No.59:別れ
すみません。3日以内守れませんでした。
次の日、3人は起きてアーサーは魔術の特訓、フィリクスとエリスはまた違う所を見に行った。
アーサーの特訓の進捗状況はかなり良い。ラヴレンチにも完璧だと言い、ついに最終段階に踏み込むことになった。
「この魔術の最終段階である、真の絶対氷結魔術を教える。はっきり言ってかなり危ないから覚悟しておけ」
「はい」
ラヴレンチはそう言うとアーサーの頭に手を乗せ何か唱えた。すると頭の中に1つの術式が勝手に入ってきた。
「これがその魔術?」
「うむ、これを使うときはおそらく人生の最後かその節目又はすぐ使うことになるだろう」
「すぐ?」
「こっちの話じゃ。気にするでない」
ラヴレンチは家に戻った。アーサーもついて行った。
家の前には昨日の人たちがいた。その人たちはラヴレンチとアーサーが帰ってきたことに気づきこっちに近づいてきた。
「さてラヴレンチ、氷結魔術の提供する決心はついたか?」
「やるわけなかろう」
その言葉を発した瞬間その人たちはいきなりラヴレンチを殴った。
「ラヴレンチさん! お前ら、何するんだ!」
「その服、アルナイルの者か。それにその容姿、その目の色、神速の騎士王と見た。厄介だ。ずらかるぞ」
「待て!」
「アーサー追いかけるな。厄介ごとには手を出すな」
アーサーはその言葉に従った。本当は追いかけて倍返しにしてやると思ったがラヴレンチの言う通り厄介ごどには手を出してはならない。
殴られた痕の手当てをしているとかなり大きい地震が起きた。幸い外で手当てをしていたためラヴレンチの家の崩壊に巻き込まれることはなかった。
「ついにきたか」
「何のことです?」
「すぐに分かるわい」
ラヴレンチは立ち上がり海の方へ向かった。アーサーもそれについて行った。
海の方ではフィリクスとエリスがいる。氷が割れて割れた所からは水が勢いよく流れて出ている。ラヴレンチとアーサーもすぐに現場に着き2人と合流した。
「これは一体なにが?」
「限界が近かったんじゃよ。お主らが思っていたよりもな」
「いや、しかしこんな早くとは。何か方法は無いんですか?」
「ある。アーサー、出番じゃ」
「えっ?」
ラヴレンチは持っていた杖でアーサーの背中をポンと一叩きすると、強制的に魔力が引き出された。そしてひとりでに術式が展開された。
「これは……」
「アーサー、騙してすまなかった。お主に教えた魔術はな、この時のためにあった」
「何の話ですか?」
「その魔術は、術者の人生を生贄に全てを永久的に凍らせる絶対氷結魔術」
その話を聞いた瞬間にフィリクスはラヴレンチの胸ぐらを掴んだ。
「じゃあ、あなたこの時のためにアーサーを利用したと、この出来事がわかった上で教えたというのですか!」
「そうだとも。ここの氷が溶けることなんて10年以上前からわかっておったわ! だがここの人々は誰もわしの言うことを聞かんかった。なら自分で解決するしかないと。しかしわしの魔力量と質では最後の魔術を構築できても発動まではいかんかった。だからお主ら騎士団の実力ある3人を呼んだ!」
「だからと言ってアーサーを生贄にしろと!?」
「アーサーじゃなかったら誰でも良いのか!? わしだって自分で出来るならやりかった。こんなこと喜んでやろうと思ったか? そんなわけないじゃろうが! 苦心してここの人々を守るためと自分の気持ちを騙してでもやるしかなかったんじゃ!」
フィリクスはラヴレンチの胸ぐらから手を離した。
「アーサー、今すぐその魔術を止めろ。氷の魔術で上から水の出を抑える方法だってある。だから今すぐ使うをやめてくれ」
「やめられないんです。俺の意思とは別に魔術が生きてるような感じで」
「アーサー、なんでもいいから止めてよ。アーサーならなんでも出来るでしょ」
「エリス、そうしたいけど本当に何もできないんだ。それどころか他の魔術すら使えない」
エリスがアーサーに触ろうとしたらあまりの冷たさに凍傷した。触ることすらできない、止めることもできない。この何もできない状況でラヴレンチが口を開いた。
「さっきも言ったがこの魔術は術者の人生を生贄にする。命までは取らん。10年後いや、100年後かもしれんが役目を終えたらアーサーは解放され何一つ変わらない状態で戻ってくる」
「だからどうしろと? 10年後ならともかく100年後はもう僕たちは生きていない。アーサーとの思い出はこの瞬間なんだ。誰も知り合いがいない世界でアーサーはどう生きろと言う。国も存在しているかもわからない。一族も存在しているかもわからない。そんな孤独の世界に放り出すのか?」
「だがここの人々は救われる。誰も知り合いがいないかもしれないがアーサーが助けれてくれたという記憶は残る。それにわしが死ぬ瞬間までここで役目を果たすつもりだ」
「そんなものは当たり前だ。けれど……」
フィリクスは言葉がすぐに見つからない。今の状況もわかるがフィリクスにとって部下であるアーサーは大事な存在であること。けれどここで魔術を止めるとここの人々は水に埋もれ溺死か凍死するか住処を失うことになる。その心の葛藤がフィリクスを悩まされた。
アーサーは考えた。自分の人生を生贄するかそうでないか。と言ってもラヴレンチは無理矢理にでも実行するだろう。騎士団の役目は国を防衛すること、民の平和を守ること。辺境とはいえここもアルナイル帝国の一部。ここに住む人たちもアルナイル帝国の人間だ。ならやることは1つしかない。
「団長、エリス、ごめんなさい。俺はやります」
「待て! 早まるな。他の方法もある!」
「他の方法って、あまり成功する確信ないでしょう? 見ての通りあの勢いを全て止めるのは無理です。ならもうここは諦めてやるしかないです。それにラヴレンチさんも死ぬまで見てくれると言ってますし何とかなりますよ」
「起きたら誰もいないかもしれない。それでもいいのか?」
「……構いません。それにその時は世界中を旅して人生を謳歌しますよ。騎士団の人たちと会えないのは少し残念だけど」
「……すまないアーサー、こんな役目を負わせて」
「大丈夫ですよ。出来るだけすぐ戻って来ますから。エリスも元気で」
「早く……戻ってきて……ね」
「頑張るよ」
アーサーは覚悟を決めた。頭の中にある術式を再展開させ一気にその発動を早めた。アーサーの周りに氷が形成されていった。最後、発動の瞬間、光を放ち辺りを包んだ。
目を開けるとその場にはアーサーの姿はなかった。割れた氷の大地も裂け目から出ていた水も全てがなくなり元の氷の大地になった。フィリクスもエリスも涙を浮かべながらその場を去りヴァレンティナを後にした。
これで終わり? と思うかもしれませんが5章はこれで終わりです。非常に短いですね。ですがこれは前々から考えていたことなのでお許しを。次回から6章に入ります。




