第一幕【願いの代償】
「こんにちは。お兄さん」
紅と蒼の双子月が照らす夜の街を行く一人の青年に十五歳くらいのツインテールの少女が話しかける。
「ん? 誰、君?」
二十代前半の青年は話しかけられた少女に近づき話しかける。
「メンドいからさっそく言うけど。魂頂きますね」
「はっ? なに? 魂?」
青年は意味不明の言葉をかけられ繭をひそめる。
「使ったんでしょ?」
白いワイシャツにネクタイ。黒いミにスカートのツインテールの少女は口の端を吊り上げ青年に訊く。
「なに言ってんの? 君?」
「覚えてないの? しょうがないな。それともトボけてるのかな?」
ふぅとため息をつき手のひらを額に当てる。
「あなた、『願望機』を使ったんでしょ?」
その言葉に青年がみるみる青ざめる。さらに震えが起き小刻に体が振動する。
「な、なぜ……それを……」
「あなたは『願望機』の能力でどんな《望み》を叶えたのかしら?」
目を細め男に冷たい視線を送る。その顔は小悪魔みたいでかわいいが対峙している男にしてみれば悪魔のそのものだった。
「まっいいか、どうせあなた死ぬんだし」
「そんな……話が違う……待ってくれ……俺は!」
「言い訳は見苦しいよ。『願望機』を使い願いを適えた者はその代償として『魂』を神に捧げなければならないのに……あなたは捧げずに逃れようとしている」
少女は『おいで……月詠』と呟く。少女の手にひらに真っ黒な夜の闇と同等の漆黒の闇の玉具現化させ手のひらを返しその玉を握り、そして潰した。
真っ黒な液体が地面を覆う。そして地面を覆っていた黒い液体がうねうねと動き棒状にゆっくりと重力に逆らい少女の手元まで伸びていく。
「な、なんだ……」
まるで、悪魔の儀式を見ているような感覚に堕ちた青年はその場から動けず、その光景から目が話せなかった。
「逃げないんだ……まぁ、逃げても無駄だけどね」
黒い液体を掴み一気に引き上げる。黒い液体がボトボトと零れ落ち少女の手には刀が、銘は月詠が現れる。鞘を右手に持ち替え左手で月詠を抜く
そして刀の切っ先を男に向けて言う『あなたの『魂』を頂くわ』と。
「オレは……オレは……《願望機》の能力で《願い》を叶えてやっと……《彼女》を手に入れたんだ! こんな所で死ねないんだ!」
手のひらを少女の向け下級魔術で生み出した炎の玉を放つ。少女は冷静に焦ることなく右手を大きく薙ぎ払い炎の玉をはじく。
「なっ……」
男は驚愕した。少女は下級魔術とはいえ炎の玉をはじいたのだ。しかもあっさりと。
「《彼女》……そう、それがあなたの叶えた《願い》なのね。でも、彼女自身は納得してるのかしら? まあ、その《彼女》にも、もう会えないか」
冷たく、冷たくさめた目線で男を眺める。
「死ぬ前に見せてあげるよ魔力で生み出した炎よりも輝き、神すらも焼き尽くす煉獄の炎を!」
少女の右手に炎が宿る、蒼い、蒼い炎が姿を現す。
下級魔術で生み出した炎は紅い炎、上級魔術で生み出した炎は黄金となる。しかし、蒼い炎は魔術で生み出した炎ではない。魔術で生み出したのならそんな色はしない。
この世界にありえない炎。だが、その少女はありえない炎である蒼き炎を出現させた。
「さよなら」
男に蒼い炎を宿った右手をかざす。
一瞬の閃光。そこでその男の一生は終った。断末魔をあげる暇もなかった男がいたであろう場所には男の姿は跡形もなくなっていた。血も骨もすべてなくなっていた。ただ何か焦げた匂いが残っているだけだった。
「さてと……」
少女は手にもっていた刀を月詠を鞘に収めそして右の手のひらを宙に向ける。
手のひらが光りだす。正確には手のひらから浮いた場所から輝きだした。光は手のひらサイズの魔方陣を形どり、その魔方陣に導かれた光る蝶。魂が姿を現す。
蝶は魔方陣に近づき、そして、スゥーっと消えた。
「完了ね……」
手のひらの魔方陣が消え上空を見上げて《ふぅ》と息をつく。
その瞬間、彼女は吐いた息を飲むこむ、上空にはセーラータイプの黒いワンピースに黒い漆黒の翼を広げ一人の十五歳くらいの少女が浮かんでいて、さらに目が合ってしまったからだ。
(あの大きな鎌に漆黒の翼……『魂魄管理局』の死神か……今の魂を奪うところ……見られたか)
ニ人の少女は沈黙のまま目を離さないままでいた。ツインテールの少女は不適な笑みを、翼がある少女はバツの悪い表情が濁った。顔をしていた。
「あ、あの……い、今……魂を奪ったんですか?」
沈黙を破ったのは気の弱そうな漆黒の翼のある少女だった。
「だったらどうするの?」
「だっダメですよ! 無理やり魂を奪う事はいっ、違法です!」
多分、怒っているだろうが気が弱いせいかイマイチ迫力が欠ける。
「じゃあ、あなたはわたしが魂を奪った人が何をしたか知ってるの?」
「そんなの知りません、でも、あなたは魂を奪いました。それも……『殺す』という最悪最低の方法で!」
眉一つ動かさずにツインテールの少女は『あの男は『願望機』を使って望みを叶えたのよ』と死神の少女に言った。
「えっ……願望機を使った……」
「だから、奪ったのよ。死神のあなたが一番わかってるでしょ? 願望機を使って望みを叶えた者は魂を死を司る神に捧げなければならない」
「死を司る神に捧げる役目はわたし達死神のはずです。でも、あなたは『死神』じゃありませんね」
「そうね、わたしは死神じゃないわ」
「じゃあなんで! どうして、奪うんですか?!」
語尾が荒くなっている翼ある少女を見ながらツインテールの少女の口の端が吊り上る。
「あなただって同じでしょ? 魂を奪うって事に関してはね」
「ち、違います! わたし達死神は決して『殺して』魂を奪いません!」
さらに怒気が強くなるがイマイチ迫力に欠けている。
「方法はどうあれ、最終的に辿り着くのは同じ『魂を取る』よ。あなたもわたしもね」
ツインテールの少女は翼ある少女に右手をかざした。
「もう、行かないと、じゃあね、死神さん」
その瞬間に手のひらから蒼い炎が浮かび翼ある少女に向かって放たれる。
「蒼い……きゃっ!」
閃光を発しながら襲ってくる蒼い炎を空中でさけその反動で体勢をくずした。体勢を立て直した時にはツインテールの少女はいなかった。完璧に夜の闇と同化してしまって見つけることは
困難だった。
(死神が来たって事は……願望機の魔力を感知したって事ね……でも、感知できるのは願望機に対して一人だけ……あの死神だけ)
夜の街の屋根つたいを疾走しながらそんな事を考える。だが、その思考は長くは続かなかった。
魂を奪うもの・第二幕【魂魄管理局】へ続く。
お久しぶりです。間宮冬弥です。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
今回の作品は一応ですが三話完結で考えています。近いうちに第二話を掲載できると思いますのでその時はどうかよろしくお願いします。
では、短いあとがきですがこれにて失礼します。




