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二章②
「まち、ですか?」
「そうだ。あるか?」
「ない、とおもいます」
「断言しないのはなぜだ」
「おさないころですときおくがあいまいだからなのと、わたしはぶらっどどーるですので、がいしゅつするひつようなどありませんから」
ブラッドドールの仕事はヴァンパイアに吸血されることだ。
街に行く必要はないし、逃げられることを恐れて拘束されるのが常だ。
希少な血を持つ少女が外に出れるのは、新たな主人のもとへ行く時のみである。
「なら、街に行かないか? きっと、楽しいことがある」
「それはめいれいですか?」
「……命令ではない。君が、行くか行かないかを判断していい。選択していいんだ」
「では、いきます」
「……そうか」
圭は少女が自分で選んでくれたことが嬉しかった。
「支度をしよう。……白百合、頼む」
「あるじ様の意のままに」
こうして二人は街に行くことになった。