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第31話 値切りがひどい

 前回の話。

 料理部事件が収束し、二日目のオンラインゲームにログインする。

 その前に公式サイトを確認し、掲示板を見て勉強する。

 知った情報を基に、ニルトはどのように冒険するのでしょうか?

 書見のほどよろしくお願いします。

「ここは……」


 ベッドの上だね。

 古木の壁が見える。魔動灯の光が室内を照らしている。

 BGMが聞こえるね。

 ログインしたとするメッセージがシステムアナウンスで知らされる。

 ここはゲームの世界なんだね。


「今は何時だろう」


 アシストメニューを開くと、十二時だと教えてくれる。


「お腹が減った」


 食への欲求が高まっている。何か食べないとHPが減ることになる。


 でも焦ってはだめ。

 まずはステータスを確認しないと。

 昨日の終わりにレベルが4から12に上がっている。80あるボーナスポイントを振り分ける必要がある。


 名前:ディー

 種族:妖精

 レベル:12

 クラス:無職

 称号:高貴なる血筋 探索者

 戦闘力:6602

 HP:[233/233]

 MP:[1263/1263]

 力:[34+10]

 敏捷:[67+21]

 知力:[166+13] 

 スキル:SP[13]

 錬金術[4]魔力感応[8]魔術[5]

 剣術[5]魅了[3]運気[4]

 植物学[3]鉱石学[2]魔物学[2]

 大工[2]


 知力に全振りしたよ。

 スキルは保留だね。ポイントが10余っているけど、緊急に備えておく。


「いいね。ご飯にしよう」


 システムメニューからマップ機能を選び、全体表示したボクは、観光街ローデスにワープする。


「着いたね」


 噴水がある広場。ゲーム開始に見せた賑わいがなくなっている。


「この辺にあったはずなんだけど……」


 昨日のゴミ拾いで見つけておいたんだ。


「よかった。やっているね」


 遊歩道にテントとお店が軒を連ねている。

 看板にサンドイッチの文字が掲げられている。テナント風の屋台の中にNPCが店番をしている。


「こんにちは」


 味が楽しみだね。


「やあ、お嬢さん。一つ30ギニーだよ」


「うん。ちょうだい」


「ありがとう。助かるよ。売れ行きが悪くて困っていたんだよ」


「そうなんだ。大変なんだね」


 コッペパン風のサンドイッチを手渡される。ボクは豪快にかぶり付く。


 何の肉か分からないけど、甘辛いタレとシャキシャキの野菜が合わさってバランスがいいね。濃厚なバンバンジーの風味がして、サッパリとボリュームがあるよ。


「美味しい」


「ありがとう。そう言ってもらえると嬉しいよ」


 お腹に入る感覚がリアルだね。食べ切るのにも時間が掛かる。

 軽くほお張ると口の中がいっぱいになる。ゆっくりと噛んで味わうと、パンの柔らかい質感と甘辛い肉の風味が心地いい。現実と変わんないね。


「ごちそうさま」


 ようやく食べ終えた。


「もう一つどうだい?」


 確かに足りない。


「じゃあ、おかわりをもらえるかな?」


「おや? 冗談で言ったんだが、本当にいいのかい?」


「うん。お腹が減っていたからね。もっと食べたいよ」


「嬉しいね。すぐに用意するから待っていてくれよ」


「うん」


 そう言っておじさんが野菜を切り始める。

 片手間で肉を焼き、コッペパン風のパンにナイフを通し、手際よく野菜をはさんでいく。

 その上に肉を乗せ、鉄なべに入ったソースを専用の器具ですくい、パンに振り掛ける。

 追加で二種類のソースを付けたら大葉で包み、「お待ちどうさま」と、手渡してくれる。


「ありがとう」


 感謝して二つ目のサンドイッチをほお張ると、さっきよりも美味しく感じられる。温かくて香りも濃いね。


「旨そうに食べてくれるね。見ていて嬉しくなるよ」


「ん、ん、うん。美味しいよ?」


 そう言うと元気がないおじさんが笑ってくれた。


「いつ以来だろう。お嬢さんのように感じのいいお客さんが来たのは。ここも昔は活気があったんだよ? 最近は深緑の森の開拓が決まって、多くの人が出払っているからね。そのせいで人が居ないんだよ」


