第二幕【魂魄管理局】
「ま、待ってください!」
後方から近づいてくる気配に気づき横目で確認する。
「ちっ、追ってきたの……」
ツインテールの少女はさらにスピードを上げ漆黒の空を駆ける死神の少女を地上から振り切る。
「お願いです! 話を聞かせてください!」
死神の少女はどこからともなく黒豚のぬいぐるみを取り出しそれを思いっきり、前方を走る漆黒の髪の少女に上空から投げつける。放たれた黒小ぶたのぬいぐるみは背中からこうもりの羽が意思を持ったかのように加速し少女の前方に回り込み、そして。顔に張り付いた。
「ちょっ! にゃによ! きょれ!」
突然顔に張り付いたぶたのぬいぐるみにびっくりし舌が回らずに舌足らずになる。
「追いつきましたよ……」
死神の少女はツインテールの少女の前に立ち『もういいよ。ありがとう』といい張り付いたぶたのぬいぐるみを取る。
「まったく……おかしな手で逃走を止められたものね……」
ほほをさすりながら少女は眼前に立つ少女をするどい視線で睨む。が、死神の少女は一瞬たじろいだがすぐにその視線を受け止め『理由を教えてください』と、口を開く。
「なんの?」
「どうして、魂を獲るのですか?」
「あいつは《願望機》を使ったから」
「その処理は私たち魂魄管理局の仕事です」
「本気で言ってるの……あんた。死神になりたての新人?」
「は、はい、そうですけど……なにか問題でも?」
「なるほど……じゃあ、知らないわけね」
「な、なにがですか……」
「あんたが所属してる管理局の《闇》よ」
「闇……な、なんのことですか?」
「魂魄管理局はふぬけよ……甘い汁をすすって《願望機》を私物化している」
「ど、どういうことです……」
「これ以上はダメ」
「は、話してください!」
「知りたい?」
「はい」
「じゃあ……わたしを倒したら教えてあげるよ!」
ツインテールの少女は月詠を抜刀し死神の少女に向け刀を水平に薙ぐ。
「な、なんでそうなるんですか!?」
死神の少女は持っていた自身の身長よりも長い大釜で刀撃を受け止める。
「お話したいんでしょ!?」
少女は刀撃を間隔をあけずに連続で死神の少女に刀を薙ぐ。
「そ、そうですけど!」
死神の少女も迫りくる刀撃を大鎌を巧みに操りすべて受け止め、またはいなす。
「じゃあ、わたしに勝ちなさいよ!」
「そっ、その言葉忘れないでくださいね!」
死神の少女は刀をはじき黒い翼を羽ばたかせ空へと飛ぶ立つ。
「夜の闇で死神に戦いを挑んだこと、後悔してください」
少女は人差し指を天へとかかげ『封印血界』と叫ぶ。自分の血を媒介にして空間を世界からずらす魔術は死神魔術の一つ。掲げた人差し指から赤いゆらめく光が発生、
そしてはじけ空間に解け交じり合っていく。そして死神の少女は翼を大きくはばたかせ闇と同化し、そのままツインテールの少女の視界から消えた。
「血界で消えた……ううん、違う……か!」
振り返り自分の真後ろを月詠で一文字に薙ぐ。
「な、なんで……!?」
闇から真後ろから出現した死神の少女は驚愕の表情で夜の空へと羽ばたき逃げる。
「あらら、お得意の闇天道をやぶられちゃったね」
上空にいる死神の少女に不適な笑顔を浮かべる。
「どうしたの? そんなに闇天道を見透かれたのがショックかな?」
「こ、魂魄管理法八十五条。『死神以外の者が魂を蒐集する行為を禁ず』に於いて……あ、あなたを拘束します……」
いまだに動揺を隠せない死神の少女は再び翼を羽ばたかせ黒い翼を撒き散らし闇と同化する。それをみたツインテールの少女は右手を腰に当て『ふぅ』と息をつくき左手を真横に突き出し蒼い炎を発火させる。
「うそ……」
ツインテールの少女の左手の先には青ざめた死神の少女が闇から出現していた。
「そろそろ、待ち合わせの時間だからわたし帰るね。それじゃ」
ツインテールの少女は左手に発火させている蒼い炎を握りつぶす。潰された蒼い炎は光を発光させ死神の少女はまともにそれを見てしまった。
「あっ! しまっ!」
「じゃあね。楽しかったよ」
少女はその場から大きくジャンプし死神の少女から離れそのまま月詠を振り下ろす。少女に斬られた空間を起点に亀裂が走りガラスのように一点が割れた。
「うそ……」
先ほど同じ言葉を吐き死神の少女は砕けた空間を……自分が作った『血界』を見た。その血界の境界からツインテールの少女が走り去っていくのが見えた。
死神の少女はまたもどこから出したか、わからない黒い子ぶたのぬいぐるみ三匹に『お願い追って』と命じる。それに答え三匹のぬいぐるみは小さく黒いこうもりの羽をはばたかせツインテールの少女を追う。
(使い魔?……あの死神……見た目より意外とやるわね)
小さな子ブタのぬいぐるみにコウモリの羽が生えたようなかわいい使い魔三匹が近づいてくる。
(また……でもちょっとあのブタカワイイじゃない……)
子ブタのぬいぐるみにコウモリの羽が生えたようなかわいい使い魔三匹を確認し、路地裏に着地し戦闘態勢に入る。逃げの一辺倒だった少女が戦闘態勢に入るのは理由があった。
使い魔を通して現在の場所が知られるからだ。それを防ぐために今あの使い魔を倒す必要がある。
少女は鞘に手をかけ月詠を抜き。正眼の構えをとり使い魔に向かって走り出す。
「はあっ!」
掛け声とともに斬り出される一閃。すれ違いざまに使い魔の一匹をあっけなく斬る。
斬られた使い魔はまるで溶けるように闇に同化して消えた。
「残りニ匹!」
かわいい子ぶたの前足から無数の闇の弾が少女に向かって打ち出される。ツインテールの少女は走りながら右左と軸移動でかわし徐々に使い魔との距離を縮める。
さらに加速を早め一気に間合いを詰め加速を止めないまま横払い一閃で使い魔を仕留める。先ほどと同じように闇に溶けていく使い魔。少女は加速を緩めないまま後方にいた
最後に一匹に走りこんでいく。
「これで……最後ぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
気合とともに放たれる下からの袈裟斬りの一撃は見事に使い魔を一刀両断していた。そして、闇に溶けるように斬られた子ブタは消えた。
魂を奪うもの・最終幕【器と選定】に続く
こんにちはとこんばんは間宮冬弥です。
今回の作品を最後まで読んでいただきましてありがとうございます。
この魂を奪うものは次回で最終話となっております。やはりこの『魂』をテーマにするのは『無謀だったな』と、後悔しております。なにぶん『不死と死神と〜』と同じ感じにならないようにしないといけないプレッシャーがありましたので。
ちなみに、同じ死神という存在が出てくる『不死と死神と〜』とは物語としての関連性はありません。まったく違う世界観なので『不死と死神と〜』には魂魄管理局はありません。死神としての役割も違います。
一応次回が最終話です。よろしかったらこちらも読んでいただけると嬉しいです。
では、失礼します。




