別に普通のメールだろ!
六歳児がスレンダーフォン持ってて。僕がインディアン携帯……。格差を感じた瞬間だった。どうせ僕は貧乏ですよ。
僕が落ち込んでいる間に神埼さんとつかさちゃんは携帯をぶつけあいこして、アドレスを交換していた。
交換し終わったら、つかさちゃんがすかさず。
「お兄ちゃんも、交換してくださいです」
天使の笑顔でそう言ってくる。ツインテールの可愛らしい髪型で……。
これは断れない。というか断る理由がない。
「もちろんいいよ」
僕はそう言って、携帯を差し出す。
「あ、ちょっと待って下さいです。赤外線の仕方がわからないです」
しかめっ面で携帯を操作しだすつかさちゃん。
どうやら本当にわからない模様。色々操作して、それでもわからず、ちょっと泣き出しそうになるつかさちゃん。
あ、やばい。泣いちゃう。とおもった時だった。
「ここを押して、こうですよ」
神埼さんがつかさちゃんの画面を覗きながら言った。
「あ、これですーありがとうですー」
つかさちゃんに笑顔が戻った。
「お兄ちゃん。おまたせですー」
「いいよいいよ、見つかってよかったね」
僕はスレンダーフォンの操作なんて全くわからないから、神埼さんが居て助かった。泣かれたら正直たまったもんじゃない。
小さい子に泣かれるのは本当に弱い。どうしていいかもわからないから。おどおどするしかない。神埼さんグッジョブ。
「これで送れたはずですっ!」
にこやかにつかさちゃんが言う。
「じゃあ確認するね」
僕は携帯を操作して、確認する、しっかりと、東條つかさと名前がアドレス帳にあるのを確認。
「うん、送れてるよ。ありがとう」
「なにか、何か送ってくださいですー」
「あぁ、いいよちょっと待ってね」
そう言って僕はメール作成画面へいって、メールを作成。
適当に。『件名:初メール 本文:春樹だよー。よろしくね』というメールをつかさちゃんに送る。
本当にひねりもなんにもないただのメール。実際こういう時どんなメールを送っていいかも分からないので、これでいいだろうと自分の中で簡単に決める。
「やったー。届いたですー。ママ以外の人のメール初受信ですー」
つかさちゃんが両手を上げて大喜び。
「ちょっとまって、お母さん以外の人からの初メールだったの?」
「そうです。お兄ちゃんが初メールです。すっごく嬉しいですー」
そんなことならもっと何か良いメールを送ったほうが良かったんじゃないか。と後悔。どんなメールって言われたらそれはちょっとわからないけど。顔文字だとか、絵文字をもっと入れて華やかな感じにすればよかった。
そう思っても、もう遅いけれど。
「初メールなんて送ったんだ?」
誠がからかい混じりで聞いてきた。
「春樹だよーよろしくね。って着たです」
「お前、もっとなんかこう、なかったのかよ」
「井上はもっと普段から考えて行動すべき。何も考えてなすぎ」
誠と如月さんから責められる。メールを送っただけでこの始末である。
「春樹は脳天気だからなしかたない」
「脳天気じゃないよ。人を散々馬鹿にして!」
「いや、散々にはしてないだろ。馬鹿だけど。それは事実だからしかたない」
「そう、井上は馬鹿なのだから、もう少し自覚して努力した方がいい」
この二人、人を馬鹿馬鹿と馬鹿にして。なんてやつらだ。
「ふん、馬鹿って言う方が馬鹿なんだよ。知らなかったの二人共」
言ってやった。そう、昔からよく言う。馬鹿というやつが馬鹿なんだ。そういう名言があるじゃないか。これで二人は僕のことを馬鹿にはできない。
「いや、馬鹿は馬鹿だろ」
「そもそも、そんなことを言うのが小学生臭い。知能が小学生レベル」
さっき以上に馬鹿にされた……。もう僕に為す術はない。完全に敗北だ。口ではこの二人に勝てない。この二人は幼なじみだけに、息がピッタリあってるからな。
いや、今はそんなことはどうでもいい。最重要事項は、神埼さんの連絡先をゲットしたってことだ。これでいつでもおっぱ……もとい、神埼さんと連絡がとれる。
だけど、メールで告白だなんてことはしない。
なぜかというと、そのために連絡先を聞かれたと思われてもよくはないし、断られた時今後連絡が取れなくなってしまう。一か八かの勝負になってしまうから。
だから、僕はメールを連絡手段としてしか使うつもりはない。今のところはそれで十分だ。重ねて言うが今日は金曜日。日曜日の予定を聞くのはメールでしかない。
今聞くと、ヘタしたらみんなで何処かに行くということになってしまう可能性が高いからだ。
「それにしてもホントここはのどかでいいですね」
「あぁ、確かに、教室はどんどん険悪になっていってるからな。空気が悪すぎる」
「そうなんだよね。もうパートナー決めてる人は我関せずって感じだけど、それ以外がほんと膠着状態が続いてるから。どうしようもないね」
「つかさ、空気悪いの嫌ですー」




