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神速の騎士王  作者: 天月 能
2章 倭国事件
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よりみち:椛の出生〜龍の子の誕生〜

 それは今から10年前のこと。大和国の城内はものすごく慌ただしかった。沢山の国民が静かに手を合わせ祈りながら城の周りで待機している。理由は将軍の弟である土御門梅行(うめゆき)とその妻との間に第一子が産まれようとしていた。


「梅行、もうそろそろじゃないか」


「兄上、そう急かさないでください。緊張で心臓張り裂けそうなんですから。それに今、妻が頑張っているので私たちは応援し祈るだけです」


「ああ、そうだな。男でも女でも大事にしろよ」


「分かっていますよ」


将軍土御門環とその弟梅行はなかなか落ち着かず、立ったり座ったり貧乏ゆすりをしたりしていた。

 刻々と時間が過ぎてゆく。もう太陽が真上に登ろうとしていた。そしてその時はやってきた。「オギャー、オギャー」と産声を上げる声が聞こえてきた。将軍と梅行は聞こえるとすぐに立ち上がり廊下、階段を走り城を出て敷地内にある産屋(うぶや)へと急行し、扉を開けた。見るとそこには産婆が数人と息を上げて布団に横たわる梅行の妻、そして産婆によって担がれている赤ん坊。その赤ん坊の姿に皆が言葉を失った。体の大きさや体重は至って普通だった。しかし背中から翼が尻の少し上からは尾が生えていた。皮膚も少し硬く、鱗のようなものもあった。


「う、うむ。えーと、どういうことかね」


「産まれてきて産声を上げると突然生え始めて、えーそのなんというか、そういうことでございます」


「兄上、伊三郎さんを読んでみましょう。あの方も似たような感じですし何か知っているかもしれません」


「そうだな、伊三郎さんを呼んできてくれ」


行ったのは近くにいたお付きの人が行ってくれた。喜ぼうにも見たことない現象に反応し難かった。


「あの……梅行さん、子供は……子供はどうなりましたか?」


「ああ、少し変なことが起きているがなんの問題もない。元気な女の子だ。よく頑張ってくれた、ありがとう。ゆっくりして体力を回復させるといい」


「女……の子ですか。よかったです」


梅行の妻は出産によってかなりの体力を消耗してしまい寝てしまった。産婆たちは赤ん坊をぬるま湯で温め、タオルで拭き乾いた布でその赤ん坊を包んだ。赤ん坊は梅行に渡された。待っていると伊三郎が到着しその赤ん坊の姿を見た。


「これはわしも見たことないなぁ、産声を上げて生え始めたのなら感情が高ぶったから生えたということと思う。わしがそうだからな。ただこの子は鬼ではなくおそらく龍の類だからはっきりとはわからん」


「龍ですか。そんな事例民衆の中でも聞いたことありません。まぁ悪霊じゃないならいいですけど」


「そんなことより梅行、早く外へ行かねばならん」


「そうですね。わかりました、今すぐに行きましょう」


梅行たちは赤ん坊共に外に出て、国民のいる前で赤ん坊を高く上げた。


「今この時、新たな子が生まれた。名は椛! この梅行の第一子にして希望の子! この子に祝福があらんことを!」


国民はわー! と声を上げている。嬉しさのあまり泣いているものもいた。将軍家は代々このようにして産まれた子を国民の前で公表するのが習わしだ。椛の時も例外なく行われた。公表が終わり城の中に入るとあることに気づいた。


「兄上、椛から翼と尾がなくなっています」


「本当だ、伊三郎さんの言う通り感情の高ぶりによって出るのかもしれんな」


 これが今から10年前の椛出生の話。その後椛は龍の子と呼ばれることもあった。転んで泣いてしまい翼が出ることもあった。それでも椛は5歳までは普通に過ごし平和な日々を送った。



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