「ははっ、悪いな」
オールさんは、手を離して私から離れる。私はまだドキドキしてる胸元をぎゅっと掴んだ。
「おい、昼飯を作れ」
「あ、はい!」
ソリさんに言われて、私はまた卵焼きを作るのだった。ソリさん、卵焼きを作って欲しかったから、オールさんを止めたのかな。
「甘めにしろ」
この人、卵焼きが好きすぎるでしょ。




