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隠者のプリンセス  作者: ツバメ
隠された封印、お助けシャルちゃん
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幕間〜何のリーダー?〜

色々ぶっこんでいますが、これがやりたかったので後悔はしていません。

「暇を持て余した。妖精達の……遊び!」

「酒場で変なポーズを取るんじゃないよ!」

「思ったより怒られた!?」

「怒られるのは分かってたのかい?」



フィーはいつもの様に酒場に遊びに来ていた。今日は皆依頼をこなしているのか冒険者の数が少ない。



「今日は?」

「甘い飲み物と美味しい料理!」

「今日は素直だねぇ?」

「いつもピュアなわっちでごぜーますよ?」

「本当に素直なら変なポーズは取らないよ。」



先程まで取っていたポーズに突っ込みを入れられつつ、今日は普通に注文をするフィー。食事を取りながら、丁度お客が少なく話相手になってくれているスカーレットにある質問をしてみた。



「そういえばレトレト?」

「レトレトはやめて欲しいんだけどねぇ?」

「わっち、よく考えたらここの従業員達の個人情報を知らないでごぜーます。」



そう言いながら、大酒場の看板娘達を見るフィー。最近通い始めたが、よく考えたら彼女達の事を何も知らなかった。



「個人情報って……それを知ってどうするのさ?」

「自己満足!」

「フィーらしいねぇ。」



フィーらしい回答に微笑みつつ、スカーレットは自分用に飲み物を用意し始めた。そして一息つくと、



「誰から知りたい?」

「ミンミンは最後で!」

「どうしてだい?」

「妖精の感?」

「まぁ、それは良い判断だと思うよ。」



妖精の感とやらが働き、ミントについては最後になったが、どうやらスカーレットの受け応えを見ると正解の様だ。



「じゃあ、まずは“ライチ”から。」

「ほい。」

「歳は18歳。ホルンと同じ兎人族だよ。」

「あの淡いピンクのボブショートの彼女〜で、ごぜーますな。」



注文を取るライチを見ながら話しが始まる。



「あの子はホルンに次ぐ治癒魔法の才能があるって言われていて、実は元々箱入りのお嬢様だったんだよ?」

「なななんと!?」



そして衝撃の事実が明かされた。まさかそんな素性とは知らずに驚くフィー、思わず持っていたグラスを落としそうになった。



「ホルンの計らいで、社会勉強も兼ねてうちで働き始めて、今では立派な戦力の一人さ。」

「いやはや、驚きでごぜーますなぁ。」



驚くフィーを他所に、スカーレットはエルの方を見る。



「次に“エル”。」

「お肉と常に口走ってる赤髪のツインテールでありますな。」

「魔族でこっちの基準で言えば歳は20歳だよ。」

「ほほう?わっちとリナッちと同じ運命を辿りそうな感じでごぜーますな。」

「ちなみに同じ魔族であるベリーも同い年だよ。」

「あの妖艶彼女〜と同い年……だと?」



同い年という言葉に、思わず遠くで注文を取っている二人を見比べるフィー。共通点は魔族くらいだろうと思っていた為、素直に驚いてしまった。



「魔大陸は知ってるだろ?」

「“ウォット”大陸でごぜーますな?」

「四魔公は知ってるだろ?」

「魔大陸の有名な貴族でありますな。」



四魔公、魔大陸を収める“魔王”の配下にして、魔大陸でトップの貴族。実力もさることながら知らない者はシャルを除いていないだろう。そしてスカーレットから衝撃の一言、



「その四魔公の一人。“ダルディン”の一人娘さ。」

「うそん?!」

「そしてベリーは同じく四魔公の一人“ミルフィオーネ”の娘で長女さ。」

「何て子達を働かせているでごぜーますか!?」



いや、二言が発せられ、マンガの様に目玉が飛び出そうになったフィー。他の国でトップの貴族の娘を酒場で働かせているのである。ライチも含め、普通は考えられない事だろう。



