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48.エレアの希望

「ジャック――?」


 馬車が王宮に到着したところで、ちょうど先客がいるのが目に留まった。そしてその男性の後ろ姿を見て、フランカ様が駆けだした。


「フランカ……!」


 振り返った背の高い黒髪のその男性は、フランカ様を見て驚いたように目を見開いた。


「ジャック、もう着いたの? お父様に呼ばれたの?」


 どうやら彼が、ジャック様らしい。身なりもきちんとしている好青年だ。


「いや……、なんの話だい? 私は君とのことを陛下にちゃんと認めてもらいたくて、改めてやってきたところだよ」


 どうやら、彼はフランカ様の作戦を知らなかったらしい。


 それにしても、自ら陛下に認めてもらおうとやってきたということは、彼の気持ちもやはり本物なのだ。きっとフランカ様の作戦を知っていたらお止めしていたのだろうなと、想像する。

 さすが、フランカ様があれほど想う方なだけ合って、素敵な人だ。


「そうだったの……。ちょうどお父様がもう一度貴方と話したいって言ってくれたところなのよ」

「本当かい?」

「ええ、行きましょう」


 お会いするの自体久しぶりなのか、フランカ様はとても嬉しそうにジャック様の腕に手を絡めて笑った。


「エレア! ありがとう!」


 そして、最後にくるりと振り返って私にそう言ったフランカ様を見送りながら、私は深く頭を下げた。


 フランカ様の笑顔はとても美しかった。




 その後、フランカ様とジャック様の婚約が無事成立したという話を、ラルから聞いた。

 フランカ様が言っていた通り、ジャック様は公爵家にも劣らないほど力のある家の生まれで、本人もとても優秀な跡継ぎだったのだ。


 陛下は本当に、可愛い末娘を他国に嫁がせるのが嫌だっただけなのだろう。


 けれど、ジャック様と一緒にいるフランカ様のお顔を見たら、それ以上の幸せはないことだとわかる。陛下だって、愛する娘の幸せを奪うことはできないのだろう。


 一時はどうなるかと思ったけれど、上手くいってよかった。本当によかった。




「フランカ様と陛下が、エレアに登城するように言っていたよ」


 その話を終えると、最後にラルは懐から手紙を取り出した。どうやらフランカ様から、私宛てらしい。


「エレアに礼を言いたいそうだ」

「結局私は何もしていないけど……」

「いや、フランカ様も陛下も、エレアにとても感謝していたよ。きっと望みを聞かれるだろうから、何か考えておくといいよ」


 一歩間違えば、私は咎められるようなことをしたのではないかと思っていたけれど、フランカ様は私との約束も守ってくれたらしい。ここは素直にお受けしておいたほうがいいかもしれない。


「わかったわ。ありがとう、ラル」




 その数日後、指定された日時に私は登城した。

 陛下に謁見するのは緊張するけれど、ラルが私に付き添ってくれた。


「エレア・ハインです」


 謁見の間にて、陛下の前で膝を曲げ、最上級のお辞儀をする。陛下の隣にはフランカ様もいる。


「ああ、そうか。ラルフレットと婚約するために君はキルステン家の籍から抜けたのだったな」

「はい」


 顔を上げるよう言われて陛下と顔を合わせると、私の緊張を和らげるように、優しさを感じさせる笑みを浮かべながら陛下は言った。


「まずは婚約おめでとう」

「ありがとうございます」


 ここへ来る間、ラルに言われた。陛下はお父様……キルステン侯爵と旧友の仲だから、そんなにかしこまらなくても大丈夫だと。


 確かに、その通りかもしれない。それでも、ラルがこの場に一緒に来てくれていなかったら、私は足が震えて一言もしゃべれなかったかもしれないけれど。


「それから、娘が本当に世話になったね。我儘で大変だったであろう」


 陛下が続けた言葉に、隣に座っていたフランカ様が「お父様、そんなことより!」と怒ったような声を出す。


「ああ、そうだな。ぜひ、君に礼をさせてほしい。望むものをなんなりと申してみよ」


 やはり陛下はフランカ様を溺愛されているようだ。怒られたのにもかかわらず、でれっと表情を緩めて、私にそう問うてきた。


 ラルに言われていたから、私は既に望みを考えてある。




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