表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/5

気づけば薄暗い空間に一人いた。

なにもない。

何の音も聞こえない。

誰もいない。

なにも起こらない。

その状態がしばらく続いたが、やがてなにか見えてきた。

遠くのほうに。

それが何であるかは薄暗さゆえに、そいつが近くに来るまで分からなかった。

しかしやがてわかった。

体は人間、そして頭は犬に似たもの。

全身黒い毛で覆われている。

そいつは俺の前に立った。

「入るぞ」

そいつはそう言うとさらに近づき、俺と重なろうとした。

そいつの身体は実体があるようでない、ないようであると言ったわけのわからないものだった。

そいつを手で押すと手がまるで空気を押しているかのようにそいつの身体をすり抜ける。

かと思うとものすごく柔らかくてぐちゃぐちゃした感触がありつつも、そいつの身体を押し返せたりもする。

そんなことを何度も繰り返していた。

そしてとにかくこいつは俺の中に入っていこうとしているのが、俺にはわかった。

「やめろ、俺の中に入ってくるな!」

何度叫んだことだろう。

すると不意に先輩の声が聞こえた。

「いいや、お前の中に入るぞ」

その時、表情が見えないはずの犬もどきの顔が、笑ったのが俺にはわかった。

そして低くはっきりと言った。

「そうか。許可をくれるのだな。ありがたい。入らせてもらうぞ」

と。


         終

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