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神速の騎士王  作者: 天月 能
4章 アルナイル・クロニクル
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No.53:第1歩

 村の中を探し回り手当たり次第ドアを開けて確かめた。そしてついにその人質を見つけた。扉を開けると両手両足、口を縛られて目隠しもされている女の子がいた。その人質は誰か入ってきたと思いいきなり暴れた。


「うっーー! うっーーー!」


「大丈夫、俺はアルナイル村に来た旅人だよ。村長と共にここにきた。だから暴れないで」


アーサーは短剣で目隠しと手足に縛られたロープを切った。アーサーの姿をみてやっと落ち着いた。けれどアーサーは驚いた。


「エリス……か?」


「エリス?」


「いや、何でもない」


驚きなのはエリスにそっくりだった。しかしじっくり見ると目の色が違う。


「村に帰ろう。村長はワケあって先に帰ってる」


「ワケ?」


「村に着けばわかるよ」


女の子は立とうとすると長時間縛られててうまく立てなかった。それを見たアーサーは担ぎ上げ抱っこした。

 外に出るとアルファルドの村の兵が待ち構えていた。アーサーは火と風の魔法を使い神速で正面突破を図った。

 村に戻ると小型になったアルケミストが今の状況を説明してくれた。すぐにダビデの家に向かった。

 村長の家の周りは村人でいっぱいだ。それを潜り抜け家の中に入った。ダビデが寝ている部屋に入ると少年ソロモンがいた。ダビデが飲んだものは毒が含まれている草でそれを細かくし飲んでしまったらしい。少しでも飲むと体に異常が発生し場合によると死に至る猛毒。ダビデは飲んだものをすぐに吐き出しおり、症状はマシではあるがどこまで毒が回ったのかわからないため今のところなんとも言えない状況だ。

 ダビデは目を覚ましソロモンに外に行き村長代理として尽くせと言われその場を離れた。アーサーは少年ソロモンが外に出たのを確認すると口を開いた。


「すまない。迷惑をかけた」


か細い声だ。アーサーは「いいえ」と言い首を横に振った。


「アーサー、ソロモン王とは、王とは何だ?」


「なぜいきなりそんなことを」


「私を村に運ぶ前そう言っただろう。王とは何なんだ。なぜソロモンが王なのだ」


「王は全てを統べるものであり威厳、品格など全てを持ち合わせた者。王は国を治め民の幸せを願い誰よりも慕われる存在でもあります。あくまで俺が見てきた王ですが」


「国とは何だ?」


「村の延長と思ってくれれば。規模は天と地の差はあります」


「ソロモンはその王なのか?」


「いづれは」


ダビデは「そうか」と一言だけ言い窓の外を見た。


「アーサー、ソロモンを頼む。私はもう長くない。おそらく目を瞑ればもう目は覚まさないだろう。だからソロモンをその王に導いてやってくれ。見ての通り魔術研究バカだからな」


「はい必ずや王に導きます。あの方は我らの偉大なる王なのですから」


「そうか、私はもう寝るよ。あとは頼んだ」


ダビデは目を閉じた。次第に意識が遠のいて死に近づいていく。そしてその夜ダビデの死亡を確認されこの世を去った。

 少年ソロモンは現実を見たくないのかずっと仕事用ハウスの2階に閉じこもっている。アーサーはそちらに向かった。

 2階に上がると少年ソロモンが研究の続きを行なっている。真っ暗な部屋の中黙々と作業をしている。


「ソロモン。村長の死亡を確認した。せめて一目でもその姿を」


「そう、死んだのか」


「あぁ、あとは頼んだと言っていたよ」


「後って、どうしろと? 僕は父上ほど聡明でも人格者じゃない。魔術にしか頭のないただの魔術バカだ」


「でも後を継ぐのはソロモン、君だ」


「継ぐって言うけどこんなガキに誰が付いていくんだよ。無理だ。言ったろ? 僕は人格者じゃない」


「今はそうかもしれない。魔術が好きなただの子供かもしれない。けれどこれから懸命に努力すればみんなも付いてきてくれる」


「僕には、無理だ」


アーサーはその言葉に怒りを覚えた。座っている少年ソロモンの胸ぐらを掴んだ。


「さっきから無理だ無理だってうるさいだよ! もう現実を受け止めろ! 父親は死んでしまったんだ! その父親が後は頼んだって言われたんだ! お前はその父親の言葉を無下にするのか!? いいか。できる、できないじゃない。もうやるしかないんだ。この村を、いやこの国を治めるのはあなただ! ソロモン王よ!」


少年ソロモンは何かに気付かされた。アーサーの必死な目、態度を見て自分の姿を途端に恥ずかしくなってしまった。


「いっ、今の僕じゃ誰もついてきてくれない。それでも、それでもできると思うかい?」


今の少年ソロモンでは答えは出せない。出せないがそれでもアーサーの熱意に出来るだけ応えたいと思った。


「できますとも。それに俺も全力でサポートします。そのために今ここにいます」


「時間がかかるかもしれないけどやるだけやってみるよ。それにあの父上が頼んだと言ったならなおさら」


「えぇ、どこまでもお供します」


少年ソロモンが王になるための第1歩を踏み出す瞬間だった。これから数々の困難があるかもしれない。治める側として挫折するかもしれない。けれどそうでなくてはならない。いづれ王となる少年ソロモンに試練は付き物だ。少年ソロモンとアーサーはまた新たなスタートを切った。




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