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ブラッドドールとヴァンパイア  作者: 詩月結蒼
四章
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四章①

 ✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎




「ごしゅじんさま……!」


 朝、仕事で出かけようとした圭に、明梨が走ってやってきた。昨夜、一緒に寝たので安心感を覚えたのか、明梨もすぐに寝たのだが、そのせいか、目覚めるのが遅かった。

 ギリギリのところで間に合った明梨は安堵するも、すぐに圭と別れてしまうことが悲しかった。


「まだ、きゅうけつしてな……」

「昨日の夜しただろう? おかげでだいぶ調子がいい。明梨のおかげだ」

「っ、だけど……」


 明梨が心配しているのは二つ。

 吸血衝動が起こらないかと不安なこと。

 そして、圭が怪我をして帰ってくること。


「むり、しないでくださいね」

「わかっている。ありがとう、明梨」

「……っ」


 でも、と明梨は言う。圭にもわかっている。明梨が圭を心配していて、仕事に行ってほしくないことを。だが行かなければならない。

 そこで圭は、最終手段に出た。


「明梨」

「っ……はい」

「これはあまりできないことだから、よく見ていなさい」

「? かしこまりました」


 圭は力を込め、新たな式神を創る。


「……顕現せよ」


 創るのは二つ。形は同じ。色は似て非なるもの。


「! ごしゅじんさま、これ……」


 圭は二匹の子犬を創り上げた。

 一匹は黒色、もう一匹は紺色の子犬だ。


「いぬさんだ……」

「触ってみるか?」

「!」


 圭は黒色の子犬を渡す。


「もふもふ……」


 オルゴールと同じく、気に入ってくれたみたいだ。


「ごしゅじんさま、ごしゅじんさま、このいぬさんは、どうしてでてきたんですか?」

「こいつらは私の創った式神だ。力を多く使うが、その分、倍以上の力を蓄えて、いざという時に守ってくれる。白百合と紅秋も、もとはこんな感じだ」

「えっ! そうなのですか? しらゆりさま、こうしゅうさま」


 二人は少し恥ずかしそうに頷いた。特に紅秋は顔を赤くして、隠している。そんなに恥ずかしいことなのだろうか。いや、おそらくは、人型になる前の姿が言いにくいのだろう。


「おふたりはどのようなすがたをしていたのですか?」

「明梨、今の人の姿は化けているだけで、本来の姿ではない。式神として動きやすいのが今の人型なだけだ」

「あるじ様のおっしゃる通りです。実を言うと、人型の式神の方が少ないんですよ。このように人型になれる式神もまた、少ないです」

「と、いうわけだ」


 明梨は珍しく気配を小さくしている紅秋に近づく。


「だいじょうぶですか? こうしゅうさま」

「……今は話しかけないでくれ、嬢ちゃん……」

「紅秋はたかの形をした式神です。鳥類ですね」

「おい白百合!」

「とりさん……。こうしゅうさまは、とりさん……」

「復唱しないでくれぇっ!」


 変なやつだ、と圭と白百合は思った。


「しらゆりさまは?」

「私はきつねです」

「きつねさん……?」

「はい。狐です」


 うじうじする紅秋に、いつもの調子を取り戻した白百合。圭は「そろそろ時間だ」と言って玄関を出る。


「紺に何かがあったら黒に知らせがいく。逆に、黒に何かがあったら紺に知らせがいく。これで少しは安心できるか?」

「こん、と、くろ、は、なまえですか?」

「ん? ああ。私のやつは紺色で、明梨のやつは黒色だからな。わかりやすいだろう?」

「はい」


 適当だな、と白百合と紅秋は思った。

 いずれちゃんとした名前をつけるだろう。

 それまでの仮名かりなだ。


「じゃ、行ってくる」

「きをつけてくださいね、ごしゅじんさま」

「わかってる」

「明梨様をまた泣かせたら怒りますからね、あるじ様」

「幼女を泣かせるとはいい趣味してるな、旦那」

(何故知っている……)


 呆れ半分、申し訳なさ半分で、圭は家を出た。

 だがその時、明梨の姿を誰かが見ていたことに、圭は気づかなかった。




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