第38話「君と再会するまで、現実は色彩に溶けていた」第二部
今回、その異変は音の前で沈黙していた。
真の現象は網膜に現れ、かつては怒りに満ちていた彼の瞳が捉える景色を劇的に変貌させていた。
磨き上げられた学校の廊下の床が、彼の足元でチカチカと揺らめいている。説明のつかない色彩の螺旋が視界の縁を支配し、周囲の現実を完全に歪める狂乱のダンスの中で振動し、うねっていた。
慌ただしく廊下を通り過ぎる生徒たちの顔は、圧倒的な光に飲み込まれ、認識不能なぼやけた塊となっていた。窓の外で輝く太陽の光は、触れるものすべてを燃やし尽くすかのようだった。分厚い大気そのものが映像を屈折させ、彼の世界に対する認識を暴力的に改ざんしていく。
(そうだ……俺は思い出した……)
入学式の日の光景が、彼の脳裏に蘇る。開会式が終わった後、すべてが混乱した振動に包まれ、生徒の群れが教室に向かって廊下を流れていった。
「きゃっ!」
ドサッ!――突如として、彼の後ろで悲鳴が響いた。
少年が振り返ると、そこには床に倒れ込んでいる少女がいた。健太はためらうことなく、彼女を助けるために手を差し出した。
「ごめんなさい……」
「ごめん、あたし、ぶつかっちゃって!」
彼女はそう答えた。その声は信じられないほど優しく、伝染するような甘さと喜びに満ちていた。彼女の体は、世界を盲目にしているのと同じ眩い光の下で振動しているように見えた。彼女の小さく柔らかい指が、彼の手を包み込むその瞬間までは。
そのわずかな触れ合いで、少年の瞳は生命を取り戻した。少女の顔は完全に鮮明なままで、視覚の歪みは一切なかった。真紅の髪と、人懐っこい笑顔が完全に焦点を結んでいた。
「ありがとう!」
彼女は感謝を口にし、軽やかな足取りで彼を通り過ぎていった。
彼は廊下で立ち尽くし、遠ざかる彼女のシルエットを見開かれた目で追っていた。
(ああ。俺ははっきりと覚えている。)
ドアの近く、右端の席に座りながら、彼は頬杖をついていた。こっそりと、横目で彼女を観察する。真紅の髪の少女は、友達と楽しそうに話していた。
教室全体が混沌としたぼやけの中で脈打っていた。他のクラスメイトの顔は依然として霞んでおり、現実を断片化し、全員の顔立ちを隠す解読不能な色の塊に飲み込まれていた。
絶対的な例外は、彼女だけだった。
ミーン、ミーン……蝉の鳴き声が彼の脳内に響き渡る。
「なんだよ、竜斗、一度くらいやってみろよ!」同級生の武の声が励ますように響いた。
「できれば……僕は、遠慮しておくよ、三浦くん……」もう一つの声が答える。その音色は単調で、疲労感に満ちていた。
(なぜ?)
記憶は体育の自由時間の授業へと飛んだ。男子たちはどのスポーツをするか楽しそうに話し合っていた。周囲の顔はすべて歪み、強烈な光に隠されていた。ただ一人、あの無気力な声の持ち主である特定の少年を除いては。
彼の顔立ちは、完全に視認できた。
健太は、その無気力な少年の顔の細部まではっきりと認識できた。赤毛の真琴が美しく鮮やかな色彩に溢れていたのに対し、その少年は対極に存在していた。彼は完全に色が欠落した存在だった。
「行こうぜ、竜斗!」武はしつこく誘う。
しかし、灰色の少年は曖昧な言い訳を呟くにとどまった。彼は体の前に両手を上げ、自分のスペースを守るための見えない障壁を必死に作ろうとしていた。
(そうだ……)
彼はその感覚が痛いほどよくわかった。
(俺には、あの瞳の中にある、空っぽの広がりが見える……)
記憶が重なり合う。盗み見るような視線、ささいなやり取りの数々。色のない少年が視界に入るたび、静かな力が働いているようだった。
彼は周囲の光を吸収していた。
空間の活気を吸い取り、すべてを憂鬱な灰へと還元してしまう。その圧倒的なオーラは、真琴の放つ眩しく温かい光――健太が心の底では決して憎むことのできなかったあの美しい輝き――すらも食い尽くしていく。
二人が話している光景が彼の脳裏に焼き付いた。灰色の少年が、彼女の鮮やかな色彩を吸い取るのを、健太はただ無力に見つめていた。
その光景に呼応するように、ほんの少しだけ麻痺から覚めかけていた彼自身の目も、再び輝きを失い始めた。必然的に、虚無の深淵へと戻っていく。
「やめろ!」健太の叫び声が記憶を打ち破る。
校舎の裏で、一人の生徒が激しく突き飛ばされ、土の地面に倒れ込んでいた。涙に濡れた顔は、健太の視界で歪んだ光に隠されたままだったが、灰色のフィルターが世界を飲み込もうとしていた。二人の不良が彼を追い詰めている。一人は明らかに背が高く、もう一人は背が低かった。
「なんだよ?俺たちはおしゃべりしたいだけだぜ……」背の高い方が悪意を持って挑発する。
被害者が立ち上がろうとすると、すかさず背の低い方が容赦ない蹴りを見舞った。
ドゴッ!
