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魔王メイド・エクリナのセカンドライフ  作者: ひげシェフ
第五章:再起と絆の魔剣

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95/201

◆第84話:波間に忍ぶ影◆

水中泳を終えたエクリナが、軽く濡れた髪を払いながら日傘の下に戻ってきた。

潮風の中に、どこか懐かしい海の匂いが混じっている。


「セディオス、我は少し疲れたぞ……」


「お疲れ様。ほら、水をどうぞ」

差し出された水筒を受け取り、一気に飲むエクリナ。

冷たい水が心地よく喉を潤す。

「……ふぅ、助かった」


彼女の視線が砂浜に向かう。

そこでは、ルゼリア、ライナ、ティセラが魔法を駆使して砂の城を作っていた。


「これで塔が完成ですね」

「おっきくしすぎたかもっ!? 崩れちゃわないかな!?」

「大丈夫。支柱に補強魔法をかけましたから」


その朗らかな笑い声が、波の音と共に耳に届く。


「たまには館から離れてみるのも良いな……」

「皆の知らない一面が見れる……」

微笑みながら見つめてつぶやくエクリナ。


「まるで母のような目をしているな、エクリナ」

つぶやきに応えるように言うセディオス。


「なっ!、どちらかと言えば、我は姉に近いのだぞ……」

水筒を指先で撫でながら、 真面目に答えるエクリナ。


「はは、そうだったな」

セディオスは穏やかに笑った。


エクリナはそっと微笑み、隣のセディオスと視線を交わす。

「……良い眺めだな」


「そうだな。こういう日が、永遠に続けばいいんだが」

柔らかな静寂がふたりを包み込む。


「そろそろ昼食を買い出しに行ってくるよ。

 酔い覚ましも兼ねて、少し歩いてくる」


「む……わかった。気を付けて行くのだぞ」

セディオスは軽く手を振りながら浜辺を離れていった。

その姿を見送った後、エクリナはゆっくりと日傘の下に身を預ける。



ふと、エクリナの耳に“かすかな低い唸り”のような音が混じった気がした。

しかし、次の瞬間にはもう、ただの潮騒しか聞こえなかった。



「……ほんの少しだけ、休むとしようか……」

潮風が優しく髪を撫で、波音が子守唄のように響く。

まどろみの中、彼女の意識がゆっくりと沈んでいく。


──そのとき、沖の波間が一瞬だけ、違う色を帯びた。

 白い飛沫の中に、わずかに“黒い影”が混じり、すぐにまた消える。


誰も気づかないまま、海鳥の鳴き声がかすかに途切れ、空気がわずかに重くなる。

浜辺を撫でる潮風の向きが、ほんの僅かに――変わった。

それは、何かが「近づいている」ことを、大海が告げているようだった。


──しかし、誰も気づかなかった。

海の中、ゆらりと蠢く異形の影。


静かに、確実に、砂浜に向かって這い寄ってくる何か。

それは、潮の満ち引きに紛れた“何か”。


音もなく、ゆっくりと──“それ”は、無邪気に笑う少女たちへと伸びていく。

次回は、『10月9日(木)20時ごろ』の投稿となります。

引き続きよろしくお願いしますm(__)m


ここまで読んでくださり、ありがとうございました!

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