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49話 この結界で皆を少しでも護れたらと思い張ってみました

ロウキの背中に乗って走ること数分。王都方面に向かう領地の境界線らしき場所に到着した。

これなら、歩いても20分もかからない気がするな。

とはいえ、前も後ろも結局は森だから、正直よく分からないんだけど。

ひとまずこの場所に、立ち入り禁止のテープでも張り巡らせておこうか。

そう思いながら、地図を広げて確認していた。



「そういえばさ、前に教えてくれただろ?この世界について。

その時ロウキは、このソウリアス王国は“割と大きめの王国”だって言ってたよね?」


「ああ。割と大きめだろう?」


「えっと…ロウキにとって、この大陸は“割と”なの?

だって見てみろよこれー。総面積3.2万平方キロメートルって書いてあるけど?!」


「だから、割と大きめの王国だろうが?」



前にロウキが「割と大きな国」と言っていたソウリアス王国。

だけど、実際に地図をもらって見てみると、“割と”どころじゃなくて、

とんでもなく広大な大陸に思えてきた。

ロウキに言うと、「割と大きめだろうが」と呆れたように返された。



「どこがだよ?!だってこれ…って、どのくらい大きいのか分かんないな。

日本だとどういう感じだろう?エマさんや…どうか教えてくれないかね?」


【ソウリアス王国の総面積を日本で例えると、中国地方五県をすべて合わせたほどの広さになります。

つまり、大国と呼ぶに相応しい領地を持った国というわけです。】


「ほら、デカいじゃん!」


「我は日本を知らん!これくらいの大陸は外にも普通にあるわ!

このソウリアス王国の大陸を囲むようにして、四つの国が存在しておる。

それぞれの国は、ここと大して変わらん面積だぞ。」


【この世界では、一つの大陸の広さの平均はこのくらいになります。】


「へぇ…」



どう見ても割とというレベルじゃないと思っていたから、

日本に例えるとどのくらいなのか、ダメ元でエマに問いかけてみた。

すると、「中国地方五県を合わせたくらいの広さ」と教えてくれて、ようやくイメージができた。

やっぱりどう考えても割とじゃなくて、かなり大きな国じゃん。


そう思っていると、ロウキは「このくらいの国は他にもある」と言い、

ソウリアス王国は他の四つの国に囲まれるように位置していると教えてくれた。


このレベルの国が四つもあるの?!と驚いたとき、ふと違和感を覚えた。

それが何なのか考えていたら、その答えが分かりハッとして声をあげた。



「…エマさんや、受け答えしてない?!」


【していません。】


「してるじゃん!?どういうこと?!一方通行じゃなかったの?!」


【一方通行です。】


「このAI、普通に嘘つくようになった!ロウキ!エマが嘘ついてる!」


「遊ばれておるなお前……。前に言っただろう。

名をつけることで、稀に意思を持つ場合があると。それだろう?」


「そうなの?エマ、言ってよー。」


【気のせいです。では、また。】


「えー!エマちゃん冷たい!でもまあ、会話が成立するようになった!」



突然会話が成立したことに驚いて、エマを問い詰めると、

「気のせいです」「一方通行です」と言い始めて、なんだか煙に巻かれた。

ロウキに助けを求めると、「意思が宿っただけだろう?」と、あっけらかんとしていた。

俺はエマとはずっと一方通行だと思っていたのに、まさか会話が成立するなんて!

感動するやつじゃないの?と思ったけど、エマは淡々と会話を打ち切った。

エマもロウキも、ほんとクールだわね…。

そう思いながら、小さなため息を吐いた時だった。




「・・・あ。」


「チッ…何しに来たのだ、あやつら。」


「ヨシヒロさん!それにロウキさんも!」


「えーっと…ルークさん…と?」


「申し遅れました。私はソウリアス王国の王弟、ルセウス・ソウリアスと申します。

現在、この国の騎士団長を務めております。」


「あ…アーロンさんの弟さんでしたか。よろしくお願いします。

今日はどうされたんですか?」



気配感知が反応して振り返ると、そこには前に城で会ったアーロンさんの息子さんと、

やたら男前で渋い佇まいの男性、そしてその部下らしき人たちがこちらに気づいて近づいてきた。

軽く挨拶をすると、息子さんの隣にいた“イケオジ”がアーロンさんの弟、ルセウスさんだと判明して驚いた。

しかも国の騎士団長って…相当腕の立つ人ってことだよな。

そんな人が何故ここに?魔物討伐か?

そう思って訊いてみると、意外な答えが返ってきた。



「兄上…国王に言われて、ヨシヒロさんの領地に警備兵を配置するために下見に来たのです。」


「そうでしたか。なんだかお手間を取らせてしまってすみません。ありがとうございます。」


「いえ。あなた方はこの国にとって、とても大切な方々ですから。

我々も微力ながら、お力になれればと思っております。

何かありましたら、遠慮なくお申し付けください。」


「ありがとうございます…。

えーと、俺たちはちょっとこれから、もう少し向こうに行ってみようと思いますので、この辺で…」


「失礼しました!お時間を取らせてしまい申し訳ありません。

今度ぜひ、ゆっくりお話を聞かせてください。」


「はは…はい。では、失礼します。」



ルセウスさんたちは、どうやら俺たちのためにこの地を下見に来てくれていたようで。

何だか申し訳ないなぁと思いながらも、長居すると色々と面倒なことになりそうだったので、早々にその場を離れた。

ロウキの機嫌が悪くなるのも嫌だし、これから結界を張るところを見られるのも面倒だしな。

そう思いながらルセウスさんたちが見えなくなる場所まで移動した。

そして、この領地に結界を張りたいという相談をロウキに持ちかけた。



「よし。ここならもう見えないな。

俺の領地に結界を張ろうと思うんだけど、どう思う?

