三章②
会議を終えた圭は自身の隊に命令を下し、警護に当たらせた。
「なあ、どーするんだァ?」
圭も現地に向かう中、紅秋が話しかけた。
「とりあえず白百合に事を伝えろ。明梨には……伏せておいてほしい」
「あいよ」
「しばらくは明梨の警護にまわってほしい。白百合と二人体制なら何か起きても対処できるな?」
「いいけどよォ……旦那を守るやつがいなくなっちまうぞ。そこはどうするつもりなんだ?」
「いくつか考えがある。そこは任せておいてくれ」
「旦那の任せてはどうも信用ならねぇんだが」
圭は無茶をすることが多い。自分の命を囮に使って戦うこともしばしばある。紅秋と白百合はいつもそれを心配している。
「安心できる材料がなきゃ、旦那の頼みとは言え聞けねぇよ。白百合に怒られちまうからな」
「すまないが、それでも明梨の方に行ってほしい」
「話聞いてたか? 旦那よ」
「紅秋が白百合に怒られているのはいつものことだ。そこまで大したことではないと思う」
「ひでえあるじ様だなぁ、おい」
紅秋は深い息を吐くと、「わかったよ」と言って消えた。明梨と白百合のところへ行ったのだろう。なんだかんだ言って、紅秋は圭に甘いのだ。
(さて、私も仕事を……)
「失礼します、御影隊長」
圭を呼ぶ声がして、部屋のドアが開いた。
入ってきたのは神楽だった。
「宮部隊長。どうかしましたか?」
「新たな情報が入ったので報告に参りました。……ブラッドドールの養育所にも襲撃がありました。被害は大きく、ブラッドドールと、ブラッドドールの血が盗まれました」
「!」
「新たに私と、小鳥遊隊長が他の場所の警備に、安代隊長が襲撃の詳細について調べることになったので、そのことについてもお知らせしたく」
「……想定以上にことが早く進むな」
「はい」
おそらく、ヴァンパイアの界隈が荒れ始める。
ブラッドドールの血が盗まれた、ということは、食料がなくなったと同じだ。在庫はいくつかあるだろうが、それまでに事件を解決できるかどうかが今後の鍵となる。
吸血衝動が出たヴァンパイアが一般人を襲わない保証はない。非常に危険な事態である。
「御影隊長は在庫、まだありますか?」
「ああ。緊急時に備えていくつかある……が、一ヶ月もてばいい方だな」
嘘だ。
圭には明梨がいる。明梨がいる限り、圭は吸血に悩むことはない。だが、表向きは血のみを買っているということになっているため、また、和馬に忠告されたため、嘘をつかなくてはならない。
「……申し訳ないのですが、私にいくつか分けていただけませんか?」
「ないのか?」
「いえ、在庫はあります。……今日、忘れてしまって」
神楽も圭と同じヴァンパイアだ。吸血衝動が起きることを危惧しているのだろう。幸いにも、圭は明梨からもらった血の予備がある。圭は神楽に渡した。
「次から気をつけろ」
「! ありがとうございます、御影隊長。では、私はこれにて失礼します」
「ご苦労だった」
神楽が部屋を出た後、圭は椅子に座り、頭を抱えた。
(面倒なことが長引きそうだ……)
いったい何が起こっているのか。犯人の目的は。
今はとにかく、わからないことが多い。
(明梨……)
圭の脳裏に、無垢なブラッドドールが映った。




