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女神な彼女  作者: なつみかん


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第六十話 楽しかったよぉ……

あーしは、目の前のハナコを凝視する。


八枚の黒翼を広げたハナコ

……間違いない。


堕天だてん、完了だ。

 

今のハナコは、かろうじて

この世界に留まっているだけだ。


その気になればいつでも「世界の概念」へと融け落ち

永遠に災厄を撒き散らす存在になる。


ツクヨミのヤツ、最初から仕組んでやがった。

ハナコがいつか自分の元へ堕ちてくるように。


概念としてあいつを惑わせ続け

いつでも地獄の門を開けられるよう

あのロザリオを『カギ』として渡していたんだ。


あーしが甘かった。

……いや、足りなかったんだ。


「友達だから過去は聞かない」なんて

ただのあーしの綺麗事だった。


もし知ってしまったら……

ハナコを嫌いになってしまうんじゃないか。

そんな自分が怖かった。


あの子は二千年以上もの間

たった一人で「それ」に抗っていたっていうのに。

……友達失格だ、あーしは。


でも……

だからといって!

世界を終わらせるわけにはいかない。

最後まで抵抗してやんよ、ハナコ!


あーしは地面を爆ぜさせ、

最大速度でハナコへと接近する。

渾身の拳を叩き込もうとした、その瞬間。


……いないッ!


空を切った拳の直後

ハナコは、あーしの背後に回り込み

背後から凄まじい熱量が膨れ上がった波動を

零距離で撃ち込んでいた。


ドォォォォンッ!!


あーしの身体が、糸の切れた人形のように

虚空へと吹き飛ぶ。


どうなってんの……!?

「速い」なんてレベルじゃない。

光速に近い。

あんな機動、自分の肉体だって保たないはずなのに。


そうか……ハナコはもう、

物理法則すら無視した

「世界の一部」になりかけているんだ。


「……ガハッ、……っ!」

口から熱い鮮血が噴き出す。

内臓をズタズタにやられた。

旦那(猿田彦)とリンクしてなきゃ

今の一撃で消滅していただろう。


「……まだ、生きてるんだぁ」

微動だにせず立ち尽くしたまま、ハナコが呟く。

その顔から、さっきまでの薄ら笑いすら消えていた。


「ねぇ、ハナコ……」

あーしは最後の力を振り絞って

立ち上がり、右手を胸に当てた。


ソウルリンク、解除。


このままじゃ、旦那まで道連れにして消えてしまう。


「……なぁに?」


「悪かったよ……

 あんたのこと、わかってやれんでさ……」


「……もぉ、いいよぉ。別に」

無表情のまま、ハナコが一瞬で間合いを詰めてきた。

潰れた内臓に、無慈悲な手刀が深々と突き立てられ――


※ ※ ※


「あとは……太郎くんだけだねぇ」

ハナコさんはウズメさんの腹に

深々と突き立てていた、手刀を無造作に引き抜く。


ドサッ……

そのままウズメさんは地面に伏し

ぴくりとも動かない。


返り血に染まったはずのハナコさんの腕は

一振りするだけで元の陶器のような肌へと戻る。


……どうなっているんだ。

ウズメさんが飛び出したと思った瞬間、もう倒れていた。

速すぎて、俺の目には何一つ映らなかった。


ハナコさんが、再び俺に向けて掌をかざす。 


――ゴキンッ。

鈍い音が、骨を伝う。


「…………ッ!!!!!?」

声にならない悲鳴と共に

俺は地面に這いつくばった。すねの骨を折られた。


内側から噴き出す脂汗。

肺が潰れたかのように、まともな呼吸ができない。


「あ……が、はっ……っ!」

喉の奥から、情けない掠れ声だけが漏れる。


「どぉせ逃げられないけどさぁ

 うろちょろ逃げ回って最後を迎えるのは嫌でしょぉ?」

ハナコさんが、ゆっくりと近づいてくる。


「はっ……ハナコ、さん。な……んでっ……!」

溢れ出す涙と唾液を垂れ流しながら

俺は必死に声を絞り出した。


「太郎くんだけは、

 ハナコが、ちゃぁんと殺したいのぉ」

無慈悲な言葉と共に、俺の腹に硬い蹴りがめり込んだ。


「ゴホォッ!!」

衝撃で身体が浮き上がり、さらに呼吸が乱れる。


「太郎くんを殺したらねぇ

 ハナコ、今度こそツクヨミくんと一緒になれるんだぁ」

そう言って、俺の首を片手で掴み、軽々と持ち上げた。


「楽しかったよぉ……

 やっぱり最後は、裏切られたけどさぁ」

首を絞める力が強まっていく。


「が……あ、がぁ……っ!」

一言。一言だけ伝えたくて

必死に喉を鳴らすが、気道が塞がれて言葉にならない。


「ん? 最後に言いたいこと、あるのぉ?」

わずかに、ハナコさんが指の力を緩めてくれた。

なんだよ、優しいんだが優しくないんだが……


「は、ハナコ……さん。手に……

 よだれ……つけちゃって、ゴメン……っ」


「……それだけぇ?」


「……うん」

激痛と酸欠で、意識が急速にホワイトアウトしていく。


「なぁんだ…… じゃあ……さようならぁ、太郎くん」


ドンッ!!


見えない衝撃がハナコさんを吹き飛ばした。

首から手が離れ、俺は再び地面に叩きつけられる。


「がはっ……! はぁっ、はぁっ、はぁっ……!」


「太郎さん! 大丈夫どすか!?」

この、はんなりとした声は……コノハさんだ。

あんまり大丈夫じゃない、けど親指を立てる。


「……まぁ。ハナコさん……

 えらい酷いお姿になってしもうたどすなぁ」

なんとか顔を上げ、ハナコさんを見る。

彼女は飛ばされた先で、無表情のまま立ちつくしていた。


コノハさんの、深く、長い呼吸が聞こえる。


一拍置いて、彼女は

夜空に届くような凛とした声で告げた。


「――『天照大御神アマテラスオオミカミ』、降臨どす!!」

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