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君と会うまで、世界は無音だった  作者: わる
第2巻 - 居場所となった声
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第41話「学校の窓からは見えない世界」第一部

 外では蝉の鳴き声が絶え間なく響いていた。ジリジリジリ……


 夏休み前の最後の登校日が終わり、学校は今、深い静寂に包まれていた。急ぎ足の足音や楽しげな会話は、完全に静けさに飲み込まれていたのだ。


 残っているのは、部活やスポーツの練習に顔を出す少数の頑固な生徒たちの出す音だけ。遠くからグラウンドや体育館のくぐもった声が聞こえてくる。吹奏楽部が奏でるメロディが、典型的な夏の放課後のノスタルジックなエッセンスをもたらしていた。


 もちろん、その穏やかな雰囲気が、極度に焦った早歩きの足音に飲み込まれていなければの話だが。


 誰もいない廊下で、一つの人影がぐるぐると歩き回っていた。右手で口を覆い、必死に緊張を抑えようと爪を噛んでいる。


(あたし、どうしよう?どうしよう?どうしよう!?)


 緋色に近いほど深い茶色の髪を持つ少女、心の中で悶え苦しんでいた。


 放課後の記憶が脳裏に蘇る。


 生徒たちが夏休みを楽しもうと浮き足立って教室を出て行く中、あの無気力な少年は、まるで世界の重荷をすべて背負っているかのように席を立った。


 彼はリュックの肩紐を片方だけ肩にかけた。その目は遠く、疲れ切っているように見えた。だが、彼女の存在に気づいた途端、竜斗のいつもの無気力さは、かすかで穏やかな微笑みへと変わったのだ。


「今日はまだ練習の手伝いがあるから……」と、彼は少し歪んだ笑顔を浮かべて説明した。


 その記憶は唐突に途切れた。


 ガンッ!ガンッ!


 ロッカーが叩かれる金属音が廊下に何度も響き渡った。真琴自身が、純粋な苦悩のあまりロッカーに額を打ち付けていたのだ。


(結局、あたしが待ってるって言いそびれちゃったじゃない!!もう二時間近くも何を言おうか考えてるのに、全っ然思いつかない!!!ていうか、なんで今日の練習こんなに長いのよ!!??)


 ロッカーに打ち付けるリズミカルな音が止まった。


 真琴は突然立ち止まり、緑色の瞳を自分の靴のつま先に固定した。憂鬱さが彼女の眼差しを重いレンズのように覆う。


「なんであたし、こんな態度とってんだろ……」


 唇がわずかに震え、下唇を強く噛み締めた。


 新たな記憶が押し寄せる。誰もいない教室で、二人きり。彼が覆いかぶさり、その手が真琴の背中をしっかりと抱き寄せていた。竜斗の熱い吐息が顔をかすめる。


 彼女自身の胸元にある彼への手。危険なほど近づく彼の胸の圧迫感……


(待って!待って!ストーーーップ!!)


 彼女は両手で顔を覆い、何度も首を横に振って否定した。頬の赤みは、今や彼女の髪色よりもずっと強烈に目立っていた。


「あたしはただ、三浦くんを旅行に誘いたいだけなのに!!なんでこんなことばっかり考えちゃうのよ!?」


 自分自身の心に抗議し、深くため息をつく。


「彼氏のこと、こんな風に考えるのって普通なのかな……?」


 彼女はロッカーに寄りかかり、手を後ろに隠したまま床をじっと見つめていた。顔はまだ火照っている。


(待って……)


 その瞳が突然、混乱の色を帯びた。顔を上げ、顎に手を当てる。


「あたしたちって、付き合ってるの?」


 ドクンッ、ドクンッ。肋骨を叩くような心臓の音。呼吸が止まり、顔が熱くなり、耳まで真っ赤に燃え上がり、手には汗が滲み始めた。


(だって……三浦くんにキスされた……二回も!同じ日に!しかも五分も経たないうちに!!!!)


 再び、ぐるぐると歩き始めた。顎に手を当てたまま考え込み、複雑な殺人事件を推理する探偵のようなポーズをとる。


(でも、三浦くんから付き合ってなんて言われてない!あたしだって、付き合ってなんて言ってないし……)


 存在しない頭痛を抑えようと、両手を頭に当てた。これは死活問題だ。少なくとも彼女の視点では。


「もし付き合ってないんだとしたら……こんなことしてるあたしがおかしいの?一人で舞い上がってるだけ?」


 突然のひらめきに、短く驚きの息を漏らし呟いた。


(もし、三浦くんが……あたしと付き合いたくなかったら……?)


『結構です……』――脳内に浮かんだ彼が無表情でそう言い放つ姿。


「どうすればいいのよ!?」


 誰もいない廊下に向かって叫んだ。


 しかしその時、グラウンドの向こう側に突然動く影を捉えた。


「あれ?」


 水道場の近くに、短く黒い髪の少年を見つけた。その隣には、うなじが見えるほど短い明るい茶髪の少女がいる。


 その見知らぬ少女は彼にちょっかいを出し続け、少年は明らかに疲れ果てた様子で目を逸らしていた。


 やがて、彼女のからかいの中で、彼が折れた。


 そして、笑ったのだ。


(あ・い・つ!!!!)


