第八十一話
辺り一面雷撃の落ちた穴が無数にあった。
ディルアスはサクヤを抱えこちらに戻ってきた。
「ディルアス大丈夫?」
「あぁ、大丈夫だ」
ディルアスはサクヤを側に寝かせ、怪我人の治癒に向かった。
私とディルアス、動ける魔導士さんたちとで、手分けして治癒魔法を行い、全ての人を治癒していった。
サクヤだけはしばらく寝ていてもらいたかったので、治癒は王宮に戻ってから魔導士さんにお願いした。
私たちはみんなの治癒が終わったことを確認し、王宮へと転移した。
部屋に戻るとアレンがいた。バレてるな、これ。
「お前らなぁ!」
アレンの怒声が飛んだ。
「ユウ! 待機しろって言っただろ! ディルアスも止めろよ!」
「ご、ごめん」
さすがに反論する気にもならず、大人しく謝った。
アレンは深い溜め息を吐いた。
「まあユウは気になるだろうな、とは思ったが……今回はとんでもない魔物だったらしいしな。うちの魔導士たちとサクヤだけでは甚大な被害が出ていたかもしれん。助かった。ありがとう、ユウ、ディルアス」
怒っていたのにお礼を言ってくれるなんて、アレンは大人だなぁ、と、感心していたが、自分の軽率さを思い出し落ち込む。
「軽率でごめん……」
フッとアレンは笑い頭を撫でてきた。癖なんだろうか、最近よく頭を撫でられるな。やっぱり子供扱いなんだろうか。
「まあ良いさ、ユウだもんな」
そう言って笑った。
「それ、どういう意味!?」
「アハハ」
「陛下、ユウ様たちに着替えくらいさせてあげてください」
リシュレルさんが口を挟む。
自分の姿をよく見る、あちこち汚れたり破れたり、治癒にあたったときに付いたであろう血が付いていたり。
リシュレルさんからしたら見るに耐えなかったんだろうな。
「あぁ、すまん、湯浴みと着替えを終えたら、すまんが俺の執務室まで来てくれ」
ディルアスは自分の部屋に戻りお互い着替えを終えたらアレンのところへ行くことにして別れた。
『ユウ、大丈夫か?』
「あー、うん、大丈夫。ルナとオブも大丈夫? ゆっくりしてて」
『我らは今回何もしていないからな、大丈夫だ』
侍女さんがお風呂の用意をしてくれたので、湯船に浸かった。緊張がほぐれたのか、魔力の消費が激しくて疲れが出たのか、湯船に浸かった途端、気が抜けた。
それにしてもサクヤのあの態度は何だったのか。自分が素っ気なくしているくせに、向こうから素っ気なくされると腹が立つ、とか、そんな単純なものではなく……何というか、敵意を感じたというか……。うーん。
一人で考えても答えは出ないし、さっさと着替えてアレンのところに行こう。
アレンの執務室に向かうとすでにディルアスがいた。
ここで話すときのいつもの定位置にアレンとディルアスが座っていた。同じようにいつものディルアスの横に座る。
遅れてリシュレルさんが入ってきた。
「サクヤの様子はどうだ?」
アレンが聞いた。リシュレルさんは魔導士さんや兵士たちとサクヤの様子を見に行っていたようだ。
「魔導士たちや兵士たちはお二人が治癒してくださいましたので、全員無事です。サクヤ様は……」
ホッとした。みんな無事だったんだ。
サクヤも大した怪我ではなかったが……言い淀むということは何かあったのか……。