「どこ行くつもりだよ?」
「いい加減にしろ!」健太の声が空気を切り裂いた。その声は氷のように冷たく、抑えきれない凶暴さを帯びていた。
「あぁ!?」不良たちが一斉に振り返る。
強烈な幽霊のような光が彼らの顔の前に障壁を作り、その表情を完全に覆い隠していた。
「喧嘩売ってんのか、クソ野郎が!?」小柄な少年が激怒して怒鳴る。
二人は同時に彼に向かって突進し、攻撃のために拳を振り上げた。
(そうだ……すべては、まさにこうやって起こったんだ……)
「え?」純粋な混乱に支配され、彼は言葉を漏らした。
記憶の風景が進み、路上で振り返り、さっきと同じ二人の不良と向き合う健太の姿が現れた。今や、彼らの顔は白い包帯と無数の絆創膏で覆われている。
「俺たち、謝りたくて……」背の高い少年が、明らかに恥ずかしそうに呟いた。
「それに、もしかしたら……友達になれるんじゃないかって……」背の低い方が付け加える。
「どうして俺が不良なんかと友達にならないといけないんだ?」健太は素っ気なく尋ねた。
「だって、お前めちゃくちゃ強いから!」
「俺たちをボコボコにしてる間、汗一つかいてなかったし!」
「マジで!お前、すげえタフだ!!」
「なんか格闘技やってんの!?武術のトレーニングとか!?」
「まあ……俺は……」
少年は顔が熱くなるのを感じた。人差し指で顎を掻き、予期せぬ崇拝に完全に戸惑いながら視線を逸らした。世界を歪める極端な光の中で、二人の目は徐々に鮮明さを増し、彼の視界に現れ始めていた。
「俺は卒業したらすぐに海上保安庁に入るのが目標なんだ。だから、毎日トレーニングのルーティンをこなしてる」
かつての加害者たちは、唖然として彼を見つめた。沈黙は長くは続かず、すぐに活気のある興奮に取って代わられた。
「すげえ、それめっちゃかっこいいじゃん!」
健太はまだその急激な変化を処理しながらも、控えめな笑顔を見せた。
「かっこいいだろ?」
しかし、彼の周囲の世界は依然として灰色の色調に沈んだままだった。非現実的な明るさがまだ彼を眩ませ、絶え間なく揺らめき、断片化された現実の認識を形作っていた。
現在に戻り、健太はあの輝く少女――鮮やかな光と色を放つ唯一の存在だった真琴――が、色あせた竜斗と親密に話しているのを思い出した。彼自身が怒りに身を任せて行動した後でさえ。灰色の少年が彼女の輝くパレットを吸い取るのを防ごうと介入を試みた後でさえ。
健太の努力はすべて無駄に終わった。
最終的に、ぼやけた視界の中で、彼女の瞳の光も消え去ってしまった。
一方、灰色の竜斗は、その色のなさを不変のまま保っていた。あの深い瞳には、死んだような広がりが残っていた。それはまさに、健太が鏡を覗き込んだときに見るものと同じだった。
健太はあらゆる機会に遠くから彼を観察するようになった。教室の後ろで。サッカー場の練習中に。かつて彼の認識の中で強烈に輝いていた少女の隣で常に。
(俺には……あいつがわかる……)
(あいつの目は……俺と同じだった……)
(だから、俺にはまだあいつが見えるんだ……)
(いや……)
(俺は今でも……あいつと同じなんだ……)
磨き上げられた廊下の表面は、震える光に浴しながら彼の足元で揺らいでいた。
物理法則を無視したその不可能な床の真ん中で、一足の繊細な靴が彼の視界に入ってきた。
コツッ。
少年の疲れた目は驚きに見開かれた。ゆっくりと頭を上げる。一人の女性の姿が、目の前に立っていた。
非の打ち所のない暗い色のスカート、真っ白な制服のシャツ、肩に真っ直ぐ落ちる黒髪。白いカチューシャが彼女の前髪を完璧に揃えていた。
一見すると、彼女もまた色の欠如に支配されているように見えた。だが、その最初の思考はすぐに消え去り、事実という現実が取って代わった。その少女は常に独特の色合いを持っていた。彼の目のためだけに存在する鮮やかな色彩。
彼女の胸の中央、制服の明るい生地に結ばれた深い赤色のリボンが、特異な強さで輝いていた。
「健ちゃん……」南千尋は呟いた。その柔らかい声は、廊下に低く響いた。
「千ちゃん……」佐藤健太は答えた。感情を完全に無関心な声色の下に鎧い隠しながら。
おはようございます、こんにちは、こんばんは、わるです!
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
もし物語を楽しんでいただけましたら、ブックマークや評価をいただけますと幸いです。皆様の応援が執筆の大きな励みになります。
またねー!! ヾ( ̄▽ ̄) Bye~Bye~




