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現実は、台本通りになんてならない〜中学時代に書いた黒歴史物語の世界に来てしまった話〜  作者: 瑠美


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55/55

第55話 女子会

 約束の日の午後。応接室には、香り高い紅茶と焼き菓子が用意され、穏やかな時間が流れていた。


「楽しみね。」

 リリアーナが微笑むと、エリカも少し緊張しながら頷く。


 ほどなくして扉が開き、明るい声が室内に響いた。

「リリアーナ!久しぶり。」

 軽やかに入ってきたサラは、リリアーナの顔を見るなり嬉しそうに笑った。エリカの方も見て、一礼をする。メイドにも挨拶をする彼女は、やはり心の綺麗な方だとエリカは思った。


 挨拶を交わし、三人が席につくと、リリアーナは早速本題へと入る。

「実はね、サラ。エリカのことなんだけど……。」

 そのまま、エリカが実の妹であること、事情があって身分を隠しメイドとして過ごしていたことを説明する。


 一通り話し終えると、わずかな沈黙が落ちた。

(やっぱり驚くよね)

エリカがそう思った瞬間――

「やっぱり。」

サラは、あっさりと頷いた。

「え?」

エリカとリリアーナ。二人の声が重なる。

「なんとなく、普通のメイドじゃない気はしてたのよね。」

さらりと言いながら、紅茶に口をつける。

「オーラが違うというか……。貴族っぽいんだけど、完全にそうでもない、不思議な感じだったの。」

エリカとリリアーナは、思わず顔を見合わせる。

(ほぼ当たってる……。)

異世界転生のことこそ伏せているものの、それ以外はほとんど言い当てられている。

「どうして、そこまで分かっていたの?」

リリアーナが興味深そうに問いかける。するとサラは、少しだけ肩をすくめた。そして少しだけいたずらっぽい笑顔で言う。

「んー、隠してたわけじゃないんだけど。私、人の“オーラ”みたいなものを見るのが得意なの。」

「オーラ……?」

エリカが小さく繰り返す。

「そう。雰囲気とか、空気とか、そういうのを読むのとはちょっと違って。その人の性格とか、今どんな気持ちかとかが、なんとなく分かるのよね。」


 一瞬、静寂が落ちる。

「それ、かなりすごい能力じゃないですか?」

エリカが素直に言うと、サラはくすっと笑った。

「便利だけど、たまに困るわよ? 見たくないものまで見えちゃうから。」

軽く言いながらも、その言葉にはどこか含みがあった。リリアーナも納得したように頷く。

「だから、エリカのことも……。」

「ええ、違和感があったの。」

サラははっきりと答える。

「メイドにしては落ち着きすぎてるし、でも完全な貴族とも違う。」


 そして、にやりと笑う。

「何かある人だなって思ってた。」

エリカは苦笑するしかなかった。その何かが、サラの想像できる範囲のことなのかは分からないが、それを除けば大正解だった。


 そんな空気の中。

「で?」

サラが急に身を乗り出す。

「ここからが気になるところよね。」

 エリカが目を瞬かせると、サラはにっこりと笑ってリリアーナを見た。

「アルとは、うまくいってるの?」

「――っ!?」

 今度はリリアーナが固まる番だった。

「ちょ、ちょっとサラ……!」

わずかに頬を染める。その反応に、サラは楽しそうに目を細めた。

「だって気になるじゃない。結婚してるとはいえ、“夫婦として”どうなのかって。」

「そ、それは……。」

 言葉に詰まるリリアーナ。普段の余裕ある姿からは想像できない様子に、エリカは思わず目を丸くする。


(リリアーナ、こんな顔するんだ……。)

新しい一面を見た気がした。リリアーナは小さく息を整え、それから観念したように口を開く。

「うまくいっていないわけではないわ。」

慎重に言葉を選ぶ。

「ただ、お互いに忙しいし、関係としてはまだ落ち着いている、というか。たまに一緒に出かけたり、夕食はほとんど毎日一緒に食べているくらいよ。」


 曖昧な表現。サラはふんふんと頷きながら聞いている。

「なるほどね。」

そして、じっとリリアーナを見つめる。

「でも、ちゃんと想ってるでしょ?」

「……っ」

一瞬で、言葉を封じられる。

「顔に出てるわよ?」

さらりと言われ、リリアーナは完全に言葉を失った。エリカは思わず吹き出しそうになるのをこらえる。

(すごい。完全に見抜いてる。)


 サラは満足そうに笑った。

「安心したわ。」

「な、何がよ……」

「ちゃんと夫婦してるじゃない。」


 その一言に、リリアーナは小さくため息をつきながらも、どこか照れたように微笑んだ。


 穏やかな午後。紅茶の香りに包まれながら、サラの「恋バナ」という名のある意味尋問は始まったばかりだった。

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