「そうなの?」


「お嬢さんは料理ができないから関係ないけど、屋台を出してくれる人がそれなりに居たんだよ。ここでは作った物を提供する商売をしてもいい決まりがあるからね」


「そうなんだ」


「悲しいねえ。私もいつまで続けられるか分からないけど、できれば昔のように華やかだったあの頃に戻りたいものだよ」


「いいよ。手伝ってあげる」


「いやしかし、お嬢さんは料理ができないだろう?」


「できるよ。少し待っていてね」


 じゃあ料理のスキルを習得するね。


「取ったよ。どうかな?」


「おや? 本当だね」


 すると『特別クエスト〈屋台を出して観光地を盛り上げよう〉を受注しますか?』と、メッセージが流れてくる。

 迷わず許可を選択する。


「どうすればいいの?」


「準備をして屋台を出して欲しい。食べ物に関することならなんでもいいよ。広場にお客さんを呼んでくれればいいからね」


「屋台はどこで手に入れるの?」


「私が用意しているよ。先着500名までにね。機材の借用代は売り上げの十パーセント。それに加え、半年に一度査定を行っている。何もなかった場合は返却してもらう規則になるね。もしもずっと権利を主張したいのなら、半年に一度お金を稼いでもらえればいい。そうすることで次の時期も継続できるようになる」


「うん、分かったよ。それで何を目指せばいいのかな?」


「まずは屋台を出して欲しいね。その結果を見てから次の指示を出そう」


「そっか。じゃあ食材を集めてくるね。一度ここから離れてもいいかな?」


「ああ、構わないよ。準備をしておいで」


 半年ってゲームでの時間だよね。

 リアルで六日って意味だから、その間に何もしなかったら機材が返却される仕組みになるんだね。


「ちょっと行ってくるね」


 そう言ってマップを開いて拠点に戻る。そのまま森を目指して歩いていく。


「ただいま」


 食材を集めて来たけど、もう夜だね。


「やあ、お嬢さん。準備はできたのかな?」


「うん」


 ホーンラビットのお肉をいっぱい採れた。

 ついでにペッパー草を見つけたので、たくさん採取してきた。

 串用に木の枝も拾って錬金術で加工を済ませてある。植物の葉もたくさん採取してあるので、受け皿の心配もない。

 肉に串通しもしてある。約16000本を一気に錬金陣布で作り上げ、全てをストレージに仕舞ってある。

 あとは屋台を用意して焼くだけだね。


「まずは場所を決めて欲しい。そこがお嬢さんの設営地になるからね」


「そういう感じなんだ」


 目の前に地図が開かれる。

 借地を選択して欲しいコマンドが表示される。


 だったらどこにしようかな?

 あんまり人が来ないところがいいんだけど。


「うん、決めた」


 おじさんから離れた場所にしよう。

 木々が多く陰になっていて目的もなく歩いている人がまずいない場所。何より設置スペースが広いところがいいよね。


「選んだよ」


「本当にそこでいいのかい? 入口の方が人は来るよ?」


「うん。いいよ。むしろここがいい。他の人たちのためにもいいところは残しておきたいしね」


「えらいよ、お嬢さん。私は代々この公園の管理を任されているヘーデルだ。何か困ったことがあったら遠慮なく言って欲しい」


「ボクはディーだよ。これからもよろしくねぇ。ヘーデルさん」


「ああ、こちらこそ頼むよ。美しいお嬢さんには特別に屋台の料金をタダにしてあげるよ」


「え? いいの?」


「遠慮することはない。私の気持ちだからね。その代わり権利を放棄した場合には、次からちゃんと取ることにするからね」


「うん、分かったよ。ありがとう。さっそく作業を始めるね」


「ああ、がんばってくれよ」


 そう言って選んだ場所まで歩いていく。


「しっかし、本当に何もないところだね」


 照明がない夜の遊歩道。行き止まりの端っこがボク専用の場所になる。林に囲まれやや広く、ベンチが二基置かれている。


「着いたけどどうしたらいいのかな? ん?」


 メニューが出てきた。


「へえー。屋台の形状が選択できるんだ」


 鉄板焼きに串焼きにたこ焼きに居酒屋にラーメン屋にうどん屋もあるね。


「煮込みもあるし、飲み物やデザート専門もあるんだね」


 ボクは迷わず串焼きを選択する。


「えっ! 一瞬なの?」


 やっぱりゲームなんだね。立派な屋台がすぐに出てくるなんてびっくりだよ。


「他に何かできそうなことはあるのかな?」


 そう思って画面を操作していくと、従業員の項目が現れる。


「人も雇うことができるんだね」


 性格や話し方にタイプがあるんだね。

 それぞれ給金が違い、得意な料理をアピールしている。

 新規募集はひと月1000ギニー。安いのか分からないけど、料理を覚えさせなければいけないみたい。

 試しに雇ってみよう。


「こんばんは、ディー様。私はエルメと言います。よろしくお願いしますね」


「え? うん。お願いね」


 急に現れるからびっくりしちゃったよ。

 金髪碧眼の美人さんだね。どこの貴族のお嬢さんかな?