◇ ◇ ◇


 ヒューゥ……


 鼓膜を打つ熱風の音に、練習後のストレッチをする部員たちの遠くの叫び声と、森に潜む蝉の絶え間ない鳴き声が混ざり合っていた。


 ふやけた指と湿った手で、無気力な少年はサッカー部室の横に張られた物干し竿に、また一枚、白いタオルを広げていた。銀色のナイロン紐は、ずっしりと水を含んだ分厚い布の重みでたわんでいる。


 午後の容赦ない日差しが照りつけていた。額を伝う汗が、体操着を竜斗の肌に張り付かせる。息苦しいほどの熱気が彼の体にまとわりつき、一向に引く気配がない。竜斗は湿った額を手の甲で拭い、物干し竿に並んだタオルを見つめた。


「はぁ……」


 疲労に満ちた短い溜息が、彼の胸から漏れた。


「ねえねえ、三浦くぅ〜ん」


 その女性の声はからかうように響いた。これから始まる鬱陶しい冗談特有の、底意地の悪い毒を含んでいる。


 その瞬間、彼の目は苦痛に細められた。肩がこわばり、首を緊張させながら声の主へと振り向く。


 うなじが見えるショートカットの明るい茶髪の少女は、袖を肩まで捲り上げた同じ体操着を着こなし、部室前のテントの影に守られながら壁に寄りかかっていた。


 二年生のマネージャーの笑顔は、明らかに悪ふざけへの招待状だった。竜斗はすでにその態度に慣れていたが、それでも自分が常にからかいの標的にされるのは大嫌いだった。


「何ですか、山田先輩」


 彼は、見かけ上の感情を一切削ぎ落とした声で答えた。


「どうにかした方がいいんじゃない、三浦くん……」


 彼女は口元を手で覆い、体を左右に揺らしながら答えた。それは、彼女が絶対に持ち合わせていないであろう羞恥心や内気さをわざとらしく演じているのだ。


「は?」竜斗は眉をひそめて呟いた。「僕が、何をどうにかするんですか?」


「あのね、三浦くん……」彼女の唇に子供っぽい尖りが浮かび、人差し指の先端をツンツンと合わせながら甘えるように言った。「あれ、誰?あたし、恥ずかしくなっちゃう……」


 少年は驚いて反応した。体を後ろに向け、学校の校舎を見つめる。そこ、木々の間に竜斗が焦点を合わせられたのは――太陽の下、緋色の髪を揺らし、鋭く純粋な殺意を放つ一対の緑色の瞳だけだった。


 空気の圧力はほとんど触れられそうなほどで、致命的な睨みが甲高い音のように響いていた。


 ギロリィィィィィィ……


「秋山――」彼は怯えて後ずさりした。


「彼女さん?やるぅ、色男!!」


 山田先輩は容赦なく彼の言葉を遮り、竜斗の肩に腕を回した。信じられないほどからかうような、得意げな笑顔が彼女の表情を支配していた。


「えっ!?いや……僕たちは……」


 彼は視線を地面に逸らしながら言葉を紡ごうとした。声はいつものように弱く無気力な雑音として出たが、同時に彼には極めて珍しい照れの感情を帯びていた。


「三浦くん、照れちゃってるぅ!」彼女は顔を彼の横にぴったりとくっつけ、半ば叫ぶように言った。


「ちょっと!」


 少年は身震いした。その瞬間、強烈な悪寒が背筋を駆け抜けた。木に突き立てられた真琴の手が、その握力で木の皮を砕きそうになっているのがはっきりと見えた。彼女の歯は食いしばられ、殺気のオーラはただただ増大していく。


「あら?」


 山田はついに、隠れている少女から放たれる圧倒的な圧力に気づいた。彼女は素早く竜斗から離れ、少年の背中を元気よくバンッと叩いた。竜斗がとてつもない不快感で彼女を睨むと、マネージャーはサムズアップと共犯者のようなウインクで答えた。


「いいよ、色男。練習はもう終わったし、残りはあたしがやっとくから。彼女さんのとこ、行ってきな」


 竜斗の顔に浮かぶ苦悩の表情はさらに悪化した。山田が目の前で自分の肩を抱きしめ、メロメロで情熱的なイチャイチャを大げさな身振りで演じ始めると、パニックは著しく増大した。それが、木立から放たれる静かな怒りをさらに煽っている。


(帰りたい……)







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おはようございます、こんにちは、こんばんは、わるです!


最後までお読みいただき、ありがとうございます。


もし物語を楽しんでいただけましたら、ブックマークや評価をいただけますと幸いです。皆様の応援が執筆の大きな励みになります。


またねー!! ヾ( ̄▽ ̄) Bye~Bye~

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