No.62:正面突破
椛の登場には驚きを隠せなかった。椛がフィリクス率いるこの革命軍に加わっていたなんて予想できただろうか。しかも皆んなからも慕われているように見える。
椛の見た目はさほど変わっていない。身長が少しだけ伸びたくらいな感じだ。その姿にアーサーは少し安堵した。ちなみにフィリクスは老け、エリスとユリエルは年相応の落ち着いた雰囲気を醸し出している。
「椛があまり変わってなくてホッとしたよ」
「それはレディーに対して失礼極まりない発言なのよ。これでも20歳。アーサーは時が止まっていたから今はもみじの方が上よ」
「レディーって言うのはエリス見たいな人を指すんだよ。椛はもう少し身長伸ばさないとレディーとは呼ばれないよ」
「元騎士が言うセリフじゃないのよ」
「まぁまぁ2人とも言い合いはしない」
フィリクスが仲裁に入った。
「椛ちゃん。申し訳ないけど早速ブラッドレイ邸にアーサーと2人で向かってほしい」
「わかったのよ」
「魔神持ちが5人いるから気をつけて」
「任せて団長。俺とザガンと椛の2人1体いれば……待って、たったそれだけ?」
「魔神持ち相手に今の僕たちが叶うわけないだろう。せいぜい足止めで精一杯。アーサーはザガン。椛ちゃんは原初の龍がいるから十分対抗できる」
「その言葉を信じるたい」
アーサーと椛は準備をしブラッドレイ邸に向かうことになった。
行き道は正面突破となかなか大胆な手を使うらしい。裏道使えばいいのでは? と思ったがフィリクスたちの狙いはオフィーリア救出と共に5人の魔神持ちを倒すことに意味がある。
魔神たちは人を選び自分に合った者と契約する。今までは未契約が40体もいたために1人くらいは適性はいた。がしかし突然連れてきた72人のうち71人全てきっちりと適性する可能性は極めて低い。
シャルロットの憶測では魔神たちは強制的に契約されていると言う。前に1度魔神持ちとフィリクスとイーニアスの1対2で戦ったことがあり、倒した時に魔神との契約が解除され元に戻ったところを見た。内通者によると1度契約解除された場合、もう一度強制再契約するためには10日間必要と報告がきた。つまり今日倒した者は10日間契約できない。そのことを逆手に取り戦力を減らし10日間以内に決着をつけるという算段だ。
椛から作戦、と言っても正面突破について聞いているとブラッドレイ邸に着いた。
「覚悟はいいかしら?」
「もちろんだ」
「口寄せ。龍皇、椛に宿りなさい」
印を結ぶと巨大な龍が現れた。その存在はもちろんブラッドレイ邸の普通警備班が慄くほど。龍皇は椛に宿った。その姿は今までの椛とは一線を画した。隣にいるアーサーが畏怖するほどのオーラを醸し出している。椛は大きく空気を吸い、勢いよく吐くと龍のごとく火炎を吐いた。普通警備班はその場から逃げ去り家の門がガラ空きになった。
「さぁ行くかしら」
「本当に正面突破なんだな」
アーサーは椛を抱き上げ神速で広い庭を駆け抜けて家の中に入った。
入ると1人の男が待ち受けていた。椛を下ろしダイダラから結斬を抜いた。
「そこを退いてほしいと言っても無駄なんだろ?」
「当然だ。この先を行きたければ僕に勝てばいい」
「椛、先に行って。こいつは俺が相手する」
「わかったのよ」
椛は壁を伝い2階まで登って行った。
「ようやく会えたぞ。アーサー・アルカディア」
「突然なに? それと今はガレス・オーメロッドで通ってるからできればそっちで」
「そんなことはどうでもいい。貴様のせいで僕のプランが台無しだ。貴様がザガンを持って凍らなければ今頃僕の手に……!」
「逆恨みはよしてくれ。見苦しいぞ」
「アァァァァーーサァァァァーー!」
男は恨み、嫉妬、憎しみをアーサーにぶつけてきた。だが魔神を持ってもいない、恨みタラタラの鈍っている剣に負けるはずもない。正確に躱し確実に斬りかかる。しかし敵もバカではない。防御の魔法で防ぎ、剣の持ち方を変えアーサーの背中を刺そうとした。アーサーは神速を使い後ろに回り足にエンチャントし思いっきり蹴った。相手は飛ばされた。アーサーは休む間も無く飛ばされ立てないでいる相手に刀を振り下ろした。相手はギリギリで剣で受け止めた。
「くそっ、貴様10年のブランクがあるはずなのになぜそこまで強い……」
「確かに10年遅れたけど実質6年だ。その4年間は本当に濃い時間を過ごしたよ。それに魔眼も手に入った」
アーサーはさらに力を入れ相手の剣を斬った。
「そんな、折れないはずの剣なのに」
「折れない剣てのはこういうものを言うんだよ!」
アーサーは両手で刀を握り締め勢いよく突き刺そうとした。しかしアーサーは刀の切っ先が床に付くかどうかのところで止めた。
「これに以上乱暴に扱うと刀に悪いからやらないけど絶対に折れない剣はこの国では手に入らないよ」
相手はその突き刺さそうとした刀の刀身と顔との間ギリギリに持ってこられあまりの恐怖に気絶した。アーサーは紋章を切り裂くと消え元の場所に戻っていった。
「気絶したちゃったか。まぁ追って来られないしいいか」
アーサー刀を鞘に納め二階へと上がって行った。




