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魔王メイド・エクリナのセカンドライフ  作者: ひげシェフ
第五章:再起と絆の魔剣

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◆第70話:静かなる再起◆

霊泉郷セイリョウでのリゼル襲撃から数日後――


セディオスの自室。

三十代半ばに差し掛かった男は、静まり返った空気の中、ティセラの淡々とした身体検査を受けていた。

筋肉の緊張、心拍のリズム、瞳孔の反応――どれも、過日の戦闘による『魔核』への負荷を確認するためだ。


魔核――それは心臓部に存在し、魔力の生成・循環・変換を司る核心の器官。

魔力は血液と神経を通して全身を巡るが、セディオスにとっては、不安の種でしかなかった。

彼の魔核は、かつてのヴァルザ戦で致命的な損傷を受けていた。

現在では、かつての全盛期に比べ、魔力生成量はおよそ二割にまで落ち込んでいる。


「……この前の戦闘による影響は落ち着いたようですね。血中魔力量も安定しています」

聴診器を外しながら、ティセラは安堵の息をつく。


だが、表情はすぐに引き締まった。


「ですが――魔剣アルヴェルクの使用は、しばらく控えるべきです」

「……あの剣は、使用者の魔力を燃料に威力を引き出す戦具。今のセディオスには、負担が大きすぎます」

淡々とした口調の裏には、彼の身を案じる静かな憂慮がにじんでいた。


「……そうか。仕方ないな」

セディオスは小さくうなずく。だが、その声にはかすかな悔しさが滲んでいた。

魔剣を手放すことは、己の誇りをも手放すようなもの

――家族を守れぬのではないかという、己への苛立ち。


その沈黙を破るように、ティセラが口を開く。

「ですので――今のセディオスに“最適化”された魔剣を、新たに造りましょう」


「……え?」

「魔力依存を抑え、魔法戦術をサポートする剣。今のあなたに合った構造で、私が設計します」

「……本当に、頼んでいいのか」

思わずこぼれた声に、ティセラは微笑んでうなずいた。


「もちろんです。家族のために、あなたが戦いたいというなら――私も、その力になりたいので」

セディオスは、どこか照れくさそうに笑った。

「……ありがとう、ティセラ。微力でもいい、俺は……家族を守る力が、欲しいんだ」


「ええ、それでこそセディオスです」

ティセラは立ち上がり、扉へと向かう。


「では、設計に入ります。……セディオスはもう少し、安静にしていてくださいね。

できれば、エクリナに甘えてでも」

そう言って、彼女は微笑みを残し、静かに部屋を後にした。


成熟の影に包まれながらも、剣を手放すことだけはできない。

その執念こそが――新たなる力の誕生へと繋がる最初の一歩になる。

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