「さっそく何をしたらよいのでしょう」


「う、うん」


 エルメさんにはお店を任せたい。そのためには料理をしてもらう必要がある。でもどうしたら覚えてもらえるのかな?


「あ」


 なるほど。

 完成品を食べてもらうことで覚えてもらうことができるんだね。

 だったら。


「待っていて。今から串を焼くから。それを食べてもらって作り方を覚えてもらうからね」


「はい。お待ちしています」


 屋台の中に入るとメッセージが流れてくる。


「店名を決めて欲しい?」


 どうしよう。串焼きフェアリーズにしようかな?


「好い名前ですね」


「ありがとう」


 まずは味付け用の岩塩とペッパー草を用意しよう。

 魔術天秤で塩を作るんだ。

 分割分量調整をする。設定用の魔石に魔力を通し、赤い皿側の腕が少し傾くように調節する。


「あとは……」


 赤い皿に岩塩を置いて、青い皿にペッパー草を置く。完成品をイメージしながら魔力を流す。すると緑色の塩が赤い皿の上に現れる。


「できた」


 ストレージからガラス容器を取り出し、その中に移し入れる。


「次は焼きの準備だね」


 魔動コンロに火を入れる。

 材料になる魔力石を指定の場所にはめ込み、魔力を通す。


「火力の調整はこうかな?」


 握りに触れて魔力を与える。コンロの口から火が吹き上がる。

 魔術用の杖と同じ仕組み。魔力石が使用者のイメージに合わせ、火力を調節してくれる。


「さっそく焼くよ」


 まずは肩と背中とモモの串を二本ずつ用意しよう。

 ホーンラビットの肉だけど、なんとなく鳥さんと同じ感じがするね。


「中火が好きなんだよね」


 プロと焼き方が違うんだよ。

 魔力で素材をコーティングして熱通を好くするんだ。触感に関わる初塩をする必要がなくなるからね。

 リーズン処理の応用だよ。肉汁を封じ込め、表面以外はミディアムにする。


「見極めは簡単だよ? 脂が溶けて雫が落ちたら裏返しにするんだ」


 旨味を溶かさないようにね。肉汁をできるだけ残すようにしよう。


「魔力のコーティングは薄い方がいいね。でも慣れるまでは難しいから、やりやすいように工夫してね」


 そうは言ってもエルメさんに理解してもらえているのか分からない。それでも作り方を再現してもらわないと困るんだけどね。


「焼け具合は魔力を通していると分かってくるよ。生だと通りが悪くて重たい感じがするし、逆に焼けていると通りが早くて軽い感じがするからね」


 八割ほど焼けたみたい。ここで味付けをする。


「しっかりと両面に塩を振り掛けるんだよ」


 振り塩は多めにする。それでも三度味付けするプロの方法と違って控えめになる。


「できた」


 むしろ美味しいはずだよ。

 自信があるね。

 大葉の皿に盛り付けて完成だよ。


「ホーンラビットの串焼き。お待ちどうさま」


 さっそく試食しよう。


「エルメさん。食べよう?」


「はい」


 まずは背中の串からだね。


「まあ」


「お?」


 柔らかくて甘いね。思った以上の出来だよ。


「素晴らしいです。これ程の串焼きは今までに食べたことがありません」


「大げさだよ」


 とは言っても自画自賛なんだけどね。

 だってこの濃厚な味はいったいどこから出るの? そう思えるくらいには美味しく感じられるよ。


「あとはハツとレバーと背肝を焼くだけだね」


 二本ずつ焼くけど、ボクが食べるまでもない気がする。

 だって美味しいはずなんだもん。


「できた」


 大葉に盛り付け、エルメさんに手渡す。


「どう? 内臓の串焼きも美味しいよね?」


「はい。大変に美味です。これほどの物はそう頂けるはずがありません」


「よかった。そう言ってもらえると安心できるよ」


「お世辞ではありませんよ。ディー様の料理は大変に素晴らしいです」


「ありがとう。でもそうすると再現が難しいかな?」


「お任せください。全く同じ物を作ってみせます」


「そう? じゃあお願いね」


「はい。では価格を決めてください。食材も用意して欲しいです。足りなくなったときはお知らせしますので」


「そうだね。今から準備するね」


 モモは三ギニー。肩と背中は四ギニーにしよう。内臓は希少だから五ギニーにするね。

 あとはストレージに仕舞ってある串16000本を受け渡すだけでいいね。


「これでよし」


 塩も用意したし、任せてもいいよね?


