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魔王メイドエクリナのセカンドライフ  作者: ひげシェフ
第二章:雷と炎が交わる刻

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24/121

◆第20話:盟友の叱責と揺れる王心◆

朝食が終わった頃――


「エクリナ……、少しお時間をいただけますか」

ティセラの声音は、いつもと変わらず穏やかだった。

だが、その目には確かな鋭さと、静かな怒りが宿っていた。


エクリナは少し戸惑いながらも、無言でうなずき、ティセラの私室へと向かう。

扉が閉まった瞬間から、説教が始まった。


「……他に、やり方はあったのではありませんか?」

「あれほど派手に吹き飛ばしておいて、“重傷ではない”のは……私が、途中で結界を張っていたからですよ?」

「そもそも、彼女たちの魔装を修理するのは……誰だと思っているのです?」


――実は彼女は、ルゼリアとライナの激突が始まった直後から、館全体を包む防護結界を静かに張り巡らせていた。

誰にも悟らせぬまま、ただ、家族を守るために。


「まったく……あの子たちの喧嘩を収めるなら、もっと穏やかに済ませられたはずです。あんな“王の鉄槌”など振るわずとも」

「……それとも、日常を壊されてお怒りでしたか?」

「ですが、庭が盛大に荒れ地になったのは――誰の責任ですか?」


冷静でありながらも、的確に突き刺さる言葉の数々。

ティセラは見守るものであり、家族の一員であり、

そして――この館において、唯一の“エクリナに説教できる存在”であった。


エクリナは、その叱責に反論ひとつできず、ただ小さくうなずきながら聞いていた。

その様子は、王ではなく、ただの少女のようで。

「あなたの判断が正しいと信じてきました。ですが……家族を巻き込むのは、違うと思います」

「もし、もしですよ……あの二人に取り返しのつかないことが起きていたら、私は……私はきっと……」


そこで、ティセラの声が一瞬だけ震えた。

「あなたが、あの二人をどう思っているかは知っています。だからこそ、そんなあなたが、彼女たちにあれほどの仕打ちをする姿を見るのは、耐え難いのです」

「私は、あなたを、誰よりも理解しているつもりです。だからこそ、怒っているのです」


その言葉を聞いた瞬間、エクリナは――

唇をぎゅっと噛みしめ、拳を強く握りしめた。

その指先が、かすかに震えていた。

声にならぬ痛みと後悔が、彼女の胸を締め付けていた。


「……すまぬ、ティセラ」

ようやく絞り出したその声は、どこか震えていた。

胸の奥が、締め付けられるように痛かった。

盟友だからこそ、許される厳しさ。だが、それは確かにエクリナの心を揺らした。

「……今後は、もっと慎重に行動する。臣下たちの信頼を損なっては、王の名が廃るからな」


そう言ったとき、エクリナの目にはほんのわずかに涙が滲んでいた。

ティセラはその姿に、小さく息を吐き、そっと近づいてエクリナの頭に手を置いた。


「……ちゃんと謝れて、えらいです」

その言葉は、まるで姉のようであり、母のようでもあった。

「それでこそ、エクリナです」

そして、静かに背を向けた。


……それが、彼女の“王”であり、“大切な友”である証なのだから。

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