第4話 宇崎百花はコンテストが心配
くるに昨夜の話をしたら呆れられた。
「もか、絵心ないもん」
「好きなのに!」
残念ながら、好きだろうとうまくなるとは限らないのだ。
小学生の頃にちょっと漫画家になりたかった時期もあったけど、同じく漫画家志望の同級生がめちゃくちゃ絵がうまくてあきらめた。風の噂だけど、その子ですら漫画家をあきらめたらしい。
漫画家はあきらめた私だけど、絵を描くのは好き。落書きレベルだけど。絵の勉強なんてしてないけど。小学生以下ってバカにされるけど!
「絵がめっちゃうまくなりたいなんて言わないけど、小学生よりはうまくなりたい!」
「練習しなよ」
「子供の時にいっぱいした!」
ため息つかれた。
見たまま描くっていうのがまず難しいんだもん。現実のものに主線ないじゃん。立体を平面にどうやって落とすの?
「で。似顔絵大会ねえ……」
くるがスマホの画面を見ながら言葉を落とす。
そこにはらびこのSNSが表示されている。
結局リスナーにそそのかされて、似顔絵コンテストは開催決定となってしまった。
こんな底辺配信者のとこに応募してくれる物好きいるはずないじゃん、ねえ?
一応常連たちが「かくよー」って言ってはいた。いたけど、正直怪しい。信じがたい。
「……誰もくれなかったらつらいから、くるも応募して……」
「断固拒否」
取り付く島もない。
私は知っている。
くるだって別に絵はうまくない。
ただ、私と違って興味ないからうまくないだけで。
つらい。
「せめて結果発表の時は見に来てーにぎやかしてー」
「まあ、たまにはいいよ」
応募ゼロ件でも結果発表はやるから。
それなら、せめて、その枠が少しでも賑わうようにしたい。
せっかく告知してるのにいつも通りだとちょっと寂しい。
「ってかさ」
「うん?」
くるがスマホから顔を上げてちらっとこっちを見る。
ショートカットがよく似合う。
「あー……でも、ないわ。もかの勘違いだし、ないわ。なんでもない」
「言いかけてやめるのやめてー! 最後まで言って!」
「……じゃあ言うけど、ぶっちゃけありえないけど、もかがそう主張したから一応言うけど」
なんか前置き多くない?
不満を口に出しそうになったけど、次の言葉で全部ひっこんだ。
「コンテストに『銀杏先生』が応募してくる可能性は?」
昨夜コメントなかったのと、常連に馬鹿にされすぎてちょっと忘れてた。
銀杏先生が私のアイコン(と私は主張する)を巻末で描いてくれたことと、リスナーの中に銀杏先生っぽい人がいることから考えて、その可能性は割と高い気がする。
「……ふ」
「ふ?」
「ふおぅぅぅぅぅぅ」
頭を抱えて講義室の机に突っ伏した。
オタクなので。
先生の新規絵はめっちゃ見たい。それが自分のアイコンなら悶え転げる。
けど、やっぱり先生に認知されるの嫌だ。
推しへの愛叫んでるのを推しに認知されるの嫌じゃない?
私は無理!
なるべく見つからずひっそりと生きていたい。
あああああああでも新規絵は見たい!
私が葛藤したところで、先生次第な問題だけど、どうにもならないからこそ叫びたくなる。
「くるー……どうしたらいいのぉ」
「私はそんな可能性ゼロだと思ってるから、心配しなくていいと思うけど」
っていうか講義始まるからそろそろ黙りな。
そう言いながらくるは鞄からノートを取り出した。
こんな爆弾落としてそれはひどくないかなあ。




