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魔王メイドエクリナのセカンドライフ  作者: ひげシェフ
第五章:再起と絆の魔剣

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◆第73話:交差する稽古の剣(つるぎ)◆

朝の澄んだ空気を切り裂くように、乾いた木剣の衝突音が訓練場に響き渡った。

振るわれた剣が風を裂き、足音が土を蹴り、掌に痺れが走る。


「やぁッ! そりゃッ!!」

ライナが勢いよく踏み込み、鋭い動きでセディオスに斬りかかる。

その剣筋には、まさに雷のような荒々しさと俊敏さが宿っていた。


「おっと、そっちか」

セディオスはするりと身をかわし、木剣を軽く当てて受け流す。

力まず、無駄のない動き――その冴え渡る剣筋は、かつて幾多の戦場を駆け抜けた熟練の証だった。


「うわっ、やっぱすごいなぁ、セディオスって! 全然当たらないんだけど!」

「いや、今のは良い踏み込みだった。あと半歩速ければ、俺の懐に入っていたな」

「ほんと!? じゃあ、もう一回お願いっ!」


ライナは汗を拭いながら息を整え、再び構えを取る。

その姿は無邪気でありながら、確かに成長の兆しを帯びていた。


(……まだ鈍い。だが、こうして剣を振れることが、どれほど嬉しいか)

木剣を握る掌に痛みが走るたび、セディオスの胸には静かな喜びが広がっていく。


少し離れた場所で腕を組み、エクリナが静かにその様子を見守っていた。

「ふむ……あの二人、意外と相性が良いな」


隣に立つティセラが微笑む。

「ええ。ライナは動きのセンスがありますし、セディオスの経験がそれを上手く引き出しています。

きっと、良いリハビリにもなっているのでしょう」


「……まあ、あまり無理をさせる気はないがな」

エクリナはぽつりと呟いたが、その目は離れず、セディオスの動きを追っていた。


再び木剣が交錯する。

ガンッ――衝撃音とともに、刃がわずかにセディオスの肩を掠めた。


「当たったっ! 今、絶対当たったよね!」

ライナは目を輝かせ、嬉しそうに跳ねる。


「……ああ、一本取られた。剣速が、さっきより確かに上がっている」

「やったぁ! よし、次はもっとすごいのいくよっ!」


彼女の笑顔に、セディオスも思わず口元を緩める。

(……この子の成長を支えられるのなら、まだ俺も――剣を手放すわけにはいかない)


その日、訓練場には幾度となく剣戟が響いた。

だがその音は、戦場の殺伐としたものではない。


互いを高め合い、少しずつ近づいていく二人の証――

その響きが、静かな朝の光の中で確かに鳴り続けていた。

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