「はい。さっそく焼き始めたいと思います」


「うん、お願いね」


 屋台の方はこれでいいかな? あとは冒険者ギルドで毛皮を売りに行こう。


「代金が1000ギニーになります」


「ありがとう」


 やったね。エルメさんの給金になったよ。


「ところでディーさん。一つお願いがあります。ぜひ力を貸してください」


「えっ? どうしたの?」


 受付のシンディーさんが突然カウンターから身を乗り出し、ボクの手を握ってくる。


「お願いします! 私どもを助けてください!」


「落ち着いて。ゆっくりでいいから話してよ」


「実はポーションが不足しているのです」


「どうして?」


「最近外から来た冒険者の方がポーションを大量に購入するので、在庫が無くなってしまったのです。生産ギルドの方にも問い合わせたのですが、生産者さんが不在のため、作ってもらうことができないのです。このままでは街の人たちにも影響が出てしまいます。できれば早急に作ってもらわないと困るんです」


「そうなの?」


「はい」


 そういうのって無限にある物じゃないのかな? 店売りはドゥラクエのように品切れにならないっていうよね?


「お願いします! 錬金術ができるディーさんにしか頼めないのです! ポーションを私どものために作ってはくださいませんか?」


「待ってよ。ポーションの作り方を知らないんだけど」


「でしたらレシピ本を提供します。初級錬金術の本です。無償でお譲りしますので、代わりに作ってください」


「え、え? いいけど……あっ!」


 しまった。うなずいてしまった。『特別クエスト〈初級ポーションを大量に納品しよう〉を受注しました』とするメッセージが流れてきた。


「ありがとうございます。これで開拓地に向かった人たちを支援することができます」


「分かったよ。だから手を放そうよ」


「最低1000本ほど用意してください。量を増やしていただけるのでしたら別に支払います」


「この本そんなに高い物なの?」


「はい。錬金術の本は希少です。これを複製をしない限り手に入れることはできないと思います」


 仕方がないね。大急ぎで作成に取り掛からないと。


「分かったよ。できるだけやってみるね」


「お願いします」


 ボクはマップを開いて拠点に戻る。


「まずはポーションの作り方を学ばないとね」


 とは云っても、この世界が現実と同じなら予測が付くけどね。


「作り方がいっぱい書いてあるね」


 薬や爆弾に食べ物や便利道具がそろっている。中には錬金陣布や魔術天秤も含まれている。


「初級のポーションはどこに書いてあるのかな? あ……あった」


 現実のブルーポーションだね。

 予想通りだ。

 でもこの作り方だと劣化が付いちゃうけどいいのかな?


「嫌だなー。せめて普通のブルーポーションを作っておきたいよね」


 材料はヒーリング草と蒸留水にポーションシダが必要と書いてある。

 でもヒーリング草に含まれる魔素が原因で劣化してしまうかもしれない。だから魔素を打ち消す中和剤が必要になる。


「黄色の中和剤は作れるね。問題はポーションシダが無いってことだよね」


 森に行ってもどこにあるか分からない。現実と違って形も分からないし、貴重だから手に入れるのも難しい。仮に見つけたとしても増やさないといけないから手間が掛かる。


「困ったね」


 どうにかして材料を手に入れないと。


「でもまずは在庫の確認からだね」


 先を見据えて計算しておこう。

 ヒーリング草を主軸にどれだけポーションシダを手に入れなければいけないのか確かめておかないと。

 アシストメニューで家の保管ボックスの中を確認しておこう。


「レンガが200。ガラス玉が1500。ポイズン草にパラライズ草にマジック草にヒーリング草」


 それぞれ750ほどあるね。

 他には岩塩に発泡石にアンチドーテと井戸水。それと未鑑定の石があるね。


「あれ?」


 なんで?

