No.9:アーサーVS兼続
「アーサー、アーサー早く勝負しようぜ」
「待て待て、休憩くらいさせてくれ」
そう急がせるのは飛鳥兼続。大和国が誇る精鋭部隊で『雷皇』と呼ばれている。代々将軍家は雷属性の魔法、魔術を使うことから『雷の王(将軍)に仕える者』という意味を込めて5代目将軍が名付けたらしい。
「そんなことより将軍様に会わせてもらわないと行けないだろ。将軍様も陛下も待たせてるし」
「そう言えばそうだった。完全に頭から抜けてたよ。久しぶりに会ったしさ」
兼続は皇帝陛下と15人の騎士団を案内した。一行はどんどん上に上がりその階そのものが大広間みたいなところに出た。
「よくぞいらっしゃった。アルナイル帝国皇帝ディオニス・ペンドラゴン殿とその御一行」
「そんな堅苦しくなくてもいい、環」
「ハハハ、久しぶりに会ったからつい力んでしまった。そうだないつも通りでいこう、ディオニス」
「アルナイル帝国騎士団の方々、今回はゆっくりしたいってください。兼続、皆さんを案内してやりなさい。勝負はその後だ」
「はい、わかりました」
兼続はこちらにどうぞと騎士団の皆を案内した。今回は男女別の広間を2つ使い寝ることとなった。兼続は手洗い場、浴室、修行をする場などを案内を順にした。
「ひとつ聞いてもいいかしら?」
「どうぞ」
「他の『雷皇』の方はどこにいらっしゃるのかしら。挨拶したいんだけど」
「8人は今街の見回りをしてると思います」
「そう、なら仕方ないわ。相変わらず彼はあのままの状態なの?」
「はい、あの方は今危険な状態です。近づけばどうなるかわかりません。なのでできるだけ近づくのはおすすめしません」
「わかったわ」
シャルロットとその他の騎士団員は部屋に入った。アーサーと兼続はそれを見届けお互い目を合わせた。
「さて、ようやく勝負できるな」
「うん、今日は負けないよ」
お互い火花を散らすような勢いで目を合わせた。城の外に出て勝負場に向かった。
「さぁ、始めようか!」
アーサーと兼続は日本刀を構えお互いの様子を見た。先に動いたのは兼続だ。真っ直ぐ向かってきたがアーサーは躱し兼続の後ろを取った。アーサーは背中を斬りつけようとするも兼続はすぐにアーサーのいる正面を向き鍔迫り合った。
「ハァァァァっ!」
兼続は力技でアーサーを押し体勢を崩させた。体勢を崩したアーサーを斬ろうとするがアーサーは咄嗟に後ろにバク転をして回避し距離をとった。
「準備体操はこれぐらいにして本気でいこうぜアーサー!」
「そうだね、体も温まったしそろそろ本気出そうか!」
そう言うとアーサーは神速を発動させ兼続目掛けて突進した。兼続は躱しアーサーの腹に峰打ちを喰らわそそうとしたがアーサーは急激に止まり峰打ちを回避し逆に兼続の腹に峰打ちを打ち込んだ。峰打ちは決まり兼続は軽く後方に転がった。兼続は直ぐに体勢を整えた。アーサーは兼続の周りを神速で動き回り兼続を翻弄する。アーサーは何回も兼続に近づき攻撃し直ぐに離れるを繰り返した。
「目で追うとダメだ。前よりも速い。感じるんだ。アーサーの動き、空気の流れを」
兼続は目を瞑り集中した。
兼続は心で強く念じ集中した。兼続は力強く目を開け、「そこだ!」とアーサーの動きを読み斬りつけた。アーサーは腹部を斬られ激しく転倒し血を流した。
「そこまでじゃ!」
突然停止の合図がなり2人は警戒体勢を解いた。声の主は『雷皇』の1番の古株にして兼続の師匠、東郷伊三郎だった。
「師匠、いつから見ていたんですか」
「ずっとじゃ」
「全然気がつきませんでした」
「まぁそれほど集中しておったと言うことじゃな」
伊三郎は優しい顔で兼続と話した。
「ご無沙汰しています。伊三郎さん」
「おお、アーサー立派になったな。2人とも見事な試合だった」
「「ありがとうございます」」
「アーサーは以前より速くなったな」
「はい、制限していたのを前回より解放していたので」
「そうかそうか、それで兼続が対応できていなかったか」
「申し訳ございません」
兼続は少ししょんぼりとした顔になった。
「そんなことより、2人ともこれをやろう。行きつけの店の新発売の饅頭じゃ、美味かったのでつい多めに買ってのう。お宅の騎士団の皆や雷皇の皆に分けておいてくれんか」
「「わかりました。ありがとうございます」」
伊三郎はそれじゃと手を挙げ城の方へと帰って行った。
「で、今回も俺の勝ちだな」
「いやいや、勝負の指導権握ってたの俺だから俺の勝ちだろ」
「アーサー俺に斬られたじゃん」
「あんなのはかすり傷だよ」
2人は目を合わせ自分が勝ちだと主張した。数秒後目を合わせるのをやめた。
「「今回は引き分けでいいか」」
と声を揃えて大きく笑った。2人は城の方に戻った。