「国王陛下に頼んだらしくてね?せっかくなのでこっちの土地の文化も学んだ方が良いだろうって。」

「いやはや……マスターのおかげで友好関係が築けていたのは知っていたでごぜーますが、まさか今ここまでフランクだとは。」

「うん?何の話だい?」

「妖精の秘密!」



アルスのお陰で、かつて争っていた種族が仲良くなったのは知っていたが、ここまで気を許している関係だとは思いもしなかったフィー。とりあえずスカーレットの返しにはとぼけて答えておいた。



「さて、次だね。」

「もう何が来ても驚かないでありますよ。」

「あそこで注文を取ってるアップルはハーフエルフで歳はこっちの基準で言えば18歳だよ。」

「あの黄色い上編みガールですな。」



今度はアップルについて話始めた。先程の衝撃で一周回って冷静になったフィー。今なら何を言われても驚かないだろう。



「あの子は“コリン”の妹だね。」

「別の衝撃が!?」



だが別方面の驚きには対処出来なかった。



「……アップル・ティー・アロッサ。何というフルーティーな名前。」



脳裏に色々な言葉を広めたアルスの事を思い描きながら呟くフィー。だが、スカーレットの話はまだ終わらない。



「次だね。」



そう言いつつ、モカを見るスカーレット。



「モカはわかるかい?」

「あの落ち着いた雰囲気の琥珀色のポニテガールの事でごぜーますな?」



顔は可愛いく、とても落ち着いた雰囲気の普通な印象の彼女。きっと微笑ましい経歴が……



「そう、歳は17歳。犬人族で初めて“竜騎士”になったらしいよ。」

「竜……騎士……だと?」



可愛いらしい印象からは想像出来なかった経歴が明かされ固まるフィー、さっきから彼女達の経歴に驚いてばかりである。



「次にピニャだね。」

「あのナチュラルでにゃんと言う白髪ショートの猫人族の娘でごぜーますな?」



ピニャに関しては、にゃんのイメージが強く何か隠し持っている感じはあまり……



「そう、歳は17歳で大酒場の歌姫だよ。」

「歌姫!?」



なさそうだったが、意外な事が発覚した。でも疑問がある。



「わっち通ってるのに知らなかったでありますよ?歌う時ににゃんは?」

「あんた夜になる前に帰るだろう?あと、口癖についてだけどそれが付かないんだよ。本人もよく分かってないらしいけどね。」

「ギャップ萌えでごぜーますなぁ。」



もはや、冷静に分析する様になったフィー。にゃんと言いながら注文を取るピニャを見ながら、うむうむと頷いた。



「さて、最後はミントだね。」

「おお!遂に!!」



そして最後にミントについて知る時が来た。ここまでの事を考えると普通の経歴ではない事は確定なので、わくわくしながら次の言葉を待つフィー。



「ミントは……」



ガタンッ!



『おいおい、何だぁ?この酒場の料理は!』



しかし、何処からともなく野太い男の声が聴こえてきた。



「「うん?」」



その音が気になり、音の方を向く二人、丁度ミントが対応しようとしている所だった。



『お客様?どうされました?』

『どうしたもこうしたもねぇ!随分と不味い料理を出してくれたなぁ!』



人数は十人程で、明らかにガラの悪そうな冒険者達だった。料理にいちゃもんをつけている様で、ミントは冷静にその男の言葉を聞くと、問い返した。



『当酒場では、味には細心の注意を払っていますが?』

『はっ!こんな不味い料理に金なんて払えるかよ!』

『『『『『そうだそうだ!』』』』』



ダーンッ!