変な人たちを入れたくないからさ。」


「結界か。魔力無限のお前なら可能だろう。

ちょうどセドラのじいさんの能力を受け継いで、結界が張れるようになったろう?

それに、我々のようなタイプを従魔にすると、それだけで加護を受けられる。

つまり、お前は今、フェンリルの加護とセルリアドラゴンの加護持ちというわけだ。贅沢な奴よ。」


「え?え?そうなの?!俺、加護増えてたんだ?

ステータス見てないから全然分かんなかったわ。

でも、できるかな?やったことないけど…こういうのはイメージが大事なんだよね?

俺の領地全体を、ドーム状の光で包むイメージか?

できれば、俺の知ってる人以外は通れないようにしたいなぁ。」


「それなら、結界にお前の記憶を練り込んでおけばいい。

そうすることで、お前の記憶にない人物は結界を通れぬ。魔物も同じだ。」



結界を張りたいとロウキに言うと、セドラから結界の能力を受け継いでいるから可能だと教えてくれた。

さらに、高貴な魔獣を従魔にすると、その加護が受けられるという話に驚いた。

そんなこと、今まで一度も教えてくれなかったじゃないか。

まあ、二人の加護はきっと戦闘向きだろうし、俺には必要ないかもしれないけど。

そんなことを考えながら、「知らない人を領地に入れたくない」とぼやくと、

ロウキは「記憶を結界に練り込めばいい」とアドバイスをくれた。

さすが、知識豊富な狼様は違うなぁ。



「なるほどね。どうやるのかよく分かんないけど…

ゲートを作る時も同じことするんだもんな?

これで成功すれば、ゲート生成に一歩近づくし、頑張りますか!

……あ、エマちゃんや?詠唱とかあるのかね?」


【青き障壁よ 我が記憶に刻まれし者のみを受け入れ、それ以外を拒め。

セルリアドラゴンの加護のもと、この地を守護せよ。

セルリアン・バリア!でしょうか。】


「ブッ!」


「ほえー。長いのね。って、なんでロウキ笑ってんだよ?

まあいいや。じゃあ、やるね。

えーっと…?

青き障壁よ 我が記憶に刻まれし者のみを受け入れ、それ以外を拒め。

セルリアドラゴンの加護のもと、この地を守護せよ。

セルリアン・バリア!」



ヴオンッ―



「わっ!なんか出た!!」


「それが、あのじいさんの加護で生まれた結界だ。消えるまで目を離すなよ。」


「分かった!綺麗な色だなぁ。青って、心が洗われる感じ。」



結界生成の要領は何となく分かった俺は、頭の中で結界のイメージをもう一度浮かべ、

エマに詠唱の言葉を教えてもらった。

その瞬間、なぜかロウキが「ブッ」と吹き出したけど、理由は分からず、

教えられたとおりに詠唱してみた。


すると、両手から青い光がじんわり、ふんわりと広がり、

次の瞬間、一気に領地全体へと光が駆け巡った。

そして、それと同時に体中の魔力がごっそり抜けていく感覚があり、ちょっと気持ちが悪い。

だけど、結界が広がっていくその光景は美しく、

何だか心が洗われるような気がして、気持ち悪さはどこかへ吹き飛んだ。


俺はロウキに言われたとおり、その光が消えるまでの数分間、じっと意識を集中させた。

そして数分後、スウッと静かに青い光は消えていき、ようやく結界を張れてホッとした俺は、

その場に座り込んで、大きく息を吐いた。



「はぁ…!終わったよね?これ。」


「ああ。これで、お前の知らぬ者はこの領地には入れん。

…それにしてもお前、よくもまあエマが言ったことをそのまま言ったな?」


「え?」


「あれは別に、お前の能力なら詠唱なんかいらんぞ。

普通に“セルリアン・バリア”と言えば済んだ話だ。遊ばれたな。」


「ええ?!そうなの?!エマ?!」


【詠唱をしたいのかと思い、即興で考えました。結構良い詠唱だと思います。】


「あ…そ、そうなの?それはまあ、ありがとう…

でも、これからは詠唱なしでいいなら、名前だけ教えてくれると嬉しいなぁ。」


【承知しました。詠唱が不要なものは、その都度お知らせします。】



無事に作業を終えられてホッとしていた俺に、ロウキは「詠唱は不要だった」と鼻で笑った。

慌ててエマに訊くと、「詠唱したがっていたのかと思って即興で考えた」と言われて。

それが妙に自信満々な口調だったから、怒るに怒れなかった。


でもまあ、とりあえず無事に結界を張れたから良しとするかな。

これで少しは、俺とみんなの身の安全が確保できたはず。

あとは、催促される前にどうにか転移ゲートを生成しなくちゃだな。

そんなことを考えながら、ロウキと共に家へと戻った―…。


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