表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

50/123

50話 転移ゲートを生成したあとで、鉱山に向かいました

「えーっと、ゲートのイメージかぁ…。

あ、そういえば絵に描いても生成できるって言ってたよな?

じゃあ、まずは紙とペンを生成しようっと。・・・・クレオ!」


ポンッ―


「出来た出来た。じゃあ、ゲートはアーチ状で…素材はそうだな、大理石みたいな感じかな。

ゲートの中央は、なんかこう、透明な青い水みたいな壁があって…

濡れないけどヒンヤリする感じ。あれ、絶対に綺麗だろうなぁ。

あ、これは俺と繋がってる人しか通れないようにしないとな。この設定は絶対。

で、そこを通ればギルドに到着できるイメージだな。」



とある日のお昼前。

俺は転移ゲートを作るべく奮闘していた。だけど、イメージがなかなか固まらず。

紙とペンを生成して、そこに自分の思い描くゲートの姿を描き込んでいった。

「紙に書いても有効だったはず」という曖昧な記憶を頼りに、考えながら描くこと約30分。

ようやく形が見えてきて、納得のいくゲートになった。


「よしきた!これで多分いけそうな気がする。

それでは参ります・・・・・・クレオ!」


絵以外にも、言葉で書いても通じるのかな?なんて思いながら、

このゲートをどこに建てようか考えた末に、ユアさんの碑石の隣がいいかなと思った。

そこで意識を集中させて「クレオ」と唱えると、

前回の結界生成の時と同様に、体の中からごっそりと魔力を持っていかれる感覚があった。

魔力無限の俺にとっては特に問題はないけど、魔力を抜き取られる感覚はやっぱり気持ち悪いなって思う。

そんな感じで魔力を一気に使い、少しずつ石碑の隣に俺のイメージ通りのゲートが生成されていった。

白く大理石のような素材、アーチ状のゲートが出来上がり、

その中央に、青く透明な水の壁がゆっくりと現れ、神秘的で綺麗な揺らめきを見せていた。

本当にここを通ればギルドに行けるのかは不安だけど、ひとまず1つ目のゲートは完成した。


「うまいこと生成できたんじゃないか?」


「だよな?俺もそう思う!あとはこれをもう一つギルドで生成すればいいんだよな?」


「ああ。先にそのゲートにギルドの記憶を練り込んでおけ。」


「あ、ホントだ。やってみるわ。」


ゲートが完成したところで、側にいたロウキに出来栄えを聞いてみると、

「うまいことできたんじゃないか」と、珍しく褒められた。

そして「ギルドの記憶を練っておけ」と言われ、

よく分からないなりに意識を集中させて、王都のギルドを思い浮かべた。


【転移場所の登録が完了しました。】


「お、出来たみたい!ありがと、エマ。」


手をゲートの水の壁にかざしてしばらく待ってみると、水面が波紋を描き始めた。

更に待っていると、エマが登録完了を知らせてくれた。

これで1つ目のゲートが完成だなと喜んでいた時、ふと思いついてロウキに質問した。


「なぁロウキー。これ一回作ったら、複製できる人いないの?

解析して複製とか生成とか、よくあるじゃん?出来る魔物とかいない?」


「…そうだな。知識系魔物とかならいるんじゃないか?」


「知識系魔物?え、なにそれ!」


「体に取り込んだものを解析して、同じものを生成したりできる魔物だ。

まあ、珍しすぎてこの辺にいるかは分からんがな。」


「え、絶対従魔にしたいんだけど!」


ずっと思っていたことがある。

一度生成したものを複製したり、既製品を解析して再現したり、

そんなことができる存在がいたら、仲間にしたいなって。

俺にはそういう能力は備わっていないらしく、

もしこの世にそういうことが可能な生き物がいるなら、絶対に仲間にしたい。

そんな野望のもと、ロウキに質問してみると、知識系魔物の存在を教えてくれた。

思わず「絶対に従魔にしたい!」と言うと、ロウキはギュッと目を細めて、ため息を吐いた。


「己の欲望のために魔物を使役するな。人間を探せばよかろうが。」


「確かに…それは良くないんだけど…

人間って、面倒なんだよね。人間関係とかさ。」


「はぁ?お前はそれでも人間か?群れで暮らす生き物だろうが、人間は。」


「人それぞれ違うんですよ、ロウキさんや。

コミュニケーション…えっと、交流が苦手な人もいるのよ。

なるべく俺は平穏に暮らしたいから、信頼できる人が見つかるまでは下手に交流持ちたくないのよ。」


「自分の欲望のために魔物を使役するな」と一喝された俺は、確かになとも思った。

良くないことだとは思いつつも、ロウキが提案してきた“解析・複製ができる人間を探せ”という案は即座に却下した。

人間が誰しもコミュ力高いわけじゃないし、得意不得意もある。

そう言うと、ロウキは視線を逸らし、もう一度大きなため息を吐いた。


「わがままな奴だな…。

…それではセドラのじいさんに訊いてみたらどうだ?あやつは物知りそうだったじゃないか。」


「あ、確かに!え、じゃあ今から行く?」


「はぁ…お前は本当に思いついたら即行動だな。

ユキたちを呼んでくるから、お前は出かける支度をしておけ。」


「やった!じゃあ俺は準備してくる!」


ロウキは「わがままな奴だな」と呆れながらも、

鉱山にいるセドラなら何か知っているかもしれないと、代替案を出してくれた。

こういうところ、優しいよな…。なんて思いながら、

俺は家の中に戻り、調理済みの食事をアイテムボックスに詰め込んで外に出た。


「あるじさま、準備できました!」


「主、行くぞー!」


「かばん、もとうか?だいじょうぶ?」


「ありがとうミル!俺は大丈夫だからな。」


「・・・さっさと行くぞ。」


「オッケー!それじゃあ鉱山に向けて出発ー!」


準備を終えて外に出ると、すでに皆が集合していて、

面倒くさそうにしているロウキを先頭に、家を出発した。


だけどよく考えたら、セドラに心で問いかければ反応があるんじゃ?

なんて思っていたけど、皆で出かけることが楽しいようだし、

ここは黙って出かけた方がいいな。

そう思いながら、俺たちは鉱山へと向かった―…。







「じゃーん!今日のお昼ご飯は焼き鳥でーす!」


「はじめて、たべる!」


「前に食べた肉と野菜の串焼きと、何が違うんだ?」


「あれはオークのお肉だったでしょう?

今回は、王都で購入した“スモールバード”って魔物のお肉らしいんだけど、

俺の世界の鶏肉に似てたから、生成スキルで塩ダレ味と甘辛タレを作ってみました!

これ、今からじっくり焼いて食べます!野菜スープもあるからねー。」


「おれ、やく。」


「ありがとうミル!じゃあ俺はこっちでスープ温めるからなぁ。」


鉱山に向かって歩くこと約2時間。

昼食をまだ食べていなかったことを思い出し、早速ランチタイムにすることにした。

アイテムボックスからテーブルなどを取り出し、調理開始。

ミルはいつも俺と一緒に料理を担当してくれているから、今日も率先して手伝ってくれた。

気分は焼鳥屋の大将だな。なんて思いながら、俺はスープを温めていた。

焼けた焼き鳥を串から外してみんなに配っていくと、待ったなしで食事が始まった。


「うむ!この調味料とやらも絶品だな!

スモールバードはあまり美味とは思わなかったが、

焼き鳥にするとまるで味が変わるのだな!」


「あるじさま、このお肉美味しいです!」


「うんまいなぁ!スモールバードって火で焼いて食べてたけど、

前の主は一気に焼いてたからかなぁ?硬かった!

でもこれは外側がカリッとしてて中が柔らかいの、美味すぎー!」


「焼き鳥はいいねぇ。昔から俺、好きだったんだよねぇ。

おにぎり食べたいなぁ…。米ってどうやって作るのか、研究しなくちゃだなぁ。」


焼き鳥を食べていると、無性におにぎりが食べたくなってくる。

前々から白米が食べたいとは思っていたけど、研究はしていなかった。

王都には似たようなものがあるのかな?

今回、時間が取れたら王都に寄って食品のお店を回ってみようかな。

それに、ゲートも設置できるならしておきたいし。


そんなことを一人で考えながら昼食を取り、

食後の休憩をはさんで、再び鉱山へと向かって歩き出した―…。







あれからのんびり歩き続けて野営をし、翌日の夕方前には鉱山に到着した。

ここに着くまでに今回は低級魔物に遭遇したけど、皆に討伐してもらおうと思っていたのに、

ロウキに「魔法を使え」と言われ、何とか頑張って自分で討伐した。

これからもずっと、こんな感じで強制的に鍛えられるんだろうなぁ…。

なんて、一人で嘆いていた。


「あれ?今日は休日なのかな?人がいない。まあ、その方が俺はいいんだけどさ。」


この世界の曜日の感覚がないから分からないけど、今日はどうやら休日らしい。

ガランとした鉱山の入り口には、担当の警備兵が2人立っているだけだった。


「こんにちはー。ちょっとお邪魔しますね。」


「はっ!ヨシヒロさま!どうぞお通りください!」


「はは、すみません…お邪魔しますねぇ。」


警備兵に声をかけると、俺の情報が行き渡っているのか、あっさりと通してくれた。

こういう扱い、なんだかむずがゆいなって思う。

ひとまずペコリと頭を下げて中に入ると、前に来た時よりも空気が澄んでいるように感じた。

セドラが正気に戻って、きちんと守護してくれているからなのかな?

なんて思いながら、セドラがいる地下2階へと向かった。



「じいちゃん元気かなぁ?」


「僕、進化してから初めて会うので、ちょっと緊張してます。」


「絶対“カッコよくなった”って言ってくれるって。」


「そうだと嬉しいです!」


地下へ降りていく途中、クロとユキはそんな会話をしていて、なんだか微笑ましかった。

クロは蘇ってから初めてできた友達…弟?だし、ユキも父親以外で初めて遊んだ相手だろうし。

この二匹を見ていると、心がポカポカして、なんかこう…満たされるんだよなぁ。



「あー!いた!じいちゃん!遊びに来た!」


「おお、お前さんたち来たのか。おや?ユキ、お前さん進化したのか?

随分と男前になったのう。」


「はい!僕、母上のおかげで進化できたみたいです!

母が契約していたルビーの精霊さんが、今僕と契約してくれていて、

その影響で進化したみたいです。」


「そうかそうか。角が生えたフェンリルは珍しいからな。

きっとユキの母の愛情が、そうさせたのかもしれんな。」


「僕もそう思います!父上と母上の愛情のおかげで、こうなりました!」


「・・・」


地下2階に降りてセドラの住処に向かうと、のんびりしているセドラの姿が見えた。

クロとユキは走ってセドラのもとへ向かい、セドラは優しく迎えてくれた。

ユキの進化に気づいたセドラは目を細め、

ユキが進化した経緯を説明すると、「そうかそうか」と嬉しそうに笑っていた。


これはあれだ。本当に“孫とじいちゃん”の構図だ。

いいな、こういうの。

そう思いながら、しばらくそのやり取りを見つめていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