ミントの問い掛けに、機嫌が更に悪くなったのかお金を払わないと言い出したガラの悪い冒険者。他のメンバーも便乗する様に声を張った。



「やれやれ、たまにいるんだよねぇ。他の国から来て騒ぎ出す冒険者。」

「落ち着いて見ている場合でごぜーますか!?ミンミンが近くにいるでありますよ!?」



その騒ぐ冒険達を見て、冷静に呟くスカーレット。そんなスカーレットに対して、フィーは慌てた様にスカーレットに言う。



『お金を払わない?本当に払う気が無いんですか?』

『しつこい女だなぁ!それとも何か?お前がサービスしてくれるのか?』

『『『『『ぎゃははは!!』』』』』



遂にセクハラ発言まで飛び出し、かなりガラの冒険達は調子に乗っていた。他にも冒険者はちらほらといるが、皆静観している。



「レ、レトレト?」

「大丈夫だよ。見てなって。」



心配するフィーを他所に、スカーレットが安心させる様に言う。





「はぁ……しょうがないなぁ。面倒事は避けたいのになぁ。」


「「「「「ああん?」」」」」



ガタガタ、ガチャガチャ、



「ん?何で周りの机と椅子を下げ始めるんだ?」

「おいおい、今いる人数で俺達をどうにか出来るとでも思ってるのか?」



ミントがそう呟くと、周りの冒険者達がテーブルを片付け始めた。ガラの悪い冒険達を中心に広いスペースが出来上がっていく。彼等は、今いる奴らでは自分達には敵わないだろうと踏んでいた為、更に調子に乗っていた。



ガチャガチャ、ガタ、ガタガタ、



『ミントちゃ〜ん。これで良いか〜い?』


「あ、は〜い!ありがとうございます!」



常連なのだろう。ミントに声を掛けると、ミントは明るい雰囲気で答えた。



「ちなみに手を貸してくれますか〜?」


「「「「「見守ってるよ〜!!」」」」」



何やら交渉を始めたが、周りの冒険達は何故か応援の旗を持って一斉に答えた。その様子を見てミントは肩を落とす。



「戦ってよ……ドラグニアの冒険者。」

「諦めなってミント。よっぽどの事がない限り無理だと思うよ?」


「「「「「そうそう。」」」」」



ミントを慰める様にエル、ライチ、ベリー、アップル、モカ、ピニャが何かを持ってミントの近くにやってきた。



「……そうだよねぇ、あれを見たら誰も手を出さないよねぇ。」



「「「「「な、何だ?」」」」」



そして全員がそれぞれ武器を構え始めた。予想外の展開に動揺するガラの悪い冒険達。



「近くで見るかい?」

「ふーむ?レトレトがそう言うなら。」



何やら問題無さそうな雰囲気なので、スカーレットに提案されミント達がよく見える位置に行くフィー。



「ねぇ?あれやらなきゃ駄目?」

「駄目だろぅ〜?あれやらなきゃ駄目だろぅ〜?」

「せっかく皆で考えたんだからね。」

「……私は参加してないけどね。」



何やら話し合っている様だが、小さな声で話しているので聞こえない。そして、意を決した様にミントが武器を構えると、それぞれが独自のポーズをとって名乗り始めた。



ジャキッ!



「全てのお客様に平常と治癒魔法の素晴らしさを伝える兎人族“ライチ”!!」



ブォンッ!



「全てのお客様に元気と肉の素晴らしさを伝える魔族、“エル”!!」



フワッ!



「全てのお客様に喜びと大人の女性の魅力を与える魔族、“ベリー”!!



カチャッ!



「全てのお客様に優雅な気持ちと紅茶の素晴らしさを伝えるハーフエルフ、“アップル”!!」



ジャキンッ!



「全てのお客様に忠義と竜騎士の素晴らしさを伝える犬人族、“モカ”!!」



チャキッ!



「全てのお客様に癒しと歌声を伝える猫人族、“ピニャ”にゃん!!」



チャキンッ!



「そして全てのお客様に爽やかさと大酒場の素晴らしさ伝える剣聖の娘、“ミント”!!」



「「「「「我ら、大酒場を守りし七人の騎士!!」」」」」



ダンッ!



「「「「「“サロンティックセブン”!!」」」」」



バーンッ!!



