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魔王メイド・エクリナのセカンドライフ  作者: ひげシェフ
第九章:闇に芽吹く信頼

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◆第198話:何気ない探索◆

食糧庫・厨房にたどり着くルゼリアとライナ。

蜘蛛型術具が徘徊する回廊。

大きな石板のような魔導術具まで参加していた。

命じられるまま動く警備術具は、同じ経路を行ったり来たりしている。


脇道で警戒する紅い髪の少女と、蒼い髪の少女。

奥に進むにつれて明らかに自立術具の数は増していた。

魔法が操りにくい空間では、体力を温存しながら進むのが最善だった。


影に身を潜ませ、石板型術具が通過するのを息を殺して待つ二人。

石板型術具が角を曲がる――その瞬間、壁の紋様が一段明るく脈打った。

反射光が二人の影を床に刻み、ライナの喉が鳴る。

だが術具は、影に気づかぬまま通り過ぎた。


「――今です」

小さく言い、走り抜けるルゼリア。

その背をライナが追った。


向かいの離れた脇道に入る二人。

「面倒だね……」

「いちいち相手にできませんからね……」

慎重に隠れながら進む姉妹だった。


至る所で術具が動き、ひとたび戦闘が起きれば集結する。

観察し、決まった行動を見極めたルゼリアは、ライナと共に回避を続けていた。


「先に扉がありますね………」

回廊の奥を見つめるルゼリア。


「石板の鍵があるかも……」

不安げに言うライナ。


ここに至るまで鍵付きの扉に当たり、警備術具たちを主に一人で相手にしてきたライナ。

ルゼリアが解錠役なのは問題無いのだが――存分に魔法を放てないこともあり、辟易していた。

それらの上で、さらに警戒が続いて疲労が溜まっている雷少女であった。


「……恐らく大丈夫かと……それらしきものは見えませんので」

「ホントに? 信じるからね?」

姉分の言葉を疑う妹分。


「……行きますよ」

構わずルゼリアは一歩を踏み出した。

「リア姉! 待ってよ……」

小声で言うライナだった。



無事に扉を開け、侵入できた二人。

敵がいないことを確かめる。


「大丈夫そうだね……」

「ええ、基本的には回廊にしか警備はいないようですね……」

安堵するライナと、法則を見つけるルゼリア。


周囲を見渡すと、鉄鍋や包丁など調理器具が充実していた。

部屋は大きく、何十人分もの食事を作れる規模だ。


「厨房??」

「そのようですね……」

誰もいない空間が広がる。


「うちの厨房よりも大きいね!」

ライナは辺りを見渡し、感想を言う。

自宅である湖畔の館の厨房よりも遥かに大きく、大勢のために料理が作られていたのが想定できた。


「この規模ですと……百名分くらいは賄えそうですね」

調理台の大きさ、鍋の大きさ、調理器具の数などを観察して思うルゼリア。


「百名!? たくさんの人が何かしてたんだね……」

ルゼリアが出した数に驚くライナ。


「ねえリア姉。リア姉なら、何の研究をしていたのか推測できてる? いっぱい本を見てたよね?」


多くの人々が滞在していたと思われる研究室。

何が行われていたのか仄かに気になったライナであった。


「……断片的すぎてまだ何ともです。ただ、本や研究資料の種類は多岐に渡っていました」

ルゼリアは、これまで目を通してきた資料らの内容を列挙していく。

「まずは魔晶の動力化について。それと魔法、特に金属魔法の記述が多くありました」


「そして――生物学です。魔獣に関しての研究結果が残ってました。魔導術具ならば魔晶や金属魔法の繋がりは深いですが、何故魔獣を研究しているのかがわかりません……」


百名近くの研究者が残していた多くの資料たち。

だが、答えにたどり着けていないルゼリアであった。


「魔晶、金属、魔獣……なんだろうね? 倒したい魔獣でもいたのかな?」

指を折りながら言葉を並べ、ライナは考えるが――答えは出なかった。


「そうかもしれませんね。奥へ進めば何か掴めるかもしれません、探索を再開しましょう」

ルゼリアはライナの推測はあながち間違いではないかもしれないと思いつつ、探索の再開を促した。


「そうだね、さて何かあるかな?」

ライナは戸棚を開け始めた。

出てくるのは、カビた食べ物ばかり。


「う、うぅ……」

もはや粉末となり、風に舞う食物を鼻をつまみ手で払う。


「だいぶ時が経っているのですね」

横目で見ながら言うルゼリア。


戸棚の奥に、乾いた空箱が二つだけ残っていた。

焼き印は王都の紋章――その下に「動力班」「戦具班」の二つの刻印。

ルゼリアは一瞬だけ眉を寄せ、戸棚をそっと閉めた。


「先へ行きますか」

「うん、そうだね」

目ぼしいものがない部屋を後にする二人であった。


 * * *


「ここは……随分と趣味のいい部屋ですね?」

「ああ……まったくだな」


リゼルとセディオスが行き着いた部屋には、生き物の死骸が解体され、瓶詰めにされていた。

小型から大型まで揃っており、特に『魔晶』を内包する魔獣の骸が立ち並んでいた。


「魔獣の研究もしていたようですね………」

保管術具にペタンと手を当て、言うリゼル。


「薄気味悪い部屋だ。魔獣を裂いて何を見たかったんだか……」

硝子越しにこちらを見ている獣を見て言うセディオス。


「ん? ここは別格の様ですね」


リゼルはとりわけ整理されている区画に足を踏み入れる。

小から大までの硝子筒が大きさ順に並べられており、その中には一つずつ『魔晶』が入っていた。

歪で、色鮮やかで、生命の輝きにも見える。


「魔獣の魔晶だな。大きさが変わると、抱える魔晶も変わるんだな……」

感心するように見るセディオス。


「魔獣の魔晶は『魔核』となり心臓に癒着してますからね……大きくなるほど魔法の威力も上がります」

リゼルは大きな魔晶に視線を奪われ、説明するようにつぶやく。


(どうやら、わたくしが求めている研究は行われていたようで……安心しました)


瓶詰の魔晶を嗤って見つめるリゼル。

魔導ランプが魔晶に当たり、反射光がリゼルを怪しく照らしていた。


それを見たセディオスは既視感を覚えた。

まるで玩具を見る時のヴァルザの顔だ――そう思った。


(神の子か……)


「そろそろ出よう。少年」

「その言い方、気に入ったんですか? おじさん」


いつの間にか距離が縮まっている二人。

敵と言えども、今は協力関係。あだ名を互いに付け呼び合う。


解体された魔獣が標本として並ぶ部屋。

怪しい研究を行っていたのは明白であった。

奇妙な部屋を後にする二人は新たな扉を見つけ、先に進む。

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