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雑談は推し活に入りますか?~底辺配信者の私の配信に最愛の漫画家がいる気がする  作者: 猫宮さかな
第一章 底辺配信者、推しに認知される

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10/13

第10話 宇崎百花は推しに身バレしたけど、推しの秘密は守る

「ありえなくない?」

「私もそう思うー」


 あのあとくるからの着信があったので、そのままくるの部屋に来た。

 くるからの電話なんて珍しいんだぞ。たぶん、初めてなくらいに。

 それくらい心配かけてるんだなーと思ったから、慌てて報告に来たわけです。

 その結果が「ありえなくない?」です。まったくもってその通り。


「イカ焼き屋さんが銀杏先生かどうかは置いておいて」

「いや、絶対そうだって! 確定だよ!」


 睨まれた。解せぬ。でも黙る。怒らせたいわけではないので。


「最近聞き始めたのに、ずいぶん気合の入ったリスナーだね。確かにテンション高いもかの声はわかりやすいけど」

「え? そんなに変な声出してる?」

「それでも似た声で終わりそうなものを、よく本物と認識したね」


 無視された。

 え、そんなわかりやすいほど変な声なの? 結構ショックなんだけど。


「服も偶然……いや、もかのあのアイコンから、もかの思い描いてた姿そのまま描けるくらいだから、感性がもかに似てるのかな? だからもかが好んで着る服が可愛く見えた?」


 くるがぶつぶつと呟きだした。なんか失礼なことも言われた気がする。

 また私の絵が下手って話してなかった?


「まあ、身バレ問題は解決したみたいだけど、どうすんの?」

「なにを?」


 めでたしめでたし以外になんかあるの?

 くるの出してくれた紅茶を飲みながら首をかしげる。

 可愛いうさぎと花の柄のマグカップ。意外かもしれないけど、くるの部屋は可愛いものが溢れている。


「仮に銀杏先生なら、推しに認知された上に身バレしてるけどいいの?」

「……よくはない」


 視線を逸らす。

 飯ケ谷さんと別れてからずっとずっと見ないふりして、めでたしめでたしにしようとしてる問題。

 見なければ、ないんだよ。シュレディンガーだよ。


「よくないならどうすんの?」

「……どうやったらなかったことになるのかなあ」

「ならねーよ」


 願いに対してツッコまれた。


「だーーってさあ! 推しに気づかれずひっそりと生きていたかったのに、推しに推されて、顔も名前もバレて、これからも配信してくださいって言われて、いっぱい話をしてしまった私は! 本来! 許されてはいけない! けど! 推しがそんな私を推してるから許すしかない! でもやっぱり私の気持ちは許せない! でも、推しの言うことは絶対!」


 くるの部屋のうさぎクッションをべしべし叩く。くるに頭を叩かれた。私よりうさぎを優先するのか。

 私だってうさぎだぞ。らびっとだぞ。

 そう言ったらまた叩かれるのがわかってるから言わないけど。


「で? じゃあどうすんの?」

「……推しにバレたことも推しが見てることも忘れて、前と同じように配信する」

「やれんの?」

「無理かもしんないけど、推しが見てるから……やる」


 もう、我ながらめちゃくちゃだ。

 推しのためにも配信を続けるけど、続けるために推しが見てることを忘れる。なんのこっちゃ。


「まあ、がんばれとしか言えないけど。あと、リアルのほうはどうするの?」

「リアル?」

「よく行く本屋でしょ? また会うんじゃないの?」

「んおう?!」


 そっちは完全に忘れていた。

 それまずくない?

 配信はまだコメントだけだから頑張れるけど、本人前にして知らないフリ無理じゃない? っていうか失礼では?


「あの本屋使うのやめるのが手っ取り早いけど」

「無理無理無理無理! このへんで一番おっきい本屋な上に、銀杏先生のサイン色紙飾ってあるんだよ! 定期的に摂取しに行かなきゃ!」

「摂取ってなんだ」

「サイン色紙は栄養になるの!」


 飯ケ谷さんが店舗にいない時間を狙うしかない? いや、それ、どうやって知るのよ。


「そもそも、イカ焼き屋さんに銀杏先生かどうか確認してないんだから、あんたの勘違いな可能性が高いんだけど」

「確認しなくても本人だし、本人に『身バレしてます』なんてお伝え出来ないでしょ!」


 飯ケ谷さんには絶対言わない。銀杏先生ですよねなんて絶対言わない。

 らびこって呼ばれてびっくりして「イカ焼き屋さん」とは呼んじゃったけど、「銀杏先生」とは絶対に絶対に呼ばない。そんな失態やらかしたら処刑だ。

 だってわざわざ絵柄変えてコンテスト送ってくれたんだから、絶対身バレしたくないじゃん。それなら、その願い叶えるのがファンでしょ!

 だから、絶対絶対本人には言わない!

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