謎の名乗りが始まり、決めポーズを取る彼女達、ウェイトレス姿ではあるがまるでテレビ見るヒーローの様だが、



「え?ダサ……う、うん!カッコイイでごぜーますなぁ!!」


「フィーちゃん!聞こえてるよ!(私だってこの名乗り恥ずかしいし、ダサいって思ってるよ!)」



思わず素直な感想が先に出たフィー。ミントだけ・・が恥ずかしそうにフィーに突っ込んだ。そして突っ込むミントを無視してスカーレットに疑問を言う。



「剣聖の娘とは?」

「ドラグニア王国一の剣の使い手の家系でね?ミントの正式な名前は“ミンティーヌ・Lレナス・ヴァレスティン”。元々剣の腕はからっきしで、普通の貴族の娘として育てられてたんだけど、社会勉強でうちに働きに来てね?その時実力を知らなかったあたいが一人で運動するのが寂しいから付き合ってもらってたら、剣の才能が開花してねぇ。」

「ミ、ミンティーヌ!?貴族っぽい名前でごぜーますなミンティーヌ!!」


「フィーちゃんわざとだよね!?名前を連呼しないで!?」



ミントのフルネームを聞いて興奮した様に名前を連呼するフィー。最近呼ばれない名前だったので恥ずかしそうに再度突っ込むミント。



「“サロンティックセブン”とは?」

「他の子達もあたいの運動に付き合ってもらった結果、全員その辺の王国騎士より強くなっちゃってね?ある時ガラの悪い冒険者達が来た時に彼女達だけで追い返したら皆盛り上がっちゃってね?あの子達も盛り上がっちゃって自分で名乗ってるのさ。」



「私は関与してないですけどね!?」



もはやミントの突っ込みはスカーレットとフィーには届かなかった。



「王国騎士並みの強さを持つ美女、美少女が働いている大酒場でごぜーますか。恐ろし過ぎるでありますなぁ。」

「モカも竜騎士だけど特別枠でねぇ。前にオリビア王女殿下に会ったら他の子達も含めて、「竜の牙ドラゴンファング所属の戦士じゃ!!」って言ってたからねぇ?』



「「「「「それは初耳ですが!?」」」」」



オリビア王女殿下の件は流石に初耳だったのか、全員で突っ込みが入った。



「本人達、非公認の様でごぜーますが?」

「まぁ実際の所、非公式みたいなもんだからねぇ。」



しかし、のほほんと突っ込みを無視して会話する二人。サロンティックセブンは突っ込むのを諦めてガラの悪い冒険者達を見た。



「……はぁ……さて、では覚悟はよろしいですか?」



ジャキッ!



「「「「「し、失礼致しました〜!!」」」」」



ガラの悪い冒険者達は、彼女達の圧に負けて急に腰が抜けそうになり逃げ出すが、



キキキィ〜ン!!



「お代はしっかりと頂戴致します!」


「「「「「頂戴致します!!」」」」」



ミントの剣捌きによって、一瞬にして動きを止められた。



「「「「「は、払います!払います〜!!」」」」」



「ふむふむ、こうやって大酒場の平和は守られているのでありますなぁ。」

「あたいも楽が出来て助かるよ。」



関心する様に頷くフィー。スカーレットも心から感謝しているのか、微笑みながら彼女達に手を振る。



『ライチちゃ〜ん!』

『エルちゃ〜ん!』

『ベリーさ〜ん!』

『モカちゃ〜ん!』

『アップルちゃ〜ん!』

『ピニャちゃ〜ん!』


『ミントちゃ〜ん!』



そしてファンである彼等も手と旗を振る。



「……私は普通に働きたいのに。」

「ミンミン、シャル様と同じ系統の運命を感じるでごぜーますよ?諦めが肝心でありますよ?」



フィーに慰められながら俯くミント、彼女はきっとこれからも大酒場を守る騎士として戦うのだろう。



「……今度シャルちゃん誘って飲みに行こう。」



“サロンティックセブン”。彼女達がいる限り、大酒場の平和は守られるだろう。


ありがとうサロンティックセブン!今日も大酒場は通常営業だ!!

今年の投稿はこれで最後です。また来年、登場人物紹介から始まり、次の章“魔大陸編”が始まります。では良いお年を。

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