 ポーションシダが保存ボックスに752もあるんだけど。


「そういえば未鑑定だった草が無いね」


 栽培していたけど表記が無くなっている。

 おそらく錬金術の本を読んだときに名前がポーションシダに変わったんだね。


「結果オーライだね」


 これで初級のポーションが作れるよ。


「そうと決まればさっそく作業を始めよう」


 必要な物を用意しよう。まずは魔術天秤で素材を作っていこう。


「よし! マテリエの完成だね!」


 ヒーリング草のマテリエにパラライズ草のマテリエ。そして蒸留水に魔力を与えて作った魔力水。


「あとは……」


 乾燥させたポーションシダを粉にして、それを蒸留水と合わせて加熱し、抽出した液を採取する作業があるね。


「台所が欲しい」


 料理器具にコンロがあればなんとかなるんだけど。


「このままだとポーションが作れないよね」


 あの人に聞くしかないか。

 おじさんに会いに行こう。


「そったらことするなら鍛冶スキルがないとだめだべぇ」


「じゃあスキルがあれば台所が作れるの?」


「だれども熟練の技術さ必要になるべぇ。時間を掛けて修行しないと作れないべぇ」


「だったらどうすればいいの? 早く欲しいんだけど」


 農業街ルカルゴの管理者をしているファーマッドさんに話を聞いている。

 でもなんで外に居るんだろう。真夜中だけどNPCって寝ないのかな?


「生産ギルドに行くといいべぇ。あそこには大体のもんがそろっとるからな」


「そうなの? 分かった。行ってみるよ。じゃあまた何かあったら聞きに来るね」


「まてまて、おらからも話がある」


「え? なに? 急いでいるんだけど」


「手伝いを雇う気はねえか? 畑の仕事さしてくれるし、身の回りの世話もしてくれる。今のうちに雇っておいた方がいいべぇ」


「いいよ。どうすればいい?」


 こういう話は長くなるかもしれないから、うなずいて終わらせることにしよう。


「そったら手続きを進めるべぇな」


 すると『〈アシストNPCの雇用〉が完了しました』とメッセージが流れてくる。


「もういいの?」


「ああ、呼び止めて悪いべぇな。代わりに毎月の支払いは十分の一にしといてやるべぇ」


「うん。助かるよ。いろいろとありがとう」


「おう。またなんかあったら聞きに来るといいべぇ」


「うん」


 すぐにマップを開いて生産ギルドにワープする。


「台所が欲しいだとう?」


「うん。作ってもらえないかな?」


 ギルドマスターのドバルさんに話を聞いている。


「いいけどよう。受注生産になると価格が十倍になるぞ?」


「受注じゃなくてもいいよ。ある物でいいから用意して欲しいんだ」


「いいぜ。ここは生産ギルドだからな。それなりにそろっている」


「そうなの? だったら資料を見せてよ」


「そんな物はない。まずは要望を言ってみろ」


「じゃあ料理と錬金術が一通りできる物が欲しいね」


「あるぜ。魔力石で動くコンロとオーブンが一体化した調理台がなあ」


「だったらそれでいいよ。あとは道具一式と食器も合わせてくれると嬉しいな」


「気前がいいな。金はあるのか?」


「たくさんある訳でもないけど買えると思っているよ。それとも高いのかな?」


「そうだなあ……。嬢ちゃんみたいな子が簡単に買えるもんでもねぇからなあ。だったら提案なんだがよう。うちの中堅が作った物でも好けりゃあ、安くしておいてやるぜ?」


「いいけど、品質に問題はないよね?」


「その辺は抜かりねぇよ。ただしデザインに派手さがねぇがなあ」


「いくらになるの?」


「全部で八〇〇〇ギニーだ。料理用の道具に食器もおまけしてやるよ」


「いいの?」


「おう。嬢ちゃんはべっぴんさんだからな。今後ともよろしくってことで二〇〇〇ギニーにまけておいてやるぜ」


「え?」


 あれ? 何で割引されたんだろう。


「魔力石はあるのか?」


「あるよ。でも売ってくれるなら欲しいかな」


「一個二〇〇ギニーでどうよ」


「本当? じゃあ十個買うよ」


「おう。気前がいいなあ。だったらおまけして五〇〇ギニーにしてやるぜ」


「え? うん、助かるよ」


 やっぱり変だよ。さすがにボクも気付くよ。

 だって75パーセントオフだよ? 絶対にありえない。


「次もよろしく頼むぜ」


「うん」


 NPCって優しいね。


 それともボクが騙されているのかな?

 本当はそれくらいの値段なのに高めに言っているのかな?

 どちらにしてもちょっと怖いよ。


「行くね。ありがとう」


「おう」


 拠点に戻って錬金術に集中しよう。

 改訂履歴

 2026/1/15 スキルポイントの表記修正


 なんか落ちが無い話でした。

 でもこうしないと先には行けないのです。

 あと昔の話を目にすると汚いのでまた修正します。少し時間をください。

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