◆幕間:諦めない追跡者◆
神領の中央にそびえたつ魔哭神の居城。
その地下深くには果ての無い暗闇が連なっていた。
その最奥に、明かりが灯っていた。
魔晶が板状に加工され、三枚が陳列。
それぞれからは金属管が這い出ており、唸りを上げる箱型の術具にすべて繋がっていた。
「――ここは何もないか……ここも外れ」
魔晶板には球型術具が持ち帰った捜索模様が鏡像として記録されていた。
この世にはまだ出ていない、未知の技術がそこにはあった。
それを操るのは、少年とも少女とも見て取れる若者であった。
自身の長い三つ編みをいじりながら、同時に三つの鏡像を見つめていた。
「ん?」
ひとつの鏡像に目を奪われる若者。
そこには――空を踊る闇の刃が居た。
それを球型術具が追いかけているらしく、転移を繰り返し、森の奥へと導かれていた。
「これは魔法ではないですか! しかも誘導するような動き……明らかにこちらを察してますね……」
一枚の魔晶板の鏡像を巻き戻していく。
すると――庭の小屋内部に見たこともない術具が見えた。
「こんな珍しいもの、人属も亜人属も辿り着いていないですね……なるほど、ここが当たりですか」
ようやく見つけることができたと顔をほころばせる三つ編みの若者。
ニヤケが止まらなかった。
「もう、夜ですか――まあ、簡単には遠くに行けないでしょう」
「早速、これらを飛ばしますか」
椅子から立ち上がると、作業台で魔力充填をされていた三基の球型術具を順番に起動させていく。
ビコンと、目が光っていく。
「さあ、その座標へ皆行きなさい!」
その声と共に、術具たちは浮遊するとシュンッ!と風鳴り音を出し、昨日探索した館へ飛び去っていた。
それを見送り、再び席につく若者。
「今度は、実際の鏡像を映し出して――ふふ、繋がりましたね」
「ようやく会えますね。エクリナ……その顔を見せてもらいましょうか……」
舌なめずりをし、獲物を探すその眼光は野獣のようであった。
だが――球型術具の目が捉えた先には――何もなかった。
「座標を間違えましたか……いや、この景色、そこの森……合っている……」
昨日の闇刃を思い出す。あの時点で、既にこちらの存在を察していたのだ。
それなのに――他の作業に追われ、鏡像の確認が遅れてしまっていた、ただそれだけなのに。
「……わたくしが、時間を与えた……?」
「どういうことですか!!」
バアァンッ!!
待望の光景を逃した若者は、目の前の台を握り拳で叩きつける。
何度も何度も繰り返す。それは血が出てくるまで続いていた。
興奮し、呼吸が荒くなる。あまりにも理解不能な光景に目を泳がせていた。
「はあはあ……少し、気が収まりましたね……」
首元を緩め、深呼吸する若者。
ふと、動かないままの鏡像を見つめ直していた。
「ん? この地面は……何やら境界が……まさか!」
「空間魔法ですか?? なるほど、状況を察して館ごと転移しましたか――やってくれましたね、エクリナ!」
三つ編みの若者はその観察眼で、何が起きたのかを看破していた。
はあ~~と、疲れたとばかりに脱力していた。
「また、一からですか……いや、これほどの規模の転移。魔力波長くらいは残っていそうですね」
「情報収集から始めますか……」
そう独り言をつぶやくと、カチャカチャと術具を操作し、三基の球体に指示を出していく。
それは、魔力が枯渇寸前になるまで続けられた。
城の地下では、執念を燃やす者だけが淡い光に照り返